園児RPGテキスト外伝「宵の流星と暁の詩」第五章

―始まりの地、忘れられない場所、そこに全てが集まる― 序章はこちら https://togetter.com/li/1242608 第二章はこちら https://togetter.com/li/1246684 第三章はこちら https://togetter.com/li/1257847 続きを読む
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無銘海姫 @Mumeinight

【「宵の流星と暁の詩」第五章後編】 #mmytxt

2019-04-27 21:09:30
無銘海姫 @Mumeinight

―ポポースカ山中、針葉樹林帯― #mmytxt

2019-04-27 21:10:43
無銘海姫 @Mumeinight

彼女は戻って来た。110年ぶり…忘れられないあの場所に。あの事件がこの大地に与えた傷跡は、長き歳月によって癒されていた。しかし彼女の心中は未だ…。 #mmytxt

2019-04-27 21:12:39
無銘海姫 @Mumeinight

「やはり来たね、クリナゴ君」女性の背後から声が聞こえる。彼女はオフホワイト外套を翻し、杖を構えた。そこに立っていたのはワインレッド外套の青年。「忘れた方がいいと言った筈だよ…ここに来た所で、あの小娘が戻る訳じゃあない」「いえ、分かったんです…イツキさん」 #mmytxt

2019-04-27 21:14:16
無銘海姫 @Mumeinight

女性のフードに隠れた紺碧の瞳に、確かな意志が見え隠れする。「ここは…全てを繋げる場所だと」「そうか」イツキは禍々しく装飾されたレイピアを抜いた。その刀身は血のように紅い。 #mmytxt

2019-04-27 21:16:07
無銘海姫 @Mumeinight

「ああ言っちゃったけど、正直ギリギリの賭けね…んっ」ムメイは狭くぬめる喉の奥で手足を突っ張り、辛うじて体勢を保っている。喉の奥…?然り。彼女はデーモンサーモンに呑まれ、体内の奥深くへと沈み込まんとしている。 #mmytxt

2019-04-27 21:19:52
moyo @moyoko9000

おっシリアスモードすきすき #mmytxt

2019-04-27 21:20:27
無銘海姫 @Mumeinight

だが彼女も万策尽きたという訳ではない…むしろ勝機に賭けたのだ。兜飾りのクリスタルが発光し、外界から閉ざされた体内での光源となっている。「早く捌かないとわたしがご飯になっちゃうからね」肉壁がうねり彼女の体を胃へと送り込まんとする感触が肌から伝わってくるのだ。 #mmytxt

2019-04-27 21:21:19
無銘海姫 @Mumeinight

ムメイは魚をよく捌いて食べているので魚類の内臓構造は熟知している…魚に食べられたのはこれが初めてであるが。彼女の知識と能力をもってすれば、理論上は体内から切り裂いて返り討ちにする事も十分可能である。ただし失敗すれば、彼女の運命は… #mmytxt

2019-04-27 21:23:27
無銘海姫 @Mumeinight

「ンーッ…ハアーッ…」彼女は呼吸を整え、四肢に力を注ぐ…全海水凝縮剣を最大展開し、攻城弩弓じみた必殺の一撃を繰り出す予備動作だ。だが最大出力までの展開は流石に瞬時にとはゆかぬ。既に獲物を認識した胃は蠢きながら口を開き、底には沼じみて粘液を湛えている。 #mmytxt

2019-04-27 21:25:41
無銘海姫 @Mumeinight

僅かでも最初の動作が遅れれば肉壁の蠕動が彼女の全身を胃に収め…そうなればもう反撃は出来ぬだろう。(3…!)胃の入口に両手足を突っ張り、時間を稼ぐ!(2…!)両手足の装甲が青く輝く!(1…!)兜飾りクリスタルが眩く光り、剣が伸長!だが…上半身は既に胃の中へ! #mmytxt

2019-04-27 21:28:55
無銘海姫 @Mumeinight

(…0…!)ジェット水流噴射加速!「イヤアアアアーッ!!!!」 #mmytxt

2019-04-27 21:33:02
無銘海姫 @Mumeinight

その時シカナは確かに見たのだ、青く輝く巨大な刃が北海の悪魔から生え…体の内側から鮮やかに三枚におろしたのを。 #mmytxt

2019-04-27 21:35:36
無銘海姫 @Mumeinight

「ちょっと手間だったけど、ちゃんと捌いてきたわよ!」「ムメイさん…よかった…」両手足の剣を収め戻って来たムメイと、それをボートで迎えるシカナ。血肉の殆どを失ったデーモンサーモンは力尽き、沈んでいった。だがムメイの消耗はかなり大きい。 #mmytxt

2019-04-27 21:37:07
無銘海姫 @Mumeinight

「急いだほうが良さそうね…さっそく出発しましょ!」いつまた襲撃があるか分からない。ムメイは小さく切り分けたデーモンサーモンの肉を咀嚼しながらボートの牽引を再開した。(意外と美味しいわねこれ…やっぱり魚は新鮮に限るわ) #mmytxt

2019-04-27 21:38:29
moyo @moyoko9000

サーモン食べ食べられ自然... #mmytxt

2019-04-27 21:39:45
無銘海姫 @Mumeinight

再加速するボートの上で、シカナは銀の杯を覗き込んでいた。杯の底には未だ宵の流星の如き光が輝き、そしてその向こうには…「あなた…誰…?」 #mmytxt

2019-04-27 21:40:46
無銘海姫 @Mumeinight

上下も左右もない、ただ果て無く光が渦巻く空間…その天頂に光の粒が集まっていた。(行かなきゃ)手を伸ばした。浮遊感と共に夢を見ているかのように光の中を飛翔する。 #mmytxt

2019-04-27 21:44:40
無銘海姫 @Mumeinight

(もっと、もっと高く…!!)ただ何かに衝き動かされるがままに…光を掴もうと高く、より高く飛翔する。渦を巻く光の粒に包まれながら…やがて彼女は『それ』を見た…。 #mmytxt

2019-04-27 21:46:10
無銘海姫 @Mumeinight

剣の鞘。それがゆっくりと回転しながら光の粒を纏い、輝いている。そしてその後ろ―という表現が正確かどうかは分からないが―には東国聖職者じみた出で立ちの中性的な少年が鞘を護るように浮遊していた。彼が両手を広げると指先や装束から光の粒が周囲の空間に拡がる。 #mmytxt

2019-04-27 21:48:38
無銘海姫 @Mumeinight

(あなた…誰…?)少年はその問いには答えなかった。(きみがくるのは…わかってたから)彼は真円の大鏡を示す。そこに映った驚くべき光景を『鞘』を挟んで浮遊する彼女は見たのだ…! #mmytxt

2019-04-27 21:51:23
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