戦時中の血液製剤の話

・アメリカの乾燥血漿とアルブミン溶液 ・血液型を利用したドイツの人種差別 ・ソ連の死体血輸血 ・ドイツやソ連の血液代替薬剤 とかの雑多な話 続きを読む
輸血 血液 血液製剤 科学 歴史 第二次世界大戦 医療史
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深海さかな @dzurablk_kai
そういえば 輸血に使われる血液製剤の種類とかって、戦争映画とかでもよく聞く割にその種類ってあんまり耳目に触れないよなあ ・・・簡単な解説でよければ、需要あるかや・・・?
深海さかな @dzurablk_kai
1ふぁぼ頂いたので、僭越ながら、戦争映画(於WWⅡ)目線で血液製剤の種類について、簡単な解説でもしてみたいと思います
深海さかな @dzurablk_kai
こういう話をする上では、どうしても「じゃあそもそも血液って何なのよさ? アッチョンブリケやヒョータンツギと一緒なんじゃないのよさ?」という基礎的な話もせざるを得ないので、数ツイートとは言え退屈な話もしますが、なにぶんご容赦を
深海さかな @dzurablk_kai
そも、血液ってなに? その答えは『赤血球・白血球・血小板といった細胞成分と、血糖ことグルコースや浸透圧を維持する電解質にたんぱく質、感染防護に寄与する抗体や補体といった、諸々の物質の溶け込む液性成分からなる、複雑な液体』でありまして
深海さかな @dzurablk_kai
血が固まる過程や、体内に入ってきた細菌を殺す過程、そういった複雑かつ連鎖的な(カスケードと呼ばれる)メカニズム、そのいずれにおいても「細胞成分」と「液性成分」に、担当となる物質や機能が割り振られております
深海さかな @dzurablk_kai
この細胞成分と液性成分を分離するには遠心分離で細胞成分を沈めるんですが、それにも二つの方法がありまして ・抗凝固剤を加える方法 →凝固に関連する物質も維持された状態な液体(血漿)が得られる ・抗凝固剤を加えず遠心分離する方法 →凝固関連タンパクの無い液体(血清)が得られる
深海さかな @dzurablk_kai
血漿は凝固検査や血液製剤、血糖検査に、血清は生化学検査こと一般的な血液検査に供されます はいここ、その筋の人はもろもろの試験に出ますからねー 血清を得るにはシリコンとかガラスビーズとかで意図的に血液凝固を促進させてやったりもします(シンゴジラでなんか名前が出てた気がする)
深海さかな @dzurablk_kai
@dzurablk_kai てなわけで、こっから本題 血液製剤の種類について 画像でまとめると、日赤だけでこんだけあります pic.twitter.com/dIuxkUoDfU
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深海さかな @dzurablk_kai
おおまかに解説すると ・濃厚赤血球液 →献血で得られた血液から白血球を濾過した後に、遠心分離して細胞成分を集めた下の沈殿から、赤血球の層を集めたもの 一般的に言う「輸血」で用いられるやつ 血液型の縛り(O→A、O→B、O→AB、A→AB、B→AB、は可能、その他は絶対不可)を受ける
深海さかな @dzurablk_kai
・濃厚血小板液 →血小板減少による出血傾向の治療に使う 使用期限がクッソ短い(4日とか)上に常に揺らしながら冷蔵してなきゃいけないのでとにかく面倒 遠心分離すると赤血球の上、液体成分の下に層ができるのでそこから採取する 戦争映画にはあんまり出てこない
深海さかな @dzurablk_kai
・新鮮凍結血漿 →白血球を濾過した血液のうち、赤血球と血小板を除いた液性成分を凍結させたもの 戦争映画でよくアメリカ兵が輸血してる黄色い液体がこれ(当時はフリーズドライしたものを現地で溶かして使ってたらしい、詳しくは後述) 血液型の縛りを受けるのだが、先の赤血球とは逆の矢印になる
深海さかな @dzurablk_kai
昔使われてた乾燥血漿は、アメリカでは全血輸血に替わる画期的な方法(製造や仕様準備に手間がかかるものの、保存期間が段違いに長いのでアメリカから欧州アフリカに軍を派遣するのにとても役立った)として用いられたが、現在使われてる新鮮凍結血漿は液性成分に含まれる凝固因子の補充に使われている
深海さかな @dzurablk_kai
あと、先の表には無いのだが ・アルブミン製剤 →血漿成分のうち、最も多くの比率を占めるたんぱく質であるアルブミンを精製したもの 少しの量で血漿液以上の循環血液量保持の効果が得られるので、とてもすごい(けど製造がクッソ面倒でおまけにお高い
深海さかな @dzurablk_kai
加えて、血液製剤ではないものの ・輸液 →いわゆるただの生理食塩水(人間の体液の電解質浸透圧に合わせた濃度の食塩水、大体0.85%くらい)を血管に入れる方法 緊急時とかに使われるものの、入れれば入れるほど血が薄まって赤血球や血小板の効果が落ちるので、あんまりやらない方がよい
深海さかな @dzurablk_kai
第二次大戦中に使われてた輸血用の製剤は、イギリスだと全血(瓶に貯めたり、ブラックジャックでやってたみたいに直接人の腕から腕へ輸血したり) アメリカだと乾燥血漿やアルブミン製剤を重用 日独みたいな医学先進国(笑)では、全血(とはいえ血液型検査からしていい加減だったり)や、
深海さかな @dzurablk_kai
アルブミンの代用になるような化学薬品を模索、捕虜で人体実験したりしてました
深海さかな @dzurablk_kai
ちょっと話は逸れるのだけれど ・なんで今では全血輸血はされないの? ・なんで血液製剤から白血球を濾過しちゃうの? ・なんで白血球製剤はないの? という疑問が浮かんだ方も多いと思うので、それについても触れてみたく
深海さかな @dzurablk_kai
輸血ってのは「血液の移植」に当たるわけで 白血球が入ると拒絶反応を示すことがあります
深海さかな @dzurablk_kai
白血球にはHLAという敵味方識別装置として働く分子を識別するレセプターがあって、これが一方向に適合しちゃうと「輸血された白血球は受血者を攻撃するのに、受血者の身体は免疫でそれを排除できない」なんていうワンサイドな虐殺にいたってしまったり・・・(詳しくは輸血後GVHDでググって)
深海さかな @dzurablk_kai
なので現代では、全血輸血や白血球込みの製剤による輸血はされてません 献血された血液は白血球除去フィルターを通した上で、放射線照射で白血球を死滅させてから製剤に精製されます(赤血球や血小板は細胞核が無いので放射線でも死なない)
深海さかな @dzurablk_kai
ちなみにちなみに 法医学とかでDNA検査するときは、赤血球のABO血液型ではなく白血球血液型のHLAの方(よりマニアックな言い方をするとHLA分子を規定する遺伝子領域のマイクロサテライト不安定性の多型)で個人を特定するんだとか(ABOについても今では遺伝子から死体の血液型を判定するらしい)
深海さかな @dzurablk_kai
ところで、さっきのツイートで第二次大戦時のドイツを「医学先進国(笑)」と称したのにも理由があって まあユダヤ人絡みなあれそれなんですが、胸糞悪くなる話なのでこの場では言及しないことにしつつ こちらのツリーに詳しい話が載ってるので、気になる方はこちらをどうぞ twitter.com/dzurablk_kai/s…
深海さかな @dzurablk_kai
要約すると ・ナチスドイツは血液型すらも人種差別のネタに用いた ・ユダヤ人の医師がアーリア人に輸血するのを禁止 ・結果献血者も医師も不足、多くのドイツ兵が死ぬ羽目に ・挙句代用品となる化学薬品を求めて、捕虜にわけわからん注射しまくった みたいな話ですハイ
深海さかな @dzurablk_kai
アイヒマンってどっかで聞いた名前だと思ったらあれか 『謀議』で出てきた中の一人か
深海さかな @dzurablk_kai
@dzurablk_kai 『謀議』にしても『アイヒマンを追え』にしても、『ヒトラー最期の12日間』に『帰ってきたヒトラー』と、ナチの連中が口にするホロコースト正当化の謳い文句はいつも一緒だ、馬鹿げてる それらを耳目にする度に、ダグラス・スター著『血液の物語』の一説を思い出す pic.twitter.com/k4ElAQRV0Y
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コメント

愚者@ C97申込済 @fool_0 2019年2月17日
少し読んだだけで頭痛くなる内容だな……ナチスはこんなアホなことまでしていたのか。
ma08s@フォロー外からごめんなさい @bygzam_ma08s 2019年8月19日
現在に至るまでの「B型dis」って、もしかしてこの頃にルーツがあるのか?