戦時中の血液製剤の話

・アメリカの乾燥血漿とアルブミン溶液 ・血液型を利用したドイツの人種差別 ・ソ連の死体血輸血 ・ドイツやソ連の血液代替薬剤 とかの雑多な話 続きを読む
48
前へ 1 2 ・・ 6 次へ
深海さかな @dzurablk_kai

(p114より) 『ナチスはドイツ医学の「浄化」を迅速に達成した。ヒトラーが総統になってから五年間で、ドイツ国内のユダヤ人石の数は九〇〇〇人から七〇〇人足らずに急減した。およそ半数は国外に逃れたが、推定四五〇人が自殺、何千人かが強制収容所に送られて姿を消した。』

2018-11-10 21:54:14
深海さかな @dzurablk_kai

『一九四二年には、ナチスの医学教育を監督するルドルフ・ラム博士が「ユダヤ人医師の患者にドイツ人の血統は一人もいない」と誇らしげに宣言した。しかしこの達成は自滅的であった。ドイツの医学といえば、かつては全世界の羨望の的であったが、それが急速に衰退してしまったのである。』

2018-11-10 21:56:31
深海さかな @dzurablk_kai

『医師が不足したため、医学校はアーリア人の学生を大半は医療補助者として大急ぎで育成した。これと同時に医学会が、いんちき治療や民間療法に対して寛容になった。前線から戻った負傷兵を待っていたのは、あまりにも少ない医師と時代遅れの設備や技法だった。』

2018-11-10 21:58:47
深海さかな @dzurablk_kai

『ドイツ人は戦略的にまちがっていたことに気づき、ユダヤ人医師を再動員するように命じたが、そうするにはそれまでの施策が効果をあげすぎていた。ナチスがみずから加えた傷によって、これから見ていくように、戦地の外科や輸血は大きな痛手を受けた。』

2018-11-10 22:00:35
深海さかな @dzurablk_kai

(同著はしがき、p15より) 『血液の省庁的名力は神話のなかにとどまらず、現代の医師の行動にも影響を及ぼしている。ナチスは非アーリア人の血液を輸血に用いることを拒否して軍隊を慢性的な血液不足におとしいれ、さまざまな人種の血液に関連する特性を示すと称する、こみいった図表を作った。』

2018-11-10 22:16:54
深海さかな @dzurablk_kai

『民主主義国家にも血液にかかわる偏見があった。アメリカは第二次世界大戦中に人種主義をとる敵と戦っていながら、軍隊では白刃兵士の感情をおもんぱかって、黒人と白人の供血者の血液を別々に保存していた。』

2018-11-10 22:19:02
深海さかな @dzurablk_kai

『もっと新しいところでは、「汚れた血」騒動の再のフランスと日本で、同国人の血液からつくった血液製剤は清浄であるはずだという信念が、まちがった意思決定の原因になった。』

2018-11-10 22:19:58
深海さかな @dzurablk_kai

(p108) 『ナチスの民族純潔の思想は反ユダヤ主義と社会ダーウィニズムの信奉と、やみくもに権力を求める欲望との有害な混合物だった。ナチスの思想はその残忍な結果はもちろんだが、知識人がナチスに都合のいいように科学を大きくねじ曲げてしまった点においてもとりわけ避難されるべきである』

2018-11-10 22:41:22
深海さかな @dzurablk_kai

(字数の都合で途中一部、読点を省いた点もあり)

2018-11-10 22:41:41
深海さかな @dzurablk_kai

『ドイツの人類学者は、額や唇やまぶたの形、あるいは「ユダヤ人特有の姿勢」でユダヤ人とアーリア人を識別する研究に何年も費やした。指導的な立場の人類学者や医師たちが、プロパガンダと学問をおりまぜて、大衆にアーリア人の優位性を信じ込ませようとした。』

2018-11-10 22:43:30
深海さかな @dzurablk_kai

『たとえば彼らは一九二六年に、「最高のノルマン系の頭部」を競うコンテストを後援し、アーリア人の理想を体現している男女を応募写真で選び、賞金を出した。』

2018-11-10 22:44:28
深海さかな @dzurablk_kai

・・・あたりの記述を読み返していたらふと、役所広司主演版の『連合艦隊司令長官 山本五十六』の劇中の一幕をふと思い出した ヒトラーの『わが闘争』に傾倒する海軍の若手士官を、山本五十六が「その日本語版には削除された部分がある。彼らの純血主義では日本人も打倒すべき人種だ」と諭す場面

2018-11-10 22:47:03
深海さかな @dzurablk_kai

(同じくp108より) 『科学者は血液の研究もねじ曲げた。当時の中心的な人種論者の一人で、ドイツ血液型研究教会の創立者でもあったオットー・レッヒェの指揮下で、血清学の研究をアーリア人の優位性と領土を要求する資格を裏付ける証拠として使おうとしたのである。』

2018-11-10 23:07:43
深海さかな @dzurablk_kai

『レッヒェは民族純潔の研究で傑出したキャリアを築き、ウィーン大学の民族史学の教授を務め、ウィーン優生学会を設立した。その後ドイツのライプツィヒ大学の教授となり、ライプツィヒで人種および民族人類学研究所と民族文化研究所の所長を務め、』

2018-11-10 23:10:04
深海さかな @dzurablk_kai

『二つの人種主義の専門誌、「民族と人種」と「人種人類学雑誌」の編集を行った。レッヒェたち人類学者は、血液型と人種的特性との関連を示すことで、人種主義を「生物学的」基盤から正当化する研究報告をたくさん出した。』

2018-11-10 23:12:28
深海さかな @dzurablk_kai

『彼らの研究はポーランド人血清学者のルートウィッヒ・ヒルシュフェルトの研究を歪曲したものにもとづいていた。』

2018-11-10 23:12:51
深海さかな @dzurablk_kai

(以下は抜粋とか要約とか) ヒルシュフェルトは欧州でランドシュタイナーに告ぐ血清学者として評価されており、バルカン半島で妻と共に軍医として働く傍ら数多の人種の血液型を分析、人種の指標として頭蓋骨の形や皮膚の色を用いるのではなく統計学的血液型分析から文化人類学を研究しようとしていた

2018-11-10 23:16:28
深海さかな @dzurablk_kai

ヒルシュフェルト夫妻は8000を超える血液標本を集め、血液型と民族集団の地理的起源にある程度の相関を見出した(ただしこれはABO血液型においてO型を端から除外していたためとても正確な統計とはいい難いものだったらしい)

2018-11-10 23:29:48
深海さかな @dzurablk_kai

ちろっと解説すると ABO血液型はA型とB型が共優勢の形質を示し、それらに対してO型の遺伝子が劣勢遺伝する遺伝子で、両親から半々に受け継いだ遺伝子が「A(B)-A(B)」「A(B)-O」なら子供はA(B)型、「A-B」ならAB型、「O-O」の場合のみO型となる

2018-11-10 23:33:54
深海さかな @dzurablk_kai

(まあ、日本の瀬戸内海地方では『cis-AB型』という特殊な血液型が局在していて、『AB-O』という遺伝子を持つためにAB型の親からO型の子供が生まれるなんてイレギュラーも起したりするんだが)

2018-11-10 23:38:36
深海さかな @dzurablk_kai

そういう遺伝学的な観点からすると、ヒルシュフェルト夫妻の主張した『O型は血液型物質が「存在しない」ときのみに生じる血液型で、統計から除外すべきである』とする考え方も理解できなくもないのだが 悲しいかな、現代ではこれは分子生物学的にも矛盾を生じる考え方だと証明されてるんだなあ・・・

2018-11-10 23:41:29
深海さかな @dzurablk_kai

O型は確かに赤血球表面抗原のA/B両型物質を生成しない、免疫的に不活性な血液型ではあるが、決してそれは「血液型物質が存在しない」ことを意味しない O型の型物質は第19染色体上の遺伝子によってコードされており、人によってはその上に更に第9染色体でコードされたAB型物質の糖鎖が乗るというだけ

2018-11-10 23:46:15
深海さかな @dzurablk_kai

で、インドのボンベイで発見されたボンベイ型というのが、その「O型の型物質の形状が通常とは異なる(=通常のヒトのO型型物質を有しない)」血液型(図の一番左のそれ なので、O型をABO血液型の統計から弾くというのは、血清学的に言ってもおかしな理論

2018-11-10 23:48:45
深海さかな @dzurablk_kai

閑話休題 ヒルシュフェルト夫妻の研究の一例を挙げると、『イギリス人はA型が43.7%・B型が7.2%』だが『インド人はA型が19%、B型が41.2%』、『フランス人やセルビア人は両者の中間』で『B型は東にいくほど比率が高まり最高なのはインド、A型は西ほど高く中央ヨーロッパ北部が最高』だったとか

2018-11-10 23:53:32
前へ 1 2 ・・ 6 次へ