戦時中の血液製剤の話

深海さかな @dzurablk_kai

こういった統計から、夫妻はヨーロッパに起源を発するA型とインドに起源を発するB型、二つの人種が混ざり合い近現代の民族を形成したと仮説を立てたらしい。 だが特筆すべきは、夫妻はこのデータはあくまで『人種がどこにいたかを示す地理的な情報』としてのみ捉えており（続

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継）ナチスが後に唱えたような『ユダヤ人にはB型が多く劣等種である』のような人種論・純潔論には毅然と反論していたという点（というか、夫妻の正当な研究データをナチスが故意に歪めて喧伝したという方が正しい） この点についてヒルシュフェルト博士は1919年のランセット誌に毅然と反論を述べている

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失礼、ヒルシュフェルト夫妻が１９１９年にランセットに掲載した論文は「この点をはっきり明記した」のであり、自らの論文を歪曲し悪用するナチズムへの反論を述べたのは１９３８年でした

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ルートウィッヒ・ヒルシュフェルト博士いわく『私は血液型を人種の神秘性と結びつける人たちと一線を画したいと思う。･･････地球上における実際の血液型の分布は、人種の交配を反映するものであり、人種が人種のモザイクであることを立証するものである』と

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（ｐ１１０より） 『ヒルシュフェルト夫妻が所見を発表してから七年後に、オットー・レッヒェとその仲間がドイツ血液型研究協会を設立した。それは、ヒルシュフェルト夫妻が避けたいと願っていた間違った考えをまさに体現するものだった。』

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『およそ五〇名のオーストリア人とドイツ人の医師および人類学者からなる協会は、血液型と人種的特長を関連付けるキャンペーンにのりだした。何千枚ものアンケート用紙を医師に配布して、患者の血液型と人種を記入させ、そこから出した相関関係を協会の紀要である「民族と人種」誌に発表するとともに』

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『一九三二年に出版した「血液型便覧」にも掲載した この報告はいまから見るとまるでコミックのようである。東部ヨーロッパ人とユダヤ人はB型がわずかに多かったことから（とはいってB型が一番多数というわけではないのだが）ナチスの医師たちはB型を「スラヴ人」や「ユダヤ人」のしるしであるとした』

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『彼らにとってB型は、色の黒いアジア人種の血液型であり、ドイツ国内の「劣等者」の血液型だったーつまり望ましくない要素だった。研究者たちはB型を、黒い髪やスラヴ的な幅広い顔など、多数のマイナスの人種的特徴と関連付けた。B型は「ドイツ系の名前をもつ人」よりも

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「ポーランド系の名前をもつ人」と関連があり、また田舎の住人よりは都市の住人と、暴力犯罪以外の犯罪者よりは暴力犯罪者と、優美な運動選手よりは動きのぎこちない人と関連があるとしたのである。』

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『A型がドイツ人にわずかに多く、知能や勤勉さなどの望ましい特徴と結び付けられたのに対し、B型は退化傾向のある人たちー精神薄弱者、アルコール依存者、感染に弱い人、神経疾患のある人たちーのしるしだとされた。ある研究者はB型とトイレにいる時間とを関連づけた。』

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『彼の研究によれば、A型の人はすぐ排便するが、B型の人は四〇分以上かかるという。また、ナチスのシンパだったあるフランス人研究者は、B型は「武器をもつよりも小売商にむいている」と書いた。』

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『ばかばかしい研究である。当時でもナチス党員以外の人はだれも、血液型が眼の色以上に気質や習性と関係があるとは思っていなかった。たとえB型がある特性のあらわれだと信じたとしても、血液型が民族性ではなく塵と関係しているという事実は無視できない。』

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『A型とB型の相対的名頻度は、特定の場所の住人の間ではほとんどちがいがない。ナチスドイツの首都ベルリンでさえ、B型のアーリア人はB型のユダヤ人よりも多くいた。しかしナチスはヒルシュフェルトの論旨を台無しにする方向にどんどん進み、

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とうとう一九三八年にルートウィッヒ・ヒルシュフェルト自信がたまりかねて非難の姿勢を示した。「私は血液型を人種の神秘性と結びつける人たちと一線を画したいと思う。地球上における実際の血液型の分布は、人種の交配を反映するものであり、人種が人種のモザイクであることを立証するものである」』

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『しかし遅すぎた。人種主義者はすでに彼の説を手に取り、みずからの目的を正当化するために使っていた。レッヒェの同僚であるパウル・シュテファンはヒルシュフェルトの研究を歪曲して、これは二大血液型人種がそれぞれ進化した二つの「凝集極」が（一つはドイツのハルツ山地に、もう一つは中国に）

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存在する証拠だとした。やがて両人種の子孫のあいだで交配が進んで、ヨーロッパの雑種（もっとも顕著なのがユダヤ人とスラヴ人）が生まれた。その雑種はドイツの東の国境に集中している、という。ドイツ血液型研究協会は、この状況をあざやかな色彩で明示する壁地図を作成した。』

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『黄色のスラヴ系の海の中に、オレンジ色で表示したドイツの血統が、島のように点々と存在する。ことの重大さは明白である。アーリア人は征服者となり、東方の土地にふたたび定住しなくてはならない。そして純粋なドイツ人の血統の島を解放しなくてはならない。』

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・・・以上、ちと長くなった（ヒルシュフェルト博士以降の引用は２ページに渡る連続した続きもの）が、ナチスドイツによる血液型の悪用について分かり易い記述があったので引用してみた

深海さかな @dzurablk_kai

ドイツで使われてた代用血液製剤についても触れたいのだが、それより先にアメリカで実用化された血漿液やアルブミン液について解説したほうが理解しやすいと思うので、そちらから

深海さかな @dzurablk_kai

そもそもなんで、出血多量で人は死ぬの？ と言いますとですね ・・・まあ、血が足りなくなって死ぬんですね（オイ これをマニアックな言い方すると『循環血液量の減少によるショック』とか、そんな感じの言い方したりします

深海さかな @dzurablk_kai

『イラストでまなぶ！　戦闘外傷救護』によると、およそ１リットルの出血（循環血液量の15～25％）の喪失の時点で、『ショックの６P』と呼ばれる兆候が出るそうな

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・prostration（脱力感） ・pallor（顔面ないし手のひら、爪の蒼白） ・frequency pulse（頻脈） ・perspiration（冷汗） ・pulmonary insufficiency（頻呼吸、呼吸不全） ・thready pulse（末梢動脈の拍動の減弱） 戦争映画とかでもよく観ますね

深海さかな @dzurablk_kai

ちなみに同書によると、床の血糊の面積が１フィート（30.48センチ）四方の場合の出血量は、およそ１００ｍｌ その他、負傷部位からでもおおよその出血量の判定ができるらしい 交通事故なんかの場合にも生かせそうな知識だったので是非この場でご紹介したく

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『イラストでまなぶ！　戦闘外傷救護』より 負傷部位によるおおよその出血量 胸部；1000～3000ｍｌ 上腕骨折；100～300ｍｌ 骨盤骨折による後腹膜出血；1000～4000ｍｌ 腹腔内出血；1500～3000ｍｌ 大腿骨骨折；1000～2000ｍｌ 下腿骨折；500～1000ｍｌ ちなみに成人の循環血液量は４～５Lくらい

深海さかな @dzurablk_kai

骨盤骨折による腹腔内出血はかなりじわっと出血していくらしく、『自動車との衝突事故に遭うも意識清明ゆえに自分の足で帰宅、後に出血多量で意識が混濁しそのまま自宅で単身死亡』に至った解剖例とかもあるらしいので、怖いですね twitter.com/dzurablk_kai/s…

深海さかな @dzurablk_kai

この死体格差『全身の20パーセントを越えるアザができるまで殴られると筋肉中のミオグロビンの遊離により腎不全をきたし死亡する』『骨盤骨折は出血が緩やかなので、車と接触して転んだ後に歩いて帰宅してから死亡した事例もある』等々大変興味深い症例が多いので、リョナラー各位にもオススメである twitter.com/dzurablk_kai/s…

2019-01-05 14:06:55