ギガベース日誌 ほのぼの閑話納涼編「Uninformed」

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「散布を逃れた害虫が皆さんの個室へ避難する可能性があります。万が一そのような事態が発生した場合、各々による徹底的かつ迅速な駆除に頼らざるをえません。清浄なる海上生活の為に、何卒ご協力をお願いいたします」 #ギガベース日誌

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ギガベースは予告された時刻を迎える。 艦内は瞬く間に各所から放たれた薄緑色のガスと緑光で満たされる。 煌めきと静寂が行き渡る中、4隻の艦娘が執務室から廊下へと踏み出した。 「マジで毒撒いてるのか？これ」 #ギガベース日誌

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「安心しろ。ただのミントだ」 「すっげえスースーするんだけど……」 「眠気覚ましには丁度いいだろう？作戦時間は限られている。頼むぞゴーストバスターズ」 「了解です。皆さん、行きましょう」 大和を先頭に、他3隻がその後ろに並ぶ形で部隊は歩みを進めていく。 #ギガベース日誌

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執務室では、艦内の全監視カメラと4隻のヘッドマウントカメラからの映像がリアルタイムでモニターに映し出されている。 大淀、明石、不知火、DfJは簡易的な司令部を執務室に設け、室内に待機していた。 「こうも多いと見にくいなぁ」 「じゃあ何で沢山つけたんですか……」 #ギガベース日誌

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「俺が目を凝らす必要も無いが、沢山あったほうがかっこいいからな。主任！艦内の様子は！」 「特に異常は無し。ホントに出てくるのかねぇ、その幽霊ってヤツは」 「出てきて貰わねば困る」 #ギガベース日誌

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大和達はそれといった異常に遭遇する事なく歩みを進め、大淀からの目撃情報があった食堂前通路に差し掛かった。 「なぁレの字」 「んだよ」 「お前、昼にバリーのおっさんのビデオに出たとか何とか言ってたよな」 「あぁ、それが？」 #ギガベース日誌

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「脱いだのか？いくら貰ったんだ？」 「何か勘違いしてるようだから言っとくけど、あくまでも脇役だぞ。練度低い艦娘を惨たらしくぶっ殺すだけで金貰えるんだから楽な仕事だぜ」 「要するに竿役ね」 「せめて尻尾役って言えよ！」 #ギガベース日誌

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「どれぐらい貰ったんだ？」 「大した額じゃねえ。だが、かなり売り上げが良かったらしくてな。次回作出演の約束を取り付けた。好評の嵐だったぜ？『まるで本物の深海棲艦が出演しているかのよう』って」 「バレないものなのね……」 #ギガベース日誌

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「給料は何に使ったんだ？」 「第六の連中と寿司食った。楽な仕事だしお前らもどうだ？」 「遠慮しておくわ。お金が貰えても、一方的な殺傷なんて退屈で死んじゃうわ」 3隻の下劣な会話に入っていけない大和の歩みは食堂を完全に通り過ぎ、通路の突き当たり近くに差し掛かる。 #ギガベース日誌

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「しっかし、戦艦レ級が艦娘を八つ裂きにするビデオが爆売れするとか世も末だな」 「好事家の連中が考える事はわからんね」 「皆さん」 大和の唐突な呼び掛け。3隻は微妙な空気を察し立ち止まる。 #ギガベース日誌

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「あーいや、なんかすまんな。一応作戦中だってのにくだらねぇ話を……」 「いえ、そうでなく……何か、聞こえませんか？」 「…………ホントだ」 3隻が耳をすませると、艦内設備の駆動音の中、金属板を叩くような音が断続して響いている事に気付く。 #ギガベース日誌

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「遠……いや、近づいて来てる？司令部、こちら大鳳。異音を確認、そちらでも拾えてる？」 「少し待て……確認した」 「願ったり叶ったりだ。さっさと済ませようぜ」 天龍の腕を包む艤装が変形し、大量の札を貼り付けたブレード一体型のアームユニットが姿を現す。 #ギガベース日誌

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「対応はそちらに任せる。好きに料理しろ」 「オッケー。じゃあ御言葉に甘えて……」 「待ってください、レーダーに反応が。突き当たり右側20m先、艦娘です」 「はぁ？！」　#ギガベース日誌

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大鳳が突き当たりまで駆け両側の通路を確認するも、そこに艦娘の姿は無い。 「レーダー壊れてんじゃねえか？」 「……下がっていてください。引きずり出します」 大和はその場で一瞬屈み垂直にジャンプ。跳躍の勢いで天井に右手を突き刺し、掛け声と共に着地した。　#ギガベース日誌

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「おどりゃあっ！！」 獣の生皮の様に剥がされる天井。大和は着地の勢いで掴んだ天井の金属板を床に叩き付け、数十メートル先までの天井が波打つように剥がれ落ち、その残骸は天井裏のひしゃげたダクトと共に落下した。 「オブァッ！！」　#ギガベース日誌

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崩壊する天井が響かせる轟音。その中に混じる踏み潰された蛙のような悲鳴の主は、潰れたダクトの中から弱々しく這い出した。 「19……てめえ、こんなところで何してやがる」 「潜水艦のダクト巻きか？深海棲艦でも食わねえぜ」 「おヴぉっ……これは……」　#ギガベース日誌

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「再度の銀蝿とは、百折不撓の心意気素晴らしいわね」 大鳳の3連クロスボウアヴェリンが19の額に突き付けられる。 「み、皆こそ食堂前で何してたのね！19は食堂が害虫の危機に晒されている今、これを機に不埒な銀蝿を企む盗人猛々しい艦がいないか確認しに来ただけなのね！」　#ギガベース日誌

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アヴェリンに装填されている矢は通常のコジマボルトではなく、丁寧に紅白の装飾を施された破魔矢である。しかし、先端の形状から貫通力を保持している事は19の目からも明らかだった。 「らしいけど。どうする？」 「悪いけど、その役目は提督本人から俺達に任されてんだ、よっ！」　#ギガベース日誌

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ブレードの面側で顔面を叩かれた19は、そのまま壁に頭部を強打。間抜けな悲鳴を零した後に沈黙した。 「ご丁寧にガスマスクまでつけやがって」 「ダクトを通るのにこの胸は邪魔だったな～」　#ギガベース日誌

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「どうする？ここに置いていくか、何処かに縛っておく？」 「元の場所に戻しとこう。大和、頼んだ」 「了解しました。そぉれっ！！」 大和は19を半壊した天井の裏に投げ込み、4隻は19がいた方向とは反対側の通路へと進んでいく。　#ギガベース日誌

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3時間後。 コジマプラント上層階、コントロールルーム。　#ギガベース日誌

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「幽霊なんざ何処にもいやしねえじゃねえか！！」 「ミント臭過ぎて出てったのかもね」 「おい司令官！もう帰ってもいいか！」 広大な艦内の捜索を隅々まで続けていた4隻。しかし、幽霊騒ぎとは無縁の静寂さが齎す退屈ときつめのミント臭に、天龍とレ級は音を上げつつあった。　#ギガベース日誌

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「こちら司令部。こちらでもモニター監視を継続していますが、それらしき実体は確認できていません。ですが、探索は続行してください。その先の第4エレベーター付近は目撃情報が集中している場所です」 「了解……っていうか、提督はどうしたんだ？」 「寝てしまいました」　#ギガベース日誌

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「は？」 「仕方ありません。ついさっきまで、幽霊に関連した異常事態が無いか過去の報告を洗い出していたのですが。肉体的には老人に近いので、許してあげてください」 「もし幽霊退治に成功したらぜってえ間宮のフルコース一週間分奢らせるからな、クソッ！」　#ギガベース日誌

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DfJの寝顔を思い浮かべ余計に怒りを募らせながら、レ級は早足で第4エレベーターが存在する区画へ進む。 貨物搬入やコジマプラント関連設備の交換の為に設けられた大型エレベーターの扉は、血の様に赤い夜間灯の光に照らされ、その重厚さを沈黙の中に佇ませていた。　#ギガベース日誌