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小柳/美月/あおいろ @aoiromituki_kon
大神一郎のお話は 「花なんか別に好きじゃなかった」で始まり「本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った」で終わります。 #こんなお話いかがですか shindanmaker.com/804548
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花なんか別に好きじゃなかった。道端に咲く花をぼんやり見て「綺麗だな」とは思うけれど、心を揺さぶられる事はなかった。 冬を越し、芽吹きの季節。鮮やかな花々が眼前に広がっても、大神少年の興味は野山を駆け巡る事に注がれていた。
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やがて背は伸び、周囲にも変化が訪れる。ある年の山が目覚める頃、彼は故郷を離れた。 広大な海へ。
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そこは青い世界。 どこまでも続く海に、どこまでも広がる空。 陸のことが懐かしいと思っても、浮かぶのは学校の周りの歓楽街の事ばかり。 (航海の後は何を食べようか) 食欲旺盛な青年の頭はそんなことで一杯であった。
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そんな、海で生きようと決めた青年に訪れた試練。陸勤め。 衝撃は計り知れず、落ち込みもした。だが彼は再び海に戻る決意をし、船を降りた。 ......今まで見た事のない煌びやかな世界に足を踏み入れた青年は、初めて「花」に目を奪われる。
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色とりどりの花がライトを浴びて舞台を舞う。 彼は瞬きを忘れ、口を開けてそれを見ていた。その姿を覗き見る上司が笑っていることにも気付かず、彼はその場に立ち尽くす。 続く場内を揺らさんばかりの拍手の音に更に衝撃を受け、大神の陸勤めは始まった。
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「どうでした?」 感想を求められた大神は、 「凄い」 としか言葉を紡ぐことが出来なかった。表現する言葉は他にもあるはずなのに、出てこない。学校では習わなかった。 何なんだ、この、心を震わせるものは......
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「大神さん、目が赤いですよ?」 不思議そうに覗き込む少女の顔。彼はどきりとし、数歩後ずさる。自分の顔に手を当て、不意に熱を感じ、驚いた。 (この感情は何だ?) 心臓の鼓動を感じる。 「わたくし達の舞台を余程気に入ってくださったのでしょう」 後ろから声がかかる。
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(確かに、そのようだ......) 時間を置き少し冷静に自分を見られるようになった大神は、先程の舞台を振り返る。 初めて見る花組の舞台は、光に溢れ、輝いていた。 太陽に照らされ輝く海原とは違う、初めて見る色だった。
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「自分の知らない世界が、こんなにも近くにあったなんて」 口から出た言葉。 そして気づいた。 (世界は俺の知らない事ばかりだ) 本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った。 おわり
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大神一郎に「何のために生きてるの?」と問うと、暗い、暗い場所で、大神一郎はぼうっとして、「やりたい事がまだまだあるからだよ」と答えた。 #あなたの生きてる意味 shindanmaker.com/681061
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よく眠り目覚め窓の外を見やると、真っ暗だった。 まさか寝すぎたのではないか。そう思い慌てて周囲を見渡し......大神は不思議な感覚にとらわれる。 周囲に何の気配も感じられない。更には空気の動きも無いように思えた。 だが眼前には見慣れた自室の光景。 彼はベッドを離れ窓に寄った。
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今晩は満月だった。 窓枠に手を伸ばし、月明かり浴びようとする。 が。 (......何故光が差し込んで来ない?) 大神は手を止める。 満月の光量ならば、部屋に光が差し込んでくる筈である。それが、ない。 彼はドアに向かった。この異変の手がかりを探そうと。
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ドアが開く。 その先には見慣れた廊下......ではなかった。 踏み出したら真っ逆さまに落ちるのではないか、と思う程の闇が広がり、大神は足を踏み出すのを躊躇う。 (まさか夢じゃないだろうな) とりあえず右手の人差し指の爪を親指の腹に立ててみる。痛みがはしった。
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夢では、なさそうである。 大神は意を決して一歩を踏み出した。 こつ。硬い感触が足に伝わる。どうやら落ちはしないらしい。 摺り足に近い形で、彼は進んだ。 周囲に目を向けるが、何もない闇が広がるばかりで、自分の居場所も分からない。 だがやがて、眼前にぼんやりとした何かが映った。
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近づくとそれは人影であった。 黒い髪と真っ白い肌。だがその顔つきはもやがかかっているかのようにはっきりとしない。身体は黒い服に包まれていた。 少しの距離を置いて、大神は人影と対峙する。 人影が口を開いた。 「君はどうして生きているんだい?」
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突拍子も無い質問に、大神は戸惑う。 「どうして、って......」 腕を組み、答えを探す。 「この街を守るため」 すぐにその言葉が口から溢れた。 だが人影は首を傾げ、 「それは、君じゃなきゃだめなことなの?」 「勿論」 間髪を入れずに答える。
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「じゃあ、それが達成されたらどうするの?」 「え......」 人影の次なる問いは大神の予想を超えたものだった。 この街を脅かす者がいなくなったら。それはとても喜ばしい事だ。だが自分は? 「君はどうするの?」
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もしかしたら。大神は思う。自分は平和と同時に戦いを心の何処かで望んでいるのではないか? 敵がいれば自分は今の任務を......大切な仲間たちとの歩みを続けられるだろう。だが平和になれば、自分は大好きな場所を離れ別の場所に身を置くことになるだろう。
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邪な己の心に気づき、大神は狼狽える。 「俺は、何のために戦っている.....?」 街を守りたい。人々を守りたい。その気持ちに偽りはない。 だが、一方で敵の存在を求めている。 足元にぽっかりと穴が空き、真っ逆さまに落ちていく、そんな感覚に彼はとらわれていた。
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人影は改めて問う。 「君は何のために生きているの?」 大神は動かない頭を何とか動かそうとする。 だが浮かんで口に出そうとする前に言葉はかき消え、声にならない。 虚ろな目で大神は人影を見やる。すると、いつのまにかその手に鎌が握られていた。 大神は数歩、後ずさる。
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何か言わなければ。大神の奥底に眠る感覚が危険を察知する。 だが頭には何も浮かばない。 一歩ずつ迫る人影。 (何か......何かないのか!) 奥歯をギリっと噛み締めたその時、一瞬光が射した、気がした。 (そうだ) 「やりたいことが、あるんだ」
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人影は足を止めた。首を傾げ、大神を見やる。 「花組のみんなの舞台を観たい。一緒に舞台を作りたい。それだけじゃない。またみんなで出かけたり、誕生日を祝ったり、合宿にも行きたい」 月組や風組のみんなも忘れてはいけない。
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「やりたいことが、まだまだあるんだ」 そう言う大神の表情は、先程までとは打って変わって希望に満ち溢れた明るいものだった。 「答えになってるかな?」 尋ねると、人影は小さく頷き、 「もう少し、待つことにしよう」 鎌を捨てた。 ゆらり、その身体が揺れる。
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