「セカイ系となろう系の違い」の考察の続き(と、TVアニメ『YU-NO』5話の感想)
「YU-NO」5話を短く要約(ネタバレ)しよう。亜由美が自殺する運命を回避しようとして、何度も宝玉のセーブポイントからやり直す主人公。しかし、自殺の運命をなかなか変えられない。そこに朝倉が現れた……。
2019-05-02 23:57:02本題に入る前に、ちょっと細かい訂正。3話の主人公のセリフ、「パンツ脱げ」じゃなくて、「パンツ脱げ【ば】」でした。ニュアンスが少し弱まるけど、感想の大意は変わりません。
2019-05-03 00:00:23「YU-NO」5話は、亜由美の生死に関わるので、ループ感が強く印象に残る。そこで、ループ物の作品において、ループ物がどういう役割を果たしているのか、今回は考えてみたい。
2019-05-03 00:01:47なお、「YU-NO」の世界観は「パラレルワールド」だから、たとえば『ハルヒ』の「エンドレスエイト」のように、単純に「ループ」する世界観とは少し違う。が、例によって、大まかなくくりでざっと捉えたい。
2019-05-03 00:03:09さて、ループするのと、しないので何が違ってくるのか? 表現面で言うと、出来事の一回性が失われる。現実と同じように、時間が流れているという感覚はなくなる。だから、リアルでないという見方もできる。
2019-05-03 00:05:15もし「YU-NO」5話がループしない場合、亜由美は運良く助かった印象が残るだろう。「本気で死のうとしていた訳ではないのではないか?」といった疑問の余地も残るだろう。
2019-05-03 00:07:43しかし、何回もループすることで、亜由美が自殺することの確率が高いことが示される。そして、亜由美は偶然助かったのではなく、豊富の悪事の証拠が示される、必然的な出来事による、という別の印象を生じさせる。
2019-05-03 00:09:41「ひぐらし」では、「時報」の相性で呼ばれていたように、富竹は毎回ほぼ必ず死ぬ。しかし、他の登場人物は、死んだり死ななかったりする。だから、富竹が死ぬ必然性と、強い殺意を持つ犯人の存在を示唆している。
2019-05-03 00:13:53だから「YU-NO」5話で、ループで何回も、亜由美の自殺を繰り返しているのは、それだけ自殺の強い意志(または生きる意志の弱さ)を示している。まあ、クライマックスを作る、演出上の都合などもあるだろうが。
2019-05-03 00:16:03今言ったのは、作品内部の表現の問題だが、作品外部の制作体制の問題もある。どういうことか? ループ系が相性が良いノベルゲームを例にしよう。「YU-NO」も「ひぐらし」も、ループ系かつノベル(ADV)ゲーだ。
2019-05-03 00:19:11まず前提として、PCゲームでADVゲームやノベルゲームは、テキストの分量が多い。「YU-NO」も「ひぐらし」も何十時間も掛かる。なぜ、大作化するのか。これにはいろいろな要因があるが、ここでは簡単に説明する。
2019-05-03 00:21:07ひとつには、作画に労力が掛かるマンガやアニメなどと違い、テキストは量を増やしやすい部分。なので、ボリュームが大きいことは、ADV/ノベルゲームの長所だから(ただし短所にもなりうる)。
2019-05-03 00:22:55もうひとつは、PCゲーム(多くはエロゲ)は、流通の都合があって、単価を下げにくい価格構造になっていたから。価格を下げるよりも、価格を固定して、ボリュームの方を増やすインセンティブがあった。
2019-05-03 00:24:19それならパッケージがなく、コストが安いDL販売に移行すれば良いではないか、と考えるかもしれない。が、エロゲ制作企業は、流通のしがらみでなかなか移行できなかったのだ。
2019-05-03 00:25:13この「しがらみ」というのは、まったく何の根拠もなく、決めつけでそう言っているのではなくて、PC美少女ゲーム情報誌(エロゲ雑誌)の、制作企業に対するアンケートを踏まえて言っている。
2019-05-03 00:28:05さて、そういうわけで、エロゲはボリュームが大きいことが求められた。しかし、それはそう簡単ではない。だから、ひとつには、シナリオの前半では日常パートを描いて尺を稼ぐ、という手法がある。
2019-05-03 00:29:27原作「YU-NO」でも、序盤は日常の描写が多いし、「ひぐらし」の最初の「鬼隠し編」でも、部活などの日常を描く部分の量がかなりある。この二作は代表で挙げただけで、「序盤は日常」は、ノベゲで普通の手法だ。
2019-05-03 00:31:37『ひぐらし』は分割リリースされているが、もし最初の数編はずっと日常パートを続けていたら、(同人発で商業化するほど)ヒットしなかっただろう。
2019-05-03 00:34:20「ひぐらし」においては、ボリュームを確保しつつ、分割リリースするので、各編ごとに話の山を作りたい、という販売戦略上の要求があり、その条件を満たすのがループ構造だった。
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