アニメ『さらざんまい』に影響を与えた、芥川龍之介『河童』の考察 ~「僕は生まれてきたくありません」という視点と、社会問題との関係~

つい最近まで放映されていたテレビアニメ『さらざんまい』。その元ネタのひとつであろう作品、芥川龍之介の『河童』について、今回考察していきます。「胎児の視点」、ひいては「他者の視点」が議論の主軸になります。なお、ネタバレについては、内容の紹介はごく一部(河童の胎児のシーン)だけです。
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しろうと @sirouto

今の日本が高齢化していることとも関係があるが、そもそも胎児は投票権を持っていないので、民主的な政治システムで、自然とまだ生まれてこない胎児にしわ寄せが来ていて、少子化になっているとも見れる。

2019-06-24 00:00:53
しろうと @sirouto

「死人に口なし」という言葉があるが、まだ生まれて来ていない胎児は、死人や幽霊も同然なので、権利的に割りを喰うことになり、少子化になるという流れだ。

2019-06-24 00:02:55
しろうと @sirouto

「胎児視点」というのに、違和感を覚えるかもしれない。そこで、少し別の角度から見てみよう。フランスのジャック・アタリ氏という経済学者がいるが、彼が「日本は人口減少を選択した」と発言していた。

2019-06-24 00:07:01
しろうと @sirouto

「少子化や人口減少は、自然に起こるので仕様がない」といった考えが自然に思えるかもしれないが、それも国家の選択だということだ。じっさい、そういうフランスでは、日本ほどひどい少子化にはなっていない。

2019-06-24 00:08:18
しろうと @sirouto

難しいことと、必要なことは別なので、「そう考えるのが、そう選択するのが難しいから、必要ない」とは限らない。胎児視点の見方は難しいが、同時に今の世の中に必要なのだ。

2019-06-24 00:10:23
しろうと @sirouto

今の日本で、少子化が社会問題になっている、というのもあって、少子高齢化と人口減少を問題にしてきたが、たとえば自然環境の問題というのも、同じような構造になっている。どういうことか。

2019-06-24 00:11:58
しろうと @sirouto

胎児視点で少子化問題を見るのと同じように、たとえば自然環境の問題は、人間以外の動物や自然の視点で見ることが必要になる。

2019-06-24 00:13:45
しろうと @sirouto

「遺伝子組み換え作物」の問題があるけれど、遺伝子診断やクローンなどの倫理的問題も、いってみれば「遺伝子組み換え人間」のような問題だろう。遺伝子は生物に共通するから、同じ構造になっている。

2019-06-24 00:15:30
しろうと @sirouto

なおここでは、個々の問題の是非や賛否、問題解決のための政策などは論じない。芥川の『河童』の胎児視点のような、「不可能な視点で見る」ことの重要性、という一点が一番言いたいことだからだ。

2019-06-24 00:17:38
しろうと @sirouto

なんでまた、「不可能な視点で見る」などという、難しいことが要求されてしまうのか? ここで、少し別の角度から見てみよう。

2019-06-24 00:18:56
しろうと @sirouto

たとえば、ビジネスの世界を見ても、昔の大量生産の時代と違って、今はすぐレッドオーシャンになってしまうので、マーケティングや付加価値が重用視されている。そしてそれには「ユーザ視点」が不可欠だ。

2019-06-24 00:20:20
しろうと @sirouto

だがこの「ユーザ視点」というのも、結局のところ「自分でない他者の視点」ではないか(もちろん、胎児と違い、ユーザは普通に言葉を話すが)。結局、「相手の立場に立つ」という、普遍的な問題なのだ。

2019-06-24 00:21:54
しろうと @sirouto

ただ「相手の立場に立つ」というとき、「自分と交換可能な立場しか想像しない」、というのは非常によくある。「ポジショントーク」とか「内輪向けの話」とかがそうだ。胎児視点はそうでなく、他者の視点である。

2019-06-24 00:23:11
しろうと @sirouto

どうして、胎児視点やら動物視点やら、他者視点が必要な時代になってきたかといえば、外部拡張の時代が終わったからだ。大航海時代とかなら、開拓地に進出することで、発展して問題が解決したかもしれない。

2019-06-24 00:24:16
しろうと @sirouto

しかし現代では、開拓地がもう残っていない。そこで、システムの外部から利益を取れず、内部から取ろうということになる。で、問題を社会コストにおしつけて利益を搾取する、ブラックな仕組みが増えると。

2019-06-24 00:26:45
しろうと @sirouto

また、国債を際限なく増やすとか、核燃料の処理を先送りにするとか、「未来への先送り」も、同じような不利益を他者に押しつける構造になっている。民主制で投票する主権者も、結局は「今」いる人間だからだ。

2019-06-24 00:28:53
しろうと @sirouto

ここで、たんに私の個人的な解釈にとどまらないよう、他の論者の意見を引用してみたい。

2019-06-24 00:31:39
しろうと @sirouto

まず、哲学者の「小泉義之」氏が、たしか芥川の『河童』に言及していた。(だいぶ昔読んだ本なので、申し訳ないが出典を紹介できない)

2019-06-24 00:32:23
しろうと @sirouto

彼が言うには、芥川の『河童』で描かれている胎児の自由は、本当の自由(超越論的自由)ではないと言う。なぜなら、かりに河童の胎児が生まれるかどうかを選択できても、母体を選べてないではないかと。

2019-06-24 00:34:18
しろうと @sirouto

そこではものすごく難解な哲学的議論がなされていたが、ここでは単純化しまってこう考えたい。たしかに、胎児は母体を選べない。そこで、「自由」というためには、どうすればいいか?

2019-06-24 00:35:27
しろうと @sirouto

私が考えるのは、極端な格差がなくて、機会平等のようなものが、そこそこ保証されている社会であれば、(母体を)選択する必要性が薄れる。つまり、不自由さが減る。自由と平等は、ぜんぜん別のものではない。

2019-06-24 00:37:23
しろうと @sirouto

小泉氏の議論は、原理的で哲学的な考察で、私の今の主張は実践的で社会的な考察だから、別の水準の議論ではある。ただ簡潔にまとめれば、神の自由が不可能なのは仕様がなく、人間の自由を保障すべきだと考える。

2019-06-24 00:39:29
しろうと @sirouto

また別の論者に、現代思想家の「ジジェク」氏がいる。彼は精神分析家のラカンを引用しながら、「対象a」と社会問題の関係について論じている。やはり難解なので、引用というより単純化して私の言葉で説明する。

2019-06-24 00:42:13
しろうと @sirouto

「対象a」とは「他者の視線」「不可能な視線」を具現化した対象だ。たとえば、「お金」を考えれば分かる。商品に対する他者の評価を具現化したものが貨幣だろう。物質的な紙や金属が貨幣の本質ではない。

2019-06-24 00:46:23
しろうと @sirouto

対象aは物理的な実体がないが、欠如した主体の幻想として機能する。……というような説明がジジェクに限らず、ラカン派の本ではよく出てくる。が、初見では意味が分からないので、私が極端に単純化しよう。

2019-06-24 00:48:15