野口旭氏「MMT(現代貨幣理論)の批判的検討」に反論する

思ったより面白いものではなかったので、正直言って失望しました。期待しすぎたかもしれません。 キーワード:内生的貨幣供給論、アコモデーション、金利政策、ファインチューニング、自然金利、ヴィクセル的累積過程、真正手形主義、日銀理論、古典派的クラウディングアウト、ケインジアン的クラウディングアウト、予算制約式、FTPL、長期停滞理論、リカード=バローの中立命題
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

具体的に言うと、実質利子率による割引を考慮すると、(平均的に)実質利子率以下の実質債務増加率は許容される(政府債務の現在価値が発散しない)ことになります。 消費と貯蓄の異時点間選択を考慮すると、実質利子率は実質経済成長率に収斂するので、 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:12:06
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

この点についても、どうも野口旭氏の主流派経済学理解が乏しいのではないかと疑わざるを得ません。FTPLが元にする政府の予算制約式に見るように、政府の実質債務残高は、決してゼロ(ないし黒字)になることは要求されない。あくまで無限遠での無発散だけが要求される。 pic.twitter.com/BYCKxC76ty

2019-08-19 20:02:40
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

大雑把に言うと、主流派の政府予算制約式においても実質成長率(≒実質利子率)より低い実質債務増加は許容されるわけで、必ずしも非不況期において、均衡財政や財政黒字が要求されるわけではありません。 (故に、PB黒字化を主流派経済学者が求めるのは謎めいているのですが…) twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:19:55
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

さらにマニアックなことを言えば、クルーグマン、エガートソンなどの長期停滞論者の議論を借用すると、拙note『経済学的財政破綻論の批判的検討』 note.mu/motidukinoyoru… で論じたように、実質成長予想の低下に伴う均衡実質利子率の低下は、 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:32:47
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

主流派の枠組みにおいても、潜在貯蓄需要>投資を齎し、経済を不況型不均衡に陥らせることになる。この場合、現時点における政府債務残高は過"少"になり得、過"少"な政府債務残高の増加率が少々上振れしようとも、財政インフレをきたし得ないということになります。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:36:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

話が逸れたので元に戻しますと、既に論じたように、野口旭氏は、主流派の予算制約式の本質的な構造を掴みきれておらず、またクルーグマンら修正ニューケインジアンの枠組みとの擦り合わせも上手くいっていないのではないか? という疑念を抱かざるを得ません。となれば、 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:38:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

野口旭氏は、MMTを批判的に検討する以前に、その土台として確保、立脚すべき主流派経済学(修正ニューケインジアン含む)の理解についても、不安定ないし脆弱なのではないかと疑わざるを得ないというのが、私の正直な感想なのです。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-19 20:40:12
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

最後に、MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(6完)─正統派との共存可能性 | 野口旭 newsweekjapan.jp/noguchi/2019/0… に取りかかっていきましょう。

2019-08-22 18:36:26
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

まずは以下の部分から。 ここでは、野口旭氏は 「ある政策金利に誘導する通常の金利政策において、財政支出が不履行になることも、財政支出が金利を上下させることもない」 という事実と、 「MMTが金利によるファインチューニングに疑義を呈している」 という政策主張を混同してしまっている。 pic.twitter.com/yRKetrfIFA

2019-08-22 18:40:14
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

仮に金利のファインチューニングが行われるとしても、そうして誘導される金利に従って、財政支出の履行を支える金融調節は行われるし、財政支出による金利低下を相殺する金融調節が行われる。 これはファインチューニングを放棄するか否かとは無関係に成り立つことです。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-22 18:42:19
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

次に以下部分について。既に以前論じた togetter.com/li/1392289 ところにもなるのですが、内生的貨幣供給によって生産がなされる信用経済においては、ミンスキーがかつて論じた通り、投融資は実物収益率を大きく逸脱して揺動し得るものであって、決して均衡に向けて調節出来るものにはなりません。 pic.twitter.com/43Sr67RhSH

2019-08-22 18:51:26
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

続いて以下部分。 これについては「将来的に納税するなら、貨幣は貯蓄手段にならない」というバローの考え方自体が完全に間違っている。 政府への将来の支払手段という時点で、貨幣は民間にとっての資産(政府にとっての負債)以外の何者でもないからである。 pic.twitter.com/gWc3y39Vv1

2019-08-22 18:57:21
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

少し腰を落ち着けて考えて欲しいのだが、例えば銀行貨幣(銀行預金)は将来的な銀行への返済を前提に信用創造されるわけだが、では銀行貨幣は非金融主体にとっての貯蓄手段ではないということになるだろうか? 普通に考えれば、まずそうはならないだろう。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-22 18:59:43
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

政府貨幣(いわゆる通貨)においても同様だ。 政府貨幣は現在および将来の生産者に課され、だからこそ生産者から財を購入する手段となるため、通貨保有者にとって政府貨幣は紛れもなく資産として機能する。 (政府支出≡通貨発行の増加は、供給制約の限りで生産を増加させる。) twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-22 19:02:28
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、以下の部分には野口旭氏の様々な欺瞞が含まれている。 ここまでは一貫して、金利のファインチューニングに対するMMTからの疑義について論じられていたのに、金利のファインチューニングとは関係のないフィナンシャル・アクセラレータを挙げて金融政策擁護の論拠にしようとしている。 pic.twitter.com/j5DQPfvDi4

2019-08-22 19:07:15
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

当然のことながら、国債と準備預金の両替で行われる金利調節は、非政府部門の純資産や安全資産を増加させないのであり、フィナンシャル・アクセラレータの出る幕はない。 あえてミスリーディングしているのか、そもそも理論的理解に乏しいのか、いずれにしてもお粗末だろう。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-22 19:09:05
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、様々な理論的アプローチを挙げるなら、リバーサルレートの議論も取り上げないのは片手落ち。(金融政策擁護のために敢えて外したのか?) メカニズムの想定の仕方、モデルの組み方次第では、金利政策の効果は極めて不確実になることを論じ落とすのは不誠実であろう。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-08-22 19:12:16
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

野口旭氏の主張で、唯一見るべきところがあるとすればこの部分。 確かに租税貨幣論を基礎にする以上、通時的予算制約についての詳細な考察は必要と私も考えるし(この点で私は純正のMMTerではない)、そうした観点から書いたnoteが「経済学的財政破綻論の批判的検討」 note.mu/motidukinoyoru… である。 pic.twitter.com/Z0urkpneTZ

2019-08-22 19:17:06
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