ぱすイカ二次創作⑤

ハヤシライスがたべたい 書いたもの:https://t.co/lk71qxBACg
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感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「ヤッタネ!日付、ソッチ合ワセル。都合イイ、決メタラ、連絡欲シイデス。ヨロシクナノネ」 「ああ。じゃあ切るぞ、……ボス?すみません、今お返ししま……ボス!?」 「代わったぞ」 「エッ」 「こういうのは早い方がいいだろう?明後日なら俺もオクトーも手が空いているぞ」

2019-09-08 08:57:18
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「ボス……!?」 「あれにはキャンセルを入れておけ。なに、それほど大事な用事でもないだろう?……もしもし」 「聞コエテルデス……」 「そういうことだ。二人で思う存分『遊んで』くるといい。それじゃあ」 通話が切れた。 ……相変わらず、すごい人だ。どうやって会話の内容を悟ったのだろう?

2019-09-08 09:00:00
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

とにかく、うまく約束をとりつけることができた。シグルイには感謝しかない。 そして、約束の日。 ナワバリバトルの受付ロビーの前で待ち合わせをしたのだが…… 「アラマァ~…」 モニターに映し出される、『臨時工事中』の五文字。 「ツイテナイノネ……」

2019-09-08 10:19:05
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「一時間ほどかかるらしい。さて……どうする?」 「ウ、ウーン、オ茶スル?」 表向きは困惑しているが、胸中では、それはそれでよし、と既に思考を切り替えていた。 「ユックリデキルトコ、ワタシ、知ッテル。ソコ、イイ?」 「ああ。……一度、きちんと話をしておきたかったしな」

2019-09-08 10:21:52
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

二人がやってきたのは、静かで落ち着いた雰囲気のカフェ。店内が適度に狭い、居心地のいい空間だ。コーヒー豆の香りが、安らぎをもたらしてくれる。店内には、店員とヨーコたち以外には誰もいない。 奥の方の二人席を選び、適当に飲み物を注文する。

2019-09-08 10:26:22
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「ココネ、」 一通り落ち着いたあと、ヨーコから声をかける。 「……お店の人も、私たちと同じなの。」 いつものカタコトではなく、彼女の『方言』。オクトーの目が変わる。 二人のテーブルに、2杯のコーヒーが運ばれてくる。オクトーは店員の顔をちらと見た。

2019-09-08 10:31:03
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「ごゆっくりどうぞ」 微笑む店員。特徴的な目元。髪の毛先が、くるんとカールしている。 厨房の中にも、同じようなのが数人。ヨーコの言葉は本当らしい。 「……なるほど」 オクトーも、彼女の『方言』に合わせる。 「この時間帯は、ほとんどお客さんいないし、ちょうどいいかなあって」

2019-09-08 10:34:06
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オクタリアンという種族がある。 平たく言えば、『タコ』。特徴は、ほとんどインクリングと同じだ。違うところを挙げるとすれば、言語、見た目。それから、手先が器用で、真面目で勤勉。それと……彼らが住まう場所。 彼らの主な棲み家は、「地下」なのだ。

2019-09-08 10:42:50
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

なぜ、彼らが地下に住んでいるのか。それを説明するには、長い歴史を辿る必要がある。 急激な海面上昇により、陸に住むほとんどの生物は絶滅してしまった。ニンゲンもそのうちのひとつ。 彼らの代わりに台頭したのが、インクリングやオクタリアンなどの元水棲の生物たちだ。

2019-09-08 11:14:18
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

イカとタコ。彼らは手を取り合い、その高い知性で高度な文明を作り上げた。しかし、海面のさらなる上昇で、陸地が急激に減少すると……彼らは数少ない「縄張り」で、争い始めてしまった。 後に、「大ナワバリバトル」と呼ばれる、戦争が行われたのである。

2019-09-08 11:24:11
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結果は、イカたちの勝利。その戦争をきっかけに、イカとタコの関係は決裂してしまった。勝者は陽だまりの地上へ、敗者は暗き地下へ。 長い長い年月を経て、イカは「タコ」の存在を忘れてしまった。 だが、タコは、「イカ」に対して強い復讐心を抱き続けていた……

2019-09-08 11:26:39
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

数年前に、イカたちが暮らすために必要な、大切なエネルギー源「オオデンチナマズ」が失踪する大事件が発生した。しばらくしたら戻ってきたので、たぶん普通に脱走したとかじゃない?なんて、イカたちは暢気に考察していた。 しかしその裏で、熾烈な戦いがあったのだ。

2019-09-08 11:50:34
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地下での苦しい生活で、物資やエネルギー源に困窮していたタコたちが、オオデンチナマズを盗んだのだ。それを取り返したのは、「New!カラストンビ隊」と呼ばれる、三人のイカの若者。 彼らは、タコたちの統率者・タコワサ将軍と戦い、見事勝利してみせた。

2019-09-08 11:53:02
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そのときの戦いに、多数のタコの兵士たちが同席していたのだが…… カラストンビ隊の二人の少女が歌った、とある曲がきっかけで、心変わりした者がいるらしい。 地下から、出たい。 イカたちと一緒に暮らしてみたい。 ヨーコも、そのうちの一人だ。

2019-09-08 12:32:58
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

選りすぐりのタコの女戦士タコゾネス。その中でも特に優秀な「デラタコゾネス」であったヨーコ。そんな彼女が、地上のナワバリバトルでトッププレイヤーになるのは、ごく自然。ごく当然のことだ。スポーツ感覚でバトルをするイカたちとは、訓練の内容も頻度も全く違うのだから。

2019-09-08 12:35:27
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

カフェのBGMが変わる。しっとりとしたジャズから、アゲアゲなポップスへ。聴き馴染みのあるメロディ。毎朝、ヨーコが口ずさむ、あの歌詞。 「シオカラ節」。 Newカラストンビ隊の少女たち……もとい、大人気ユニット・シオカラーズの大ヒット曲だ。 この歌が、ヨーコの人生を変えた。

2019-09-08 12:48:05
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

この店の店員たちもまた、地上へ脱走してきたタコなのだ。彼らにとっても、お気に入りの一曲。同胞たちが、皆それぞれに口ずさむ。 だが、オクトーだけは違った。シオカラ節が流れても、特になにをするわけでもなく……むしろ、どこか物憂げな表情になっている。 「……どうしたの?」

2019-09-08 12:51:12
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「俺は……」 重たそうに口を開く。 「俺は、あの場にいなかったんだ。まだ幼かったから……」 「えっ!今いくつ?」 「今年で15だ」 「……ええっ!!??」 大人びた風貌で騙されていた。彼、めちゃくちゃ年下だ!ちなみに、サキは17、自分は21。シグルイは分からないけど。

2019-09-08 13:13:52
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

逆算すれば、当時だと戦場に立つには若すぎる。まだ子供だ。 「両親が、あの歌を聴いたんだ。戦場から逃げ帰ってきたあとに、俺を連れて地上へ行こうとしたんだ。だが……」 「……」 なんとなく、 話の先が読めてしまう。

2019-09-08 13:16:59
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「駄目だった。追っ手に捕まった。俺を守るために、二人とも……」 「……そう」 「なんとかして地上に出てきたが、ここの言葉も暮らしかたもなにも知らなくて……絶望だった。こんなことなら、ずっと地下で暮らしていればよかったとさえ思ったよ」 当然だ。彼はただ、親についてきただけなのだから。

2019-09-08 13:21:38
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「このまま野垂れ死にするんだと覚悟して、最後に……最後に、綺麗な夕陽が見てみたいって思って、港の方へ行ったんだ。両親の夢でもあったしな」 「……でも、あなたは今もこうして、元気に生きてる。誰かが助けてくれたんでしょう?」 「ああ」 彼の表情が明るくなった。 「ボスだ」

2019-09-08 13:55:44
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「やっぱり、そんな気がしてたわ。言葉を教えたのも彼でしょう?」 「もちろん」 「だってその喋り方、なんとなく彼に似ているんだもの」 「……そ、そうか!?」 顔が赤くなる。 「覚えるのが早くて羨ましいわ。私、まだあんなんだし……」 「ボスの教え方がうまい、と言ってくれ」 「そうするわ」

2019-09-08 13:59:21
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

飲み頃にまで冷めたコーヒーに砂糖を入れながら、 「私もね、サキが助けてくれたの。泊めてくれて、言葉を教えてくれて、新しい家を探してくれて……『田舎から夜逃げしてきた』って言っただけで、いろいろやってくれたわ。どう見ても怪しいのにね、私……」

2019-09-08 14:05:01
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「サキさんには、本当のことは話してないそうだが」 「うん、一応ね。受け入れてくれるかどうか分からないし……」 ため息をつく。自分自身に対しての呆れだ。 「私って臆病よね。嫌われたくないからって、あの子に嘘を吐き続けてるの。なんだか……嫌になるわ」

2019-09-08 14:08:37
感情がめちゃくちゃ @pascal_syan

「全てを打ち明ける必要は、ないと思う」 「そうかしら?友達なのに?」 「友達だからこそ、言えないことだってあるだろう。それと……俺も、テンタクルズのイイダさんも、そこにいる店員も、わざわざオクタリアンを名乗らないだけであって、普通に生活しているじゃないか」

2019-09-08 14:16:13
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