- pascal_syan
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確かに、そうだ。彼らは堂々としている。テンタクルズのイイダ(彼女も実はタコ)に至っては、堂々とテレビに出ているじゃないか。 「『何も言わない』ことは、嘘ではない。引け目を感じなくてもいいと思う。イカ達は皆、タコのことなんて忘れているんだし……」
2019-09-08 14:18:36「……深く考えすぎなのかもね」 自分よりずっと年下の少年に、気づかせてもらうなんて。先輩失格だ。でも、胸のつかえが取れたような気がする。 「ありがとう。お悩み相談室みたいになっちゃったね。ちなみにシグルイさんは……」 「全部知っている」 「私のことも?」 「もちろん」
2019-09-08 14:21:19コーヒーを一口飲み干す。 「全部知った上で、俺を右腕に選んでくれたんだ。本当に……感謝しかないよ」 「……いい人ね」 「当たり前だ。あんな人、この世に二人といない。何もかも無くしてしまった俺には、あの人しかいないんだ。だから……」 「シェルターを使うのも、そういうことなのかしら?」
2019-09-08 14:26:11「……あの人は、よく無茶をする。必ず生きて戻ってくるとはいえ、危険な目には遭わせたくないんだ」 「私も、サキに対しては同じ気持ち。あなたみたいに、盾として立ち回る技量はないんだけどね」 「やられる前にやる?」 「そう、それ。それしかできないから、私は……」 困ったような笑顔だ。
2019-09-08 14:38:27「守りかたにも色々な方法がある。お互い、自分なりのやり方でいいんじゃないか」 「そうね。矛と盾って感じで、なんだかかっこいいかも」 「矛と盾、か……」 そのとき、二人の携帯が同時に鳴った。 「うん?」 「臨時工事が終了したらしい」 「あら!意外と早いね」 「……出るか」 「そうね」
2019-09-08 14:47:30矛盾、という言葉がある。 遥か大昔、まだニンゲンが絶滅していなかった頃に生まれた、古い古い言葉。 どんなに硬いものでも貫く矛と、どんなに鋭いものでも防ぐ盾。では、その矛で盾を突いたら、どうなるのだろうか? その問いに答えられる者は、何千年も経った今でもいない。
2019-09-08 14:52:22ただ、ひとつ言えることは。 その矛と盾を、両方とも持った戦士は、限りなく無敵になるだろう。 今は、守るべき主君も友も、ここにはいない。ならば、今は…… 「背中、マカセル、イイ?」 「ああ。俺の背中も、預けるぞ」 試合開始の合図。無双の矛と、堅牢の盾が、走り出した。
2019-09-08 14:59:23「ね、ねーちゃん、俺たちとことんついてねーよなあ……」 「はあ?何がさ」 「だってさあ……敵が……」 どこかで見たことのある姉弟。彼らは、確かにツイていない。最強の矛と盾を、相手にしなければならないからだ。 「うだうだ言うんじゃないよ、いいかい?サイキョー杯に出るってのはねえ……」
2019-09-08 16:20:06向こう側にいる敵を指して。 「ああいうのがゴロゴロいやがるんだ!弱音吐いてる暇ァないよ。あたい達は、最強になるんだ。怯んだ時点で負けなんだよ!」 「怯むっつーかさあ……やる気なくなるだろ、あんなすげーやつ。またボコされて終わりだろ?」 「ボコされて覚えることだってあるだろ!」
2019-09-08 16:30:22バシッと尻を叩く音。 「アネゴ~、そんなに叩きすぎたら、弟さんの尻が割れちゃうんじゃない?」 カーボンローラー持ちの少年が横槍。 「ケツは元々割れてるだろが!」 「四つになるって意味だよ」 「い、嫌だァ!尻が四つなんて!」 「多いに越したこたぁないよ」 「ねーちゃん!?」
2019-09-08 16:36:47「あのさぁ」 四人目はシャープマーカーの少女……ではなく、全く別の人。マスクをつけた、スプラチャージャー持ちの女性だ。 「もう試合始まるんすけど」 「よし、じゃあ行くよっ!あんたのウデマエ、期待してるからな!? 」 「へーへー、クビにならないようにがんばりまっす」
2019-09-08 16:41:46今回のフィールドは、アンチョビットゲームズ。自陣と敵陣が高台になっており、中央は広く平坦な低地となっている。中央エリアには2箇所、プロペラ装置が設置されている。これにインクをぶつけて回転させることにより、プロペラ周囲の足場が上昇する。これを使って、敵陣に乗り込むことができるのだ。
2019-09-08 16:48:52しかしそれは、相手も同じこと。自陣に侵入されないよう、うまく防衛することが大事だ。もし乗り込まれても、そのことが分かりやすい構造。瞬時に迎撃する体勢を整えられるかどうかもカギとなる。 ヨーコの持ち武器はスプラマニューバー・コラボ。オクトーはパラシェルターだ。
2019-09-08 16:53:18スプラマニューバー・コラボ。マニューバー種の基礎的なブキ、スプラマニューバーのマイナーチェンジモデルだ。サブはカーリングボム、スペシャルはジェットパック。マニューバー特有の高い機動力に、切り込み能力の高いサブスペシャルの組み合わせ。ガンガン攻めたい人にはうってつけだ。
2019-09-08 16:58:31パラシェルター。こちらもシェルター系の基礎的なブキだ。まとめて当てれば火力が出る散弾タイプのショットと、攻撃を防ぐカサ。スパイガジェットのように射撃をしながら傘を展開できない。射撃後にトリガーを引きっぱなしにしなければならないのだ。
2019-09-08 17:00:39だがその防御力は、スパイガジェットよりも遥かに上だ。スパイガジェットはあくまで「護身用」といったものだが、こちらは明確な「盾」として運用できる。サブはスプリンクラー、スペシャルはアメフラシ。ある程度の塗り性能も備えている。
2019-09-08 17:02:32二人が中央へ着く頃、中央エリアのほとんどが既に敵インクの色に染まってしまっていた。向こう側にはボールド7と赤ザップ、塗りに強いブキが二人もいる。当然と言えば当然だろう。 ありがたいことに、他のチームメイト二人が、高台から自インクをばらまいてくれた。
2019-09-08 17:05:07「お願いします!」 要請を受けて、ヨーコは頷き、高台から飛び降りた。オクトーもそれに続く。 飛び降りながら、ヨーコはカーリングボムを敵陣に投げ入れた。 「「うおおおおお!?」」 敵が二人、カーリングを避けるために顔を出した。真正面から攻めようとしたのだろうか。
2019-09-08 17:07:34敵二人の間を裂くように、カーリングがまっすぐ走る。敵が左右に分かれた。そのまま挟み撃ちにするつもりだろう。 オクトーはさりげなく、自分達の足元にスプリンクラーを設置した。名前の通り、インクを噴射するサブウェポンだ。足場を整えたり、相手を妨害するときに主に使用する。
2019-09-08 17:10:20左からボールド7、右から赤ザップ。まず、ボールド7がスプラッシュボムを投げつけてきた! が。 微妙に飛距離が足りず。 爆風の端が、オクトーの傘によって防がれた。 だが、それでいい。それが狙いだ! 「シローッ!」 呼び掛けに答えたのは、赤ザップ。弟だ。
2019-09-08 17:14:23シェルター系の弱点は明確、傘で守ることができない「背後」だ。姉が気を引き、弟が後ろを突く。とてもいい作戦……なのだが。 二発目のカーリング。壁で二回跳ね返り、綺麗な三角形を描いた。その中に、弟は閉じ込められてしまった。 こんなのジャンプで飛び越してしま 「えばっっっ……!?!?」
2019-09-08 17:18:21「背中、ガラアキデース」 背後から、独特のカタコト。ヨーコはカーリングの軌跡を泳ぎ、裏の裏をかいてみせた。 「くっそぉぉぉぉ!」 姉の方も、あえなく撃沈。銃口を押しつけて無理やり傘を破壊しようと試みたらしいが、射程差で撃ち合い負けとなってしまった。
2019-09-08 17:21:04開始早々、二人も撃破。これに勢いづいて、高台にいた他のチームメイトも、中央エリアへと飛び降りてきた。だが…… 「きゃーっ!?」 1人やられた!一瞬の出来事だった。原因に察しはついている。 向こうの高台からこちらを狙う、一筋のレーザーサイト。スプラチャージャーだ!
2019-09-08 17:23:49チャージャーの基礎的な武器、スプラチャージャー。スペシャルは壁などの障害物を貫通して放たれる超長射程のインクのレーザー・ハイパープレッサーだ。遠距離からのサポートに適している。万が一敵に近づかれても対応できるよう、サブウェポンはスプラッシュボムに設定されている。
2019-09-08 17:26:51チャージャー。遠くから敵を狙い撃つ、厄介な敵。しかも、相当腕前が良いと見た。狙いをつけるのが速い! 照準がヨーコの足元を狙う。すかさず回避。放たれた高圧縮のインクは、中央エリアへ直線を描いて落ちていった。 だが、諦めはしない。二発、三発、ヨーコが逃げる方向へ放たれる。
2019-09-08 17:31:19