MMTとミンスキー、MMTとポストケインジアン、あるいはMMTとELR(JGP)の不可分性について

ミンスキーとラーナーの問題意識と乖離についても
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ラーナーとミンスキーを比較する Part 1 blog.goo.ne.jp/wankonyankoric… @wankonyankorick さんが、レイのミンスキー論文を翻訳してくれている記事なのだが、久し振りにこの手の論説で冷や汗をかいた。 これを読むと、確かにミンスキーなきMMTは原理的にあり得ない。

2019-09-09 18:43:59
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

機能的財政論 ミンスキーとラーナーの変化の比較検討 Part 2 blog.goo.ne.jp/wankonyankoric… これも物凄く重要! スタグフレーションの体験による、盟友であったはずのラーナーとミンスキーの乖離、というより、ラーナーの迷走とミンスキーの慧眼を見て取ることができる。

2019-09-09 18:45:52
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

私なりにこれを大雑把にまとめると、ミンスキーはポストケインジアン的な経済の(しかもミクロ経済学的な)理解に基づいて、素朴な機能的財政論による単純なケインジアン的財政ファインチューニングを棄却しており、その必然的帰結としてJGPが"導出"される。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-09 18:53:00
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

私なりの理解では、極めて重要なのはマークアップ原則と内生的貨幣供給論のコンビネーション。 特にインフレが亢進する局面では、一つはボトルネックとなる部門への分配や独占的大企業による利潤のマークアップ、もう一つは、労働組合などの労働者連帯を通じた"就業者"賃金のマークアップが強まる。

2019-09-09 21:57:51
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

こうしたPK型ミクロ経済学的マークアップ構造がある場合、単純にアグリゲートでの名目所得(名目支出)にばかりフォーカスするような「粗雑」な「ケインズ主義的財政ファインチューニング」は、往年のスタグフレーションのような、失業とインフレのパラレルな亢進を来たす。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-09 22:04:28
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

それどころか、名目所得・名目支出への素朴な集約は、独占的(大)企業や資本家の利潤をさらに拡張させ、格差拡大の加速や、金融資産バブルの促進に繋がりかねない。 ”初期”ケインズ主義は、雇用改善なきインフレ・格差拡大・資産バブル助長の三重苦の温床になり得るのだ。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-09 22:23:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

こうしたポストケインジアン的(PK型ミクロ経済学的)機序への考慮を通じ、機能的財政論をブラッシュアップして、Employer of Last Resort’等)を”理論的に要請”したのがミンスキーであり、彼の経済理解を色濃く光栄するMMTが彼およびJGPから真に自由であることはありえない。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-09 22:28:24
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

もし経済に対するポストケインジアン的な”理論的”理解なく、単に会計的事実onlyに拘泥し、経済政策考察における”経済理論”の重要性(というより不可欠性)を軽視するなら、成る程その場合は、Monetary ”Realism”に”堕”さざるを得ないということになろう。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-09 22:30:42
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

私なりの解釈だが、JGPの"実装"は確かに政策主張であるとしても、政府が自身の雇用政策(公共事業の労務単価設定も含む)によってどれだけの雇用量と賃金を実現するかを通じ、どのように経済調節 or 経済不安定化が生じるかは、規範的というよりは、理論的な問題である。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 07:22:57
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そこでは、政府がEmployer of Last Resortとして「振る舞うか」、「振る舞わないか」というのは、なるほど貨幣・金融理論的な、ひいてはそれを基礎とするマクロ経済学的な意味で極めて重要になる。 そこには、労働者”層”の価値を安定化させるか、させないかという選択がある。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 07:28:03
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

類似的に扱って問題がないかどうかは微妙だが、この意味でELR(あるいはJGP)というのはアコモデーションに似ていて、ELR(JGP)をしないということは、国民全体の労働者”層”の「労働価値(労働価格)」を”調節しない"ということに畢竟ならざるを得ない。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 07:36:15
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

明示的にJGPという政策を取るかどうかというよりは、政府がどのような雇用政策(公共事業の労務単価設定を含む)を取るかを通じて、何がしか労働者”層”の労働価値(労働価格)へのアプローチは必然的に発生するわけで、MMTがその”理論的”構造自体を回避することは出来ない筈。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 07:40:27
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

一応留保しておくと、ここまで労働者"層"と表現しているのは、失業者や労働意欲の喪失者を含めようという意図があるから。 労働組合などの労働者連帯は、既存労働者(しかもその一部)の分配を確保することは出来ても、失業者etcを含めた全体的な労働分配の確保には向かえないという含みもある。

2019-09-10 08:07:33
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

話がちょっと抽象的になっているので、具体的な話に落とし込むと、例えば不況に対して財政拡大、インフレに対して緊縮財政、という単純な初期ケインズ主義的な財政的ファインチューニングに対しては、ミンスキーもラーナーも極めて批判的な立場を取っている。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:07:24
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

それは何故か。 ミンスキー的にに”解剖”すると、政府支出の単純な拡大は、特定のセクターの利潤ないし分配の増加を引き起こし、それによるマークアップを通じて格差拡大とインフレを同時発生させ、失業は解消しないどころか物価賃金スパイラルを通じてむしろ悪化し得る。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:11:22
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

それではインフレに対して機械的に緊縮財政を取ろうにも、そのしわ寄せは「交渉上の地歩」が相対的に弱い集団(失業者や低所得者)に向かってしまう。累進課税ですら、独占的(大)企業が価格支配力を以ってマークアップするようなら、消費者や労働者に転嫁されてしまう。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:13:33
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

いくらインフレとはいえスタグフレーションに対して強固に緊縮財政を進めるのは政治的に考えても現実的ではないし、経済的に望ましいわけでもない。 どこかで反転して再び財政拡大に向かうことになるが、先述したようにそれはインフレ亢進・失業継続・格差拡大に帰結し得る。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:16:51
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

史実みたく、財政介入の半ば放棄を伴うドラスティックな不況が経済全体のマークアップを弱らせて(特に既存労働者の賃金交渉力を弱らせて)、スタグフレーションのスパイラルを途絶することも可能ではあるが、それはむしろ現在にわたる長期停滞の端緒となったというのが現実。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:20:07
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

とはいえ、ストップ・ゴー政策、あるいはストップ・ゴー・ストップ政策のような、裁量的財政的ファインチューニングが、いかにスタグフレーションを増悪させてきたかについて、ミンスキーもラーナーも極めて敏感だった。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:23:06
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ラーナーに至っては、賃金上昇への規制、反循環的財政政策の放棄、均衡財政の徹底、中央銀行への依存を大真面目に主張していたわけである。 (これはラーナーがどうも内生的貨幣供給をあまり理解していなかったらしいところに起因するように私には思われるけれども) twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 13:24:38
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ラーナーと違ってミンスキーは、ポスト・ケインジアン型の(ミクロ経済学的)分析に基づき、総量での単純な財政調節ではなく、ELR(JGP)のような形で、つまり交渉力のある主体(例:独占的企業、労働組合)のマークアップを回避する財政プログラムを志向するのである。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 17:03:29
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

なぜ政府総支出の単純な増減ではなく、ELR(JGP)のような的を絞った財政(貨幣)プログラムが必要になるかというと、繰り返した通り、交渉力のある主体によるマークアップを通じて、不平等なインフレーションや、利潤拡大による投資ブーム→金融不安定化を避けるためである。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 17:13:26
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

twitter.com/motidukinoyoru… から始まる一連のツイートでは、ポストケインジアン的なマークアップ原理から、素朴な総量的財政調整やフィリップスカーブを否定するという議論を展開していたのだが、当然のことながらこれは、いわゆるトリクルダウンを理論的に否定するものでもある。

2019-09-10 18:41:55
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

というのは、支出の総量的な増加、それに伴う名目所得の総量的上昇は、バーゲニングポジション(交渉上の地歩)のより優位なセクター(独占的大企業など)の分配・利潤の増幅によって吸収され、そのマークアップ分のインフレをそれ以外の部門が背負うことになる。 twitter.com/motidukinoyoru…

2019-09-10 18:44:16
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

twitter.com/motidukinoyoru… についてもう一点、ELR(JGP)的構造を欠く(あるいは乏しい)経済においては、下層を含む庶民層は、顕在的にせよ潜在的にせよ、決済の不安定性に晒されることになる。 経済全体の決済能力(支払能力)は揺動し、畢竟経済はブームと不況を行ったり来たりする。

2019-09-10 18:49:54