ぱすイカ二次創作⑫

ぱすかる❄ @pascal_syan

これは明らかに、泣いた後の顔だ。 「な、なんかあったのか……？まさか、変な客に絡まれたか！？」 「いやいや……逆、逆！めっちゃいい人だったよ、オクトーさん！」 「は？なんて？」 シローは事のあらましを説明した。シグルイファンであることと、シグルイからもらった言葉は、うまいこと伏せた。

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「そんなにいっぱい買ってもらったのか、いやぁ……いい人だな！そりゃ泣くわ！」 ほんとは違うところで泣いたんですけどね。 「ねーちゃん」 シローはアカネの目を真っ直ぐと見つめた。 「俺、強くなりたい。もっともっと強くなって……絶対、決勝に行く！」

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いつも弱気だった弟は、どこへ行ってしまったのだろう？その顔つきは、まさしく立派な「漢」だった。急激な成長に驚くと同時に、嬉しさを覚えた。 「……ようやくその気になったか！おう、分かった。強くなれ！あたいたちが、テッペン取るためにな！」

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サイキョー杯まであと３日。各チームは最終調整に入っていた。 開催が近いとあって、マッチングのシステムが臨時変更された。チーム同士で味方になることができる仕様だ。 ナワバリバトルのロビーが、これまでにないくらいの大混雑。その中に、チーム・カマトットの姿があった。

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決意を胸に抱き、挑む敵は…… 「フシチョー・ウィングス！？」 アカネは思わず大きな声をあげた。(普段から声大きいけど……) サイキョー杯優勝候補のうちのひとつ。強豪チームだ！ 「運が良いんだか悪いんだか……」 エースケがぼやく。確かにカマトット、強豪とよく試合してるなあ。

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フシチョー・ウィングス。不死鳥の翼の名を冠したこのチームを一言で表すなら、「しぶとい」が最適かもしれない。 全員ギアパワーに「カムバック」と「復活時間短縮」をこれでもかと積んでいるのが特徴だ。

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カムバックは、やられてしまったあとの20秒間、インク効率と回復力が飛躍的に向上するギアパワー。アタマのギアにしかつかないものだ。3分という時間のなかで、20秒というのはかなり大きい。やられることが多い前衛タイプにぴったりのギアパワーだ。

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復活時間短縮は、「誰もキルできずにやられてしまった」時に発動する。リスポーン地点に戻るまでの時間を減らしてくれるので、すぐに復活できるのだ。キルしてしまった場合は効果が適用されないので、そこだけ注意。

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カムバックと復活時間短縮の相性は非常にいい。初心者はもちろん、上級者にも愛される組み合わせだ。 たとえ撃ち合いで負けてしまっても、すぐに蘇り、強くなって戻ってくる。その姿は、まるで「不死鳥」。倒しても倒しても諦めずに戦う姿勢は、まるでヒーローのようだ。人気も高い。

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「強敵だ！でも、怯むんじゃないよ！むしろ運がいいって思うんだ。こんな機会、滅多にあるもんじゃないからね……！」 円陣を組みながら、アカネが気合いを入れる。 もう、怯むものか。迷うものか。いつも姉に尻を叩かれていた青二才は、勇気と夢を手に入れた。向かうところに、敵はない。

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フィールドは、ガンガゼ野外音楽堂。お揃いの赤いサングラスを頭に乗せて、チーム・カマトットは戦いのステージに立った。 対するは、強豪フェニックス・ウィングス。リーダーは、見るからにサバサバしていそうな、女性だ。

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「カマトットの皆様！」 リーダーの名は、マリコ。 「今日はお付き合いいただき、感謝いたしますわ。この間のフェスの試合、わたくしも拝見させていただきました。」 お嬢様口調だけど、お嬢様じゃなくて、普通の平民。むしろ貧乏で苦労人であることで有名だ。

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「素晴らしい試合でしたわ！あの王者シグルイにも怯まず、見事な戦いぶり。あなたたちのような勇敢な方々と試合できることを、心待ちにしておりました」 マリコが片手を上げる。 彼女のチームメイトが、一斉にブキを構えた。 「手加減はいたしません。本気でぶつかりあいましょう！」

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「おうよ！てめえの期待に応えてやるぜ！」 アカネの威勢のいい叫びに呼応するように、シローたちもブキを構えた。 試合開始の合図。両者ともに、一斉に飛び出した。 「いっくぜえええええ！」 アカネが一番先に中央へ辿り着いた。幸先のいいスタート、 と、思いきや。

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「ぐあーっ！？」 「ねーちゃんがやられた！」 迎え撃ったのは、リーダー・マリコのスクイックリンγの一撃だった。 チャージャー種で、射程を犠牲にチャージ時間の短さを得た、上級者向けのブキだ。

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射程が短い分、他のチャージャー種のように、安全なところから狙い撃つスタイルをとりづらい。積極的に前線に出なければならないし、狙いを素早くつける技術が必要だ。 「さあ、しもべたち！お行きなさい！」 マリコが片手で合図を送ると、チームメイトたちが中央へ躍り出る。

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「あいあいさー！」 まず襲いかかってきたのは、ネイリスという少年だ。変わった仕様を持つシューター、ボトルガイザーの使い手。 火力の高い単発モードと、トリガーを引きっぱなしで発動する塗りに特化した連射モードを切り替えて使う、癖の強いブキだ。

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単発モードでシローとエースケを威嚇しながら、もう１人の仲間を誘導する。 「よしよし、任せろ！」 表れたのは、大きなアフロが目印の、ファンキーな男性。名を、トーエイ。ヴァリュアブルローラーの使い手だ。

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攻撃速度が高い横振りモードと、射程の長い縦振りモードを使い分ける、こちらも若干癖のあるブキ。 「いっくぞぉぉぉぉっ……」 あれは縦振りの構えだ！ 「いかせるかよ！」 エースケが素早く背後を取った。カーボンローラーの一撃が、直撃！

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「ひょえーっ！」 呆気なく撃破。強豪なのに？そう思うだろう。だが、彼らの真価はここからなのだ。 「ひ、ひええええっ……」 敵陣の奥の方から、か弱い声が聞こえる。とても小柄な少女が、ぷるぷると震えている。

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「はわわっ……みんなをいぢめないで……」 ぷるぷると震えながら、何かを持ち上げた。 「いぢめないでーーーーっ！！！」 その小柄な体格に似合わぬ、巨大なボディ。腹の底に響くようなエンジンの重低音… 「気をつけろ！ハイドラだーっ！」 シローの叫びに気づき、エースケは急いで撤退する。

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ハイドラント。愛称はハイドラ。チャージしてから放つガトリング砲・スピナー種の重量級ブキだ。フルチャージまでが非常に長いが、チャージ後の射撃の破壊力は、全ブキの中でもトップクラス。癖があるが、ロマンもあるブキ。 ……なんか敵チーム、癖が強いブキばっかりだ。

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ハイドラは、射程も連射速度もピカイチだ。それに正確なエイム力が加われば、恐ろしいことになる。 「ひぃぃぃぃーん！！！」 可愛らしい泣き声とは裏腹に、繰り出す攻撃は凄まじい。 「ご覧なさい！これがギャップ萌えですわ！」 「萌えるかボケ！！！！」 アカネがツッコミながら戻ってきた。

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「ハイドラは、厄介だなぁ……」 キサラギは高台から見下ろしながら、呟いた。あの長射程は、遠くにいるチャージャーにも十分届く。自分のサポートがなければ、味方は進軍しづらいだろう。早めになんとかしないと。 キサラギは狙いを敵前衛に向けた。 「当たるかよ！」 咄嗟に照準を避けるネイリス。

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「甘いなぁ」 避けるタイミングも方向も予想通り。瞬時に狙いをつけなおして、ヒット！ 「ぎゃっ……」 「カステラよりも甘いよ」 次はマリコだ。あれを崩せば、進軍しやすくなる。他の味方にハイドラを倒してもらおうという算段だ。 が。 「よくも仲間をーっ！」 「！？」 背後にはトーエイが！