ぱすイカ二次創作⑮

ぱすかる❄ @pascal_syan

マリコはため息をついた。 「あまりお時間がありませんし、正直にぶっちゃけさせていただきますわ」 マリコは、サングラスを外して、 「……あなた方とは、どうにも仲良くなれる気がいたしませんの！」 「奇遇ね。私も同じ事を思っていたわ」 「あらあら、それは嬉しいですわね！」

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そう。マリコとアヤメは不仲。ファンの間ではとても有名な話だ。 「たくさんの富を持っておきながら、困っている人にはビタ一文も寄越さないとか？その上私腹を肥やすときまして、わたくし、大層気に入りませんッ！」 「なにかと思えば……」 呆れたような声色。

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「自分のことも満足にできず、ただいたずらに富をばら蒔く。……あなたこそ愚かよ。そんなものは、ただの偽善でしかないわ」 「偽善で結構ッ！あなた方のような落ちぶれた存在になるくらいなら、偽善と謗られたほうが100億倍もよくてございましてよ！」 「そーだそーだぁ！」 チームメイトが囃す。

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「それに……」 マリコはサングラスをかける。 「……『彼ら』のこともあります。わたくしたちは、ここで負けるわけにはいかないのです。あなたによって散っていった同志たちのためにも……今ここで！華麗に！ご敗退あそばせッ！チーム・サキモリ！」 アヤメは、何の話か分からない、といった顔だ。

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「そのすっとぼけたお顔に、インクをぶちまけてさしあげますわッ！行きますわよ、しもべたち！全力を振るうのです！」 「うおおおおおーっ！やるぜ！」 「ボコボコにしてやらあ！」 「みんないぢめる子……だいきらい！」 「……だ、そうですよ？なぁんでこんなに嫌われちゃうんですかねえ？」

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奮起する四人を見て、クライスは苦笑する。 「知らないわ。騒々しいから、早いところ叩き潰してしまいましょう」 「了解です」 ブキを構える。 「ま、ここが運の尽きだな。……お嬢様のためだ、悪く思うなよ？」

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「ぎょえーっ！」 「もう、勘弁してくだしゃいい……！」 逃げ出す敵を追わず、ため息をつくシグルイ。 「……追う価値もないな」 彼が最も嫌うものは、敵前逃亡だ。負けるとわかっていても立ち向かう勇気と闘志を、この世で最も尊いものだと思っているからだ。

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相手が四人ともこの調子では、流石の彼も呆れるしかない。 「こ、こらーっ！ちゃんと戦いなよーっ！」 「そーなのね！」 リスポーン地点に引きこもる敵に向かって、サキたちも怒りをぶつけていた。 だが……無理もないだろう。初戦から強豪中の強豪と当たってしまったのだ。絶望しかないだろう。

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「つまらん試合だったな」 結果は、普通の圧勝。だが、いまいち楽しくなかった。サキたちも同じ不満を抱いていた。 「今日はもう、試合ないの？」 「ええ。次の試合は明日以降になるようです…」 オクトーが申し訳なさそうに告げる。 消化不良。不完全燃焼。まさに、その言葉しかない。

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「どうにも気分が晴れないな……」 「大会とは関係ない、普通の試合ってできるんだっけ？」 「いえ……大会期間中は、通常マッチングは閉鎖されています」 「一万も、チーム、いるのね。会場、きっとたくさん使うヨ」 「そっかぁ、そうだよなあ～……」

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結局その日はモヤモヤしたまま、解散となった。ユニフォームを脱いで私服へ。 サキは着替えながら、端末でニュースなどを流し見た。だいたいがサイキョー杯に関するものだ。 その中にちらりと見えた、クマサン商会のロゴ…… 「ああああ！！」 「さ、サキ……？」 「バイトしようよ！」 「え……」

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一時間後。 一行は漁船に乗っていた。 「この手があったか」 「ね！ね！いい案ですよね！？」 船頭には、目を輝かせるイカたちが。 「……ま、まさかこうなるなんて」 「皆でバイト……ナンテ……」 船室には、地獄を思い出して憂鬱になるタコたちがいた。 夕焼けの海を、船が走る。

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「今日の現場はポラリスだよ！」 船室では、バイトのベテランによる講習会が開かれていた。 「初心者向けで有名なので、不安にならなくても大丈夫！」 主に、二人のタコに向けたものである。 朽ちた箱舟 ポラリス。サーモンランの現場のひとつ。

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中央の高台を、螺旋のような坂で囲った特殊な地形だ。頂上にイクラコンテナがあり、シャケは一番下から頂上へ、登山するようにやって来る。 「サーモンランにおいて一番大事なことはなんでしょうか？はい、ヨーコ！」 「エッ！？」 突然振られた！

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「エ、エーット……イクラ、ちゃんと、納品する。サキ、前ソレで、愚痴ってたのね」 「はいそれ。納品大事。オオモノを倒したらちゃんと納品しましょう。しかーしっ！！」 ばん！と壁を叩く。ポラリスを真上から見た図が貼られた。 「一番下から頂上まで、めちゃくちゃ遠いでーーす！！」

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ぐるぐると回るように登山していれば、恐ろしく時間がかかってしまう。そこで、 「帰るときはライドレールを使いたい！そう思うよね！」 頂上をぐるりと囲むように、鉄線のようなものが張り巡らされている。自インクが常に上方に向かって流れており、それに乗って素早く移動することができるのだ。

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「でも、これも、めっちゃ遅いッ！ぶっちゃけ壁登ってきたほうが早かったりする！」 「そ、そーなの？」 「そーなのぉ。」 なので、と、サキは前置きして、 「そもそも下に降りちゃいけません！下でオオモノを倒したら、イクラ運ぶのがめんどくさいですッ！！厳守！！」 「「は、はい……」」

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「アルバイターの基本、その1！オオモノシャケは、なるべくイクラコンテナの近くまで寄せてから倒しましょう！運搬が楽になるし、孤立もしにくくなるわけね」 ベストポジションは、頂上から一段下の辺りだと、サキは語る。 寄せすぎず、遠すぎず。適切な位置でオオモノを仕留めるのがコツだ。

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「ただし！タワーは見かけたらすぐ倒しにいきましょう！その時は、一番下まで降りて大丈夫。金イクラはほっといて、安全第一で上まで戻ってきてね～」 オクトーは真面目に聞きながら、胸のうちでこう思っていた。 この人、バイトになるとボス並に輝くなあ、と……

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「高低差をよく活かせる所だから、短射程でもバクダンとか倒しやすいのがいいところだね。さて、今日の編成だけど……」 全員でブキ置き場を見た。 短射程で高火力だが、連射間隔が遅めなノヴァブラスター。 スクリュー弾だから癖が強い、でも火力はあんまり出せないスクリュースロッシャー。

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スピナー種ではそこそこ使いやすい部類、ノーチラス47。 どこぞのチームのちびっこ少女を思い出すヘビィボディ、ハイドラント。 どれも、一癖も二癖もあるラインナップだ。 「…………」 「サキ、コレ、どんな感じ？」 「ん゛んんんんんんんッッッッ！！！」 唇を噛みきってしまいそうだ……！

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「火力はあるが、どれも扱いが難しいな」 言語にならない唸り声をあげるサキに代わり、シグルイが解説する。 「正直に言うと地獄だが……」 シグルイは片手で、ハイドラントの重量巨大ボディを軽々と持ち上げた。 「俺がいるんだ。どうとでもなるだろう？」 「「「そうですね！！！！」」」

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そして、一時間後。 「いや～～～っ！！」 バイトリーダーは、上機嫌であった。 「もう、大漁ですよ！ほんと！皆ほんとに、めっちゃ優秀で！！」 「チーム、だからな。連携がよかった」 「ですよねえ！」 きゃっきゃと騒ぐイカたちと、……船室の隅でグロッキー状態のタコたち。

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「き……きつかっ……た……」 「★〇※■■▲★△△※■■……」 「よ、ヨーコさん、だめです！出てます、『方言』が……！」 オクトーはヨーコを揺さぶる。極度の疲労は、標準語化するフィルターを破壊してしまうのだ。 「ふむ。スタミナに難あり、といったところか。鍛えなければな」

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「△■▲●●※★■▲▲★★！」 「ヨーコさん……！」 「よ、ヨーコ落ち着いて！分かんない、分かんないよ！？」 「俺たちのほうが異常だ、と言いたいらしい。心外だな」 「そ、そうだよ、心外だよ…」 お前たちが言うな、とタコたちは叫んでやりたかった。