エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編9~
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「わ、ワテのアンググが…」 「む?」 「ワテのアンググがおらん!!!」 「うむ…戻ったな」 ダリューテは、乳房やくびれた腰や円かな尻からなる慣れ親しんだ肢体を眺め降ろして、得心する。 「あの闇の魔法もとうとう解けたか」 「いややー!」
2019-11-19 23:56:02オズロウは逞しい裸身を花畑に投げ出してじたばたする。 「ワテのアンググ返してやー!!」 「諦めろ」 「んなー!…せや!あの杖まだあるやろ!ワテと同じ血が流れとるから、ワテの体がのうならん限り枯れんて!もっぺん男になってやー!」 「いや、やめておく」 「んなー!」
2019-11-19 23:58:11「オズロウ。お前は…いささかしつこい。意地も悪い」 「アンググが好きなんや!好きやから意地悪してまうんや!仙女はんやのうてアンググ出してやー!」 「やかましい」 妃騎士はごん黒の乗り手の頭をぶん殴る。 「いだー!」
2019-11-20 00:00:32仙女はたちあがり、たわわな乳房の前で腕を組んで身をひねる。 目の見える、女を好む男なら固唾をのむだろうが、盲目の船長はふてくされているだけだ。 「…おとーはんにもぶたれたことないのに」 「私は、子等に手を上げたことはなかったが、お前は特別だ。もう十分に体も大きいしな」
2019-11-20 00:02:59「特別…ならええけど」 「っ…ふん…ひとの話を聞くときは、もうきちんとしろ」 「はい」 身を起こして神妙にする長躯の青年を見上げつつ、乙女は小言。 「男だろうと女だろうと…あんな風に相手を弄ぶな」 「アンググはああいうのが好きなんや!」 「アンググは私だ!私が叱っているのだぞ!」
2019-11-20 00:05:17「えー…仙女はんは…せやかて女のひとやん…アンググ…」 「甘ったれるな!」 「ひゃ、ひゃい!」 「もうよい。私は猫と狼の相手をする。お前はひとまず出てゆけ」 「承知や」
2019-11-20 00:07:43オズロウはあっさり退散する。 だって女のひとに用ないもんね。 「…短い夢やった…うう…アンググ…ワテの初恋…は別やけど…アンググのは初恋やない。ちゃうちゃう…どっちにしろ…短い夢やった…」
2019-11-20 00:09:27黒の渡り手はひとまずは指輪の魔力に打ち勝った。 恋の呼吸にも。 別に精神の闘いに勝利したとか、苦悩を乗り越えたとかではなく。 奴隷が男から女に変わったから。 勃たないんだよ。 まるっきりな。
2019-11-20 00:13:09天地がひっくり返っても。 東が西になり、北が南になり、眠りが目覚めに、飢餓が満腹に、あらゆるものが逆転し入れ替わり、周囲の一切が心に背き、騙し、裏切り、迷わせ、狂わせ、混沌の大波が沸き返るような、惑わしの起こらぬ限り。 絶対に女に勃たない。
2019-11-20 00:18:09盲目の船長オズロウ、運命に一歩また一歩と引き寄せられながらも、この男好きは未だ、 エルフの奴隷を捕えて子供を産ませようとする、黒の乗り手の呪いからは、ある意味では最も隔たった存在だった。
2019-11-20 00:22:42次の話
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