エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編10~
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「オズロウ。お前は…病の王とともに…海の底で死ぬはずだった…しかし…あの男…王の血も引かず、肌も白くはないあの…力を持たぬはずの男…アルトゥーセの生き方が…お前の運命を変えた…お前は…我が子に会った…」
2019-11-22 02:01:35「それでも…ああ…やはりお前は最期を海底で迎える…死の際には我が子に会えぬ…しかしてお前の子も…呪いからは逃れられない…愛からは」
2019-11-22 02:02:46さあもうこれで十分だ。 あまりにも多くの失望、幻滅、裏切り。 美しいはずの愛は望んだかたちをしていない。 変化できぬ妖精が間違っているとは限らない。 変化できる人間が正しいとは限らない。 光の英雄は闇の奴隷へ堕ち、 不義への怒りはかえって血の雨を降らす。
2019-11-22 02:05:35なぜならこれは救済の物語ではない。正義の物語でもない。 教訓もなければ示唆もない。 正しい選択肢さえ知っていれば誰もが幸せになる類の公平な遊戯でもない。 そう。
2019-11-22 02:07:07エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジーなのだ。 女奴隷は自由になれず、いっそう深く囚われてゆく。 おぞましく感じ、死ねば、消えればよいと思うものもいるだろう。 本人もそう考えているかもしれない。 だが変わりが連れてこられるだけだ。
2019-11-22 02:09:19ではどうする。 ここで終わりにしておくか。 それが最も妥当だろう。 六代目ダウバ。人間よりも怪獣に似た気質の男は。 竜の如く飢える大兵肥満の狂人は。
2019-11-22 02:11:03ダウバグザンドナバを名乗る。黒の料(はか)り手。巨釜(おおがま)担ぎ。決して痩せられぬ健啖家で料理の達人。 影の国に毒麦をもたらし、オズロウとダリューテのために菓子の宮殿を築く。
2019-11-22 02:12:03ダウバは北朝を滅ぼし、魔国を築く。 人を料理し、鬼に振る舞う。なぜなら、牛や豚は食べてよく、人やエルフは食べてはいけないという理屈がよく解らないから。 奴隷を嫌うのに、家畜を認める理屈も解らない。 草木を貪りながら獣肉を疎むのも。 すべてが自由なら病が人を喰らう自由ではないのか。
2019-11-22 02:15:54だがダウバは結局、人を食べない。 食べるのは半鬼の少女だけ。緑の指を持つと歌われた、畑拓きの達人、大百姓になろうとした娘だけ。
2019-11-22 02:17:08盲目の船長よりなおおぞましい大釜担ぎ。 ダウバは、 「オラ、食いてえ…仙女…薄焼菓子ちゃん…みてえ…うまそうだ」 性欲よりまず食欲の対象としてダリューテを見ることになる。
2019-11-22 02:21:09次の話
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