中国史や三国志のネット記事の出典の確認はどうしているの? ネット検索だけによる確認方法を紹介

漫画「キングダム」で有名な始皇帝に仕えた家臣に、馮毋択(ふうむたく)という人物がいます。この馮毋択の現在のwikipedia項目が当時の史料である史記や漢書にない記述が記載されています。この内容は誤りが多く含まれていますが、決して、単純な誤りではなく、ある意味『高度な』知識から来た誤りです。これを機会に中国史や三国志の文献をネット検索でお調べになりたい方の参考になると思うものをまとめました。
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

また、これは劉邦配下の功績表であり、秦のもとで当時は劉邦の同僚である項羽と戦っても功績となりません。しかも、この雍丘では項羽と劉邦はともに、秦軍と戦っており、ここで項羽と戦っても功績になるはずもありません。

2020-01-13 02:38:34
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

劉邦陣営が項羽との戦いで雍丘を攻め取った記述は『史記』曹相国世家において、赤字の劉邦配下の中尉であった曹参が雍丘を取った(攻め取った)としている部分で確認できます。ここで、劉邦の軍は雍丘において項羽の軍と戦っており、ここで馮無択は功績を立てたと考えるのが自然です。 pic.twitter.com/2m3IreSEhy

2020-01-13 02:38:36
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

また、秦の武信侯であり、将軍であった馮毋択が、雍丘ではなく、豊において劉邦の配下となるのは考えにくいです。これはほぼ同名の人物の混同と考えるべきでしょう。

2020-01-13 02:38:37
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

馮毋択と劉邦配下の馮無択が混同された上、雍丘において項羽と戦ったことについて間違った解釈がされ、混同を合理化するための筋書きを誰かに考えてしまい、それが一人歩きしたものでしょう。

2020-01-13 02:38:37
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

これについては、同じように考える方もおり、私独りだけの考えでないことも分かります。『同一人物説はきわめて考えにくい』とみなされています。 馮毋択と馮無択 - 枕流亭ブログ nagaichi.hatenablog.com/entry/20141111…

2020-01-13 02:38:38
リンク 枕流亭ブログ 馮毋択と馮無択 - 枕流亭ブログ 『史記』始皇本紀の始皇28年の条に、琅邪台石刻を引用して秦の重臣を列記した部分に「倫侯武信侯馮毋擇」があらわれる。また『漢書』馮奉世伝の冒頭近くに「及秦滅六國,而馮亭之後,馮毋擇、馮去疾、馮劫皆為秦將相焉」とある。これらの記述から、秦の重臣に馮毋択(擇)という人物がいたことが分かる。いっぽう『史記』恵景間侯者年表の博成国の段に「(高后)元年四月乙酉,敬侯馮無擇元年」とあり、その侯功として「以悼武王郎中,兵初起,從高祖起豐,攻雍丘,擊項籍,力戰,奉衞悼武王出滎陽,功侯」を挙げている。また『漢書』高惠高后文功 1 user
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また、サイヒさん(@saihinoti)のやる夫スレでも、同様の見解です。 埋め小ネタ馮無択 yaruoislife.jp/blog-entry-293…

2020-01-13 02:38:38
リンク yaruoislife.jp 埋め小ネタ 馮無択 992 名前: ◆TLDPZPDjO6[] 投稿日:2015/05/14(木) 22:16:50 ID:ZINjwSJo [4/12] ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━─── ┃ 楚漢戦争スレで出すかどうか迷った キャラの一人に、馮無択という人物がいる。 ┃ ───━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ /:.:.:.:.:....
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@saihinoti とすると、これは馮無択と馮毋択(漢書・高帝紀では馮無択)とが、ほぼ同名の別人と考えるのが自然となります。複数とはいえ、主観で消すのはどうかという意見があるかもしれませんが、同一人物と見なす根拠の方が存在しません。ピンク字はいずれ削除するべきです。 pic.twitter.com/08dSitIIU2

2020-01-13 02:47:32
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

それでは、馮毋択の子である馮敬に関する記述はどうでしょうか。紫字の『降伏』と、オレンジ字の部分は間違いないのでしょうか。馮毋択の子である馮敬が前漢に仕えていれば、こういった解釈も可能かもしれません。これも中央研究院のページで『馮敬』で検索します。

2020-01-13 02:47:33
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

いくつか史書が出てきますが、時代からして『史記』と『漢書』だけを探ります。後は同名の違う人物でしょう。そうすると、漢王朝に仕えた馮敬に関する記述が分かります。『漢書』刑法志と『漢書』景帝紀に見えます。 pic.twitter.com/Ip9tvKAtTh

2020-01-13 02:47:35
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

全て同一人物かは別にしてオレンジ線の事績のある馮敬という人物がいて、漢王朝に仕えていたことは分かります。次に、この漢王朝に仕えた馮敬が馮毋択あるいは馮無択の子であるかどうかの根拠を探ります。

2020-01-13 02:47:35
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

『漢書』賈誼伝にありました。これは『漢書』の注釈部分です。御史大夫である馮敬は馮無擇の子であるという記述に対する出典は確認できました。 pic.twitter.com/T2pTPc92Po

2020-01-13 02:47:37
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

なお、この漢書の注釈自体が同名の人物による混合である可能性は否定できませんが、これはwikipediaの項目であり、できるだけ出典によるものにして、主観は最小限にしなければなりません。ですから、出典がある以上は御士大夫となった馮敬の父が馮無択である前提で進めます。

2020-01-13 02:47:38
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

ただ、秦に仕えた馮毋択と前漢に仕えた馮無択は別人であり、馮毋択が前漢に仕えたことが確認できない以上、この馮敬の父も前漢に仕えた馮無択と考える方が自然でしょう。

2020-01-13 02:47:38
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

ただし、これは主観による否定ではなく、根拠不十分という理由によるものです。紫字の『降伏』と、オレンジ字の部分は削除するか、注意書きで、馮敬は秦に仕えた馮毋択の子である可能性と前漢に仕えた馮無択の子である可能性、両方を記載するのがいいでしょう。 pic.twitter.com/hGFF2boXqg

2020-01-13 02:47:40
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

両方の可能性を併記する場合、さきほどの『漢書』賈誼伝の注釈についても該当部分まで記載するのがいいでしょう。私は、この漢書の注釈自体が、秦の馮毋択と前漢の馮無択の混同によるものを疑っていますが、直接的に考えを書く時も、根拠を述べておけば、読者に考えさせられ、中立性は確保できます。

2020-01-13 02:47:41
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

最後は黒字ですが、先ほどの画像で今、黒字が囲った部分が根拠であることが分かります。同一人物であるという根拠がない理由により、黒字もまた、削除するべきです。 pic.twitter.com/YDMKGb91L3

2020-01-13 02:47:43
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

なお、削除を行った場合、ここのwikipediaのノートのタグを押して、ここのノートに削除した理由を書いておくと元々の執筆者や見る方へ伝えられるのでいいでしょう。 pic.twitter.com/Tr3tnkf160

2020-01-13 02:47:45
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

この記事を作成して、特に問題があるというご指摘がなければいずれ、wikipediaの馮毋択の項目は改変し、この場合、前漢に仕えた馮無択とは別人であると明記することにした上で、ノートにその改変の理由を記載します。

2020-01-13 02:47:45
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

もちろん、別に馮毋択と馮無択が同一人物であるという根拠が存在すれば、私の方も過ちを認め、その趣旨に沿ってwikipediaの馮毋択の項目を変更すべきところがあれば、変更します。

2020-01-13 02:47:46
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

この世には多くの資料が存在し、新たな出土文献が発掘される可能性があります。こういった知識は常に更新・変更の可能性をもっています。

2020-01-13 02:47:46
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

wikipediaの馮毋択の項目改変後は、改変の内容とノートの内容について、このまとめで改めて報告します。

2020-01-13 02:47:47
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

以上です。ここまでおつきあい下さった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。中国史に関する記事の出典を確認するための参考となれば、幸いです。

2020-01-13 02:47:47