埼玉県『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』の研究(2)':2つの『ガイド』の比較検討
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タイトルの通り、本記事で扱う資料は以下の2つである。
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2003年(平成15年)3月作成『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』
:ふじみ野市HPへのリンク ※pdf注意 -
2018年(平成30年)3月作成『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』
:埼玉県HPへのリンク
奥付の記載から2003年3月作成の『表現ガイド』(以下「2003年版」)が初版、2018年3月作成の『表現ガイド』(以下「2018年版」)が第3版としてカウントされていることが分かり、行政資料としての継続性を確認することができる。
こうして見ると、『埼玉県男女共同参画計画』によれば2003年3月に作成されているはずの資料が、奥付記載の初版発行年月は平成16年(2004年)8月となっており、約1年半の空白が若干気になるところではある。
『表現ガイド』作成当初に紙媒体で頒布することを想定していなかったのではないかと思われるが、あくまで憶測の域を出ず、この空白期間が生じた原因は現時点では不明である。比較検討の大勢に影響はないと判断しここでの深入りは避けるが、今後の調査課題としたい。
なお2003年版については、ふじみ野市による不意の削除に備えて、画像形式で内容を確認できるよう以下に転載する。検証の御供とされたい。
表紙の集合イラスト
- 女性の医師、育児中の男性を採用
- 男性高齢者のキャラクターに杖を持たせる
- 女の子のキャラクターの外見年齢を若干変更
小学校低学年 → 高学年程度?
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<変更理由についての私見>
2003年版では若干印象の被るキャラクターがいたので、細かい変更は外見の差別化が狙いかなあと。5人:5人の男女比は維持したまま多様性的なニュアンスを込めたようで、これ自体は妥当な判断と感じる。
男性高齢者に杖を持たせているのは、女性高齢者が車椅子なのと釣り合いをとるためなんだろうか。女性の体ばかりが老化しやすいかのような印象を与えかねないイラストはけしからん、みたいな。
また、子ども2人の外見年齢を分けることになり、さて男女どちらの年齢を高めにするかという点にも、男女共同参画の観点から見て“正しい”政治的配慮が働いたものと思われる。
「人数や回数・役割が男女いずれかに偏っていませんか?」(4頁)
◎挿絵の変更
《2018年版》男性キャラクターが1人ずつ減っている
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<変更理由についての私見>
「変更後」の挿絵から男性キャラクターを減らしたのは男女比を揃えるためだろう。表紙イラストと同様に、外見をより多様化させようとする意図も感じられる。
年配の男性キャラクターがいなくなり、代わりに年配の女性キャラクターが加わっているのは、年齢による序列で女性を上位に置くためかもしれないし、そうでないかもしれない。
ただ、男性キャラクターを「変更前」の挿絵からも減らしているのは、男女比の偏りというより、画面上の人数が多くて見にくくなっていたのを単純に解消したかったのが大きいのかなと。
「シンボルマークやマスコットが男女いずれかに偏っていませんか?」(5頁)
◎挿絵の変更
《2018年版》変更後の例で女性キャラクターが1人増えている
- 女性の警官、男性の保育士、年配女性の料理人、男の子 の4人は据え置き
- OL風の女性の外見を変更、ジャケットから制服(?)着用へ
- 作業服の女性、ウェイターの男性 を追加
- 年配男性の医師(介護士?整体師?) はリストラ
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<変更理由についての私見>
女性のキャラクターが1人増えたことで、男女比の均衡が崩れて女性の方が1人多くなった。女性の方が多い偏りはジェンダー的には無問題なんですかね。
作業員とウェイター。なぜこのチョイスなのかは分からないが、外見を差別化するのに好都合という判断なんでしょう多分。多様性、多様性。
OL風の女性の服の変更は、機械的に服の中身を男女入れ替えるだけじゃなく、場合によってはちゃんと女性に合った制服を表現しなさいという趣旨か。警察官の例を挙げているので、こちらでは別のパターンを入れてみたって感じ。
「女性も男性も家事に参加していることがわかるように表現しましょう」(8頁)
◎挿絵の変更