埼玉県『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』の研究(2):表現ガイドの内容検討

引き続き埼玉県の表現ガイドについての個人的研究。 好んで引用される「アイキャッチャー」に関する項目、2003年の旧版との内容比較についての報告を中心にまとめる予定。
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まとめ 埼玉県『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』の研究(1):表現ガイドの現在位置 Twitterで見かける機会の増えた埼玉県の表現ガイドについての個人的研究。 表現ガイドの中身を検討する前段階として、表現ガイドそのものの本来的な位置づけ、外部の議論での扱われ方を中心にまとめる。 2111 pv 13 1 user

前回記事に続いて、埼玉県男女共同参画課が公開したガイドラインを検討する。


『表現ガイド』各論 ~「アイキャッチャー」論の検討

『表現ガイド』を引き合いにした主張を見ていくと、引用される箇所が特定のページに偏っていることに気がつくだろう。
それは、「女性を飾り物・性的対象物として扱っていませんか?」と題した10ページ目の記載である。

この記事に関心を持って閲覧しに来た読者であれば、『○○プール』の挿絵などはどこかで目にした記憶があるのではないか。

実際、前回記事で取り上げたツイートの中でも、問題の10ページ目に言及が集中していることが分かる。

🍛MOGMOG🍺 @technopolis

NHKはともかく、公的広報にはこのガイド📖のような縛りがある、ということは抑えておくべき。 男女共同参画の視点から考える表現ガイド - 埼玉県 pref.saitama.lg.jp/a0309/hyougenn… pic.twitter.com/99rrP1Jra7

2018-10-04 17:56:07
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めいちゃん🍊荒井めい @farb_

左 炎上中の赤十字乳袋ポスター 右 埼玉県の表現ガイド pic.twitter.com/n9E1wni14J

2019-10-16 16:48:33
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白井のりくに(司法書士/酒々井町議会議員・立憲民主党) @shirai_norikuni

@night_wizard @VrTN00VBqngu0cU 結局、個人の権利侵害で思考が止まってしまうのですね。 今の時代は女性の尊厳が大きな問題となっていますことに気がついてください。 参考までに、埼玉県で出している、男女共同参画の視点から考える表現ガイドのページを紹介しておきます。 pref.saitama.lg.jp/a0309/hyougenn… pic.twitter.com/KZ4TB57G8k

2019-10-23 02:57:12
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羽鳥 だいすけ @HatoriDaisuke

宇崎ちゃん献血ポスターの問題で「表現の自由だ」とかわざとなのか本気で思ってるのか分からないことを言っている諸氏に埼玉県のパンフレット「男女共同参画の視点から考える表現ガイド」が非常に分かりやすく答えてくれています。 こういうことだぞ。 pic.twitter.com/mg9SLalkDH

2019-10-22 17:06:41
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 問題の10ページ目は画像ファイルの形式で『表現ガイド』本体から切り離されて広まっている。時には出典がうろ覚えの状態で「公的基準はこれだ」と雑な引用をされることもあるほど、人口に膾炙しつつあるようである。

『表現ガイド』の今の「用法」を考える上で、このページの検討を避けて通ることはできまい。こういうわけで、各論の第1弾として10ページ目の記載を取り上げ、詳しく検討したい。


便宜のため、記載内容を以下に転載する。


(5) 女性を飾り物・性的対象物として扱っていませんか?
伝えたい内容と関係がないのに女性を人目を引くために使用したり、女性の性的あるいは外見的な側面を強調して表現することは、女性の尊厳を傷つけ、性を商品化することにつながります。伝えたい内容にふさわしい表現をするようにしましょう。

  • チェックポイント
    • アイキャッチャー(広告に注目させるための視覚的要素)
    • 性的側面
    • 容姿の強調
  • 挿絵
    • 《変更前》水着姿の女性 → 《変更後》水着姿の男性と2人の子供
    • コメント『何を訴えたいのか一目でわかる表現にしましょう。』

 検討に入る前に、本文で「チェックポイント」として挙げられている「アイキャッチャー」という言葉の意味を改めて確認しておこう。

アイ・キャッチャー
【英】eye catcher
広告の表現で、見るものの目を引きつけ購入意欲を刺激するために意図的につくられるもの。主にイラストレーションや写真、または各種のキャラクターなどが用いられる。図案化された文字、特定の人物の顔などで表現されることもある。いつもその企業の広告に登場し、シリーズで長く使用されるものと、短期間、一時的に制作されるものがある。
――――――――――――――――――――――――
出典:流通用語辞典 - Weblio辞典(太字は引用者による。)

アイキャッチャー
[英] Eye Catcher
 人目を引くための広告宣伝用の絵、写真、文字など。
 博覧会、イベント、催事などの会場内で種々のアドバルーンやパビリオンのPR等に使用される写真や看板などを言う。
――――――――――――――――――――――――
出典:日本イベント産業振興協会編『イベント用語事典 』(1999年)- Google Book(太字は引用者による。)

 いずれも「広告に注目させるための視覚的要素」という解説から大きく外れるものではない。善悪の価値判断が加えられた言葉ではなく、一般的に使われる用語である(したがって一部で言われているような「モノ化」「性的対象化」だのとは無関係の言葉である)という点を押さえていただければ、この場は充分である。

山中 @eri82tom

内閣府男女共同参画局でのガイドラインとして女をアイキャッチャーとして使うことには苦言を呈されている。決まりはあるのだよオタクども…。調べてみれば…。 それでもこの股間ぴっちりスカートが性的だとかアイキャッチャーではない!と言うのであればもう救いようがない まあ救う義理は無いけど pic.twitter.com/HvMvk01sa7

2020-02-14 13:24:24
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くりひろし@ICT漫画描いてます @kurihiroshi

@eri82tom 私は男性ですが、男性だってアイキャッチャーにされるのは迷惑ですよね。 ガイドラインに示されてないから、男性はアイキャッチャーに使われても良いのでしょうか?

2020-02-15 01:51:03
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

そのガイドラインを見るたびに思うのですけど、なんで女性を「アイキャッチャー」として使ってはいけないんですか? twitter.com/eri82tom/statu…

2020-02-15 01:01:26
まとめ そもそも「アイキャッチャー」にすることはいけないの?という議論(青識亜論氏ら) 「なんでアイキャッチャーとして使うことは良くないのか?」シンプルな問いですが、答えは千差万別に… 4540 pv 42 1 user

1.「伝えたい内容」とは何か

 さて、『表現ガイド』の記述を改めて確認しよう。

伝えたい内容と関係がないのに女性を人目を引くために使用したり、女性の性的あるいは外見的な側面を強調して表現することは、女性の尊厳を傷つけ、性を商品化することにつながります。伝えたい内容にふさわしい表現をするようにしましょう。
(太字は引用者による。)

伝えたい内容と関係がないのに」という条件付きで「女性を人目を引くために使用したり、女性の性的あるいは外見的な側面を強調して表現すること」を避けるよう説いている。
 人目を引くことに執着するあまり、本題と無関係な要素が目立ってしまうことで「正確な情報を効果的に伝える」という広報の目的を阻害するおそれがあるためである。

 ところで、「伝えたい内容と関係があるかどうか」はどうやって判断するのだろうか。
『表現ガイド』ではプールに関するポスターを例示している。 

《変更前》水着姿でポーズをとる女性
  ↓
《変更後》水着姿の男性と少年少女

「なるほど女性の性的側面を強調した表現だな」、と素直に評したいのは山々なのだが、なにぶんプールに関するポスターなので、女性キャラクターが水着姿であること自体は広報内容に関係ないとは言い切れなくなっている。
 幸いなことに、女性が分かりやすくわざとらしいポーズをとっていることから、不必要に扇情的という点で「過剰なアイキャッチャー」と判定することは差し支えない。

 しかし、ここで終わってはどうもすっきりしないので、より分かりやすい事例を求めて、内閣府が2003年に発行した『男女共同参画の視点から見る公的広報の手引』におけるアイキャッチャーの事例を見てみよう。

『公的広報の手引』の最初の例では、火災予防週間のポスターになぜか水着姿の女性を起用しており、メッセージとビジュアル要素がちぐはぐでもはや意味不明な領域に達している。なんとも極端な例である。
 さすがにここまで来れば「伝えたい内容と無関係」と言い切ることはたやすいだろうが、翻って『表現ガイド』のプールの例はどうだろうか。率直に言って、例示のチョイスがあまり良くなかったのではないかと思われる。
 
 ともあれ、以上で『表現ガイド』の例示を簡単に検討した。しかしながら、たとえば、実際に論争となった日本赤十字社と漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』のコラボポスターのような事例では、イラストが広報と関係が無いと判定できるだろうか。

まとめ 「宇崎ちゃんは遊びたい!」献血PRポスター炎上問題/まとめのまとめ 2020年2月より第二弾がスタートしました。 →▼日本赤十字社「宇崎ちゃんは遊びたい!」献血コラボ 第2弾とその反響/まとめのまとめ https://togetter.com/li/1463442 ※このまとめは「表現文化を考える消費者の会」が作成しています。洩れているTogetter、追加すべき「まとめ」がありましたら、コメント欄、またはアカウント @ytrebilno までお知らせください。 4985 pv 33 4 users

 関係ないだろうと即断される方もいるかもしれない。しかし広報内容との関連性については、たとえば騒動勃発から間もない時期に次のような指摘がある。

KeK @kek_kuten

地方自治体の広報のガイドラインには、男女に偏った表現や、体の特定の部位を強調した表現は避けるといった表記がある。しかしその前提として「合理的な理由がなく」とあることが多い。様々なコンテンツとコラボしていれば前者が、特定のコンテンツのファンにPRする目的なら後者も問題ないのではないか

2019-10-17 08:36:51
KeK @kek_kuten

埼玉県の表現ガイドには「伝えたい内容と関係がないのに」とあるけれど、今回は、そのコンテンツのファンに献血のことを知ってもらいたいという「伝えたい内容」があるので、問題ないのではないか。

2019-10-18 00:10:28
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コメント

毒眼鏡@暑いと融ける @poison_crawler 2020年2月18日
「埼玉県が発行する広報物が対象」なんで、地方自治体の系統外である日赤やJAには無関係ですね、お疲れ様でした。
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、紫サラミ @2210ieofkome 2020年2月18日
一地方自治体の政策を全国区で用いるとかお前それ香川県のゲーム規制条例みても言えんの?というか。 埼玉県のガイドラインが悪いということ言いたいわけじゃないが。そんなの表現規制の厳しい東京とか北海道のを持ち出すとかもできるし。
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、紫サラミ @2210ieofkome 2020年2月18日
お気持ちヤクザの表現規制論で頻出の「女性の尊厳が傷ついた」論。具体的に誰が、気持ち以外の具体的被害があったか、それらが言えないなら「お気持ち」でしかない。 ただ胸が大きい女性がボディラインの出るファッションをしているのが「性的」だというのは、この前のフリー素材のような女性を侮辱することに他ならない。
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うす曇り/N.S @usugumori 2020年2月18日
役所の作る基準なんて、要は当たり障りのないように一時的に築いたプレハブなわけで、それで揉めたらまた別の場所にプレハブを建てるだけのもの。  今、当たり障りのない消極的な広報をしたいなら従えばいいけど、そんな広報が人の心をうつのかはまた別の話。
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森のクマッチング(ぽっけ風) @peerchaky 2020年2月18日
一地方自治体のそれも条例でもないガイドラインで他所の民間企業の広告に当てはめるとか、埼玉県のガイドラインを印籠か何かと勘違いしていらっしゃる? そのガイドラインもあくまで「埼玉県が発行する広報物」のもので、別に「埼玉県で掲示する広報物はこれを順守しろ」とは書いてないしね。
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aioi_au @aioi_au 2020年2月18日
アイキャッチーじゃない広告とかただのゴミじゃん! ガイドラインに従ったとしても、 ・伝えたい内容と関係ないのに女性を〜>広報用コラボ企画の存在そのものの否定! ・女性の性的なもしくは外見的な〜>巨乳は奇形っていう差別主義者が難癖つけただけで強調してねぇ。
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レン @twren3 2020年2月18日
今後一切の創作物に対して女性の出演がなくなれば満足かね?
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毒眼鏡@暑いと融ける @poison_crawler 2020年2月18日
ああ、後は「関連性」で言ったら埼玉県の場合プロ野球チームのライオンズとコラボしたポスターとあるし、「ハタチの献血」で乃木坂46のメンバーを器用してますがそれも無関係ですよね?んじゃあとっとと協力解消する様に働きかけましょうね。
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愚民Artane.🦀@火事場泥棒に10兆円追い銭。 @Artanejp 2020年2月18日
こういうガイドラインって、フェミニズムと宗教右翼と警察の代理人が作ってますからね。他の人たちの議論を排除して勝手にやってる。
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愚民Artane.🦀@火事場泥棒に10兆円追い銭。 @Artanejp 2020年2月18日
この手のガイドライン策定が一段落して「シノギ」を失った人たちが、二次元キャラクター攻撃を煽ってのエセ同和行為を新しいシノギにしてるというのが、最近の私の仮説ね。
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愚民Artane.🦀@火事場泥棒に10兆円追い銭。 @Artanejp 2020年2月18日
一つ言えるのは、きちんとした大衆的議論に裏打ちされてるなら、こんな杜撰かつ大胆な内容のガイドラインにはならず、もっと自制的になってますよ。
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時雨 @light_snow 2020年2月18日
適用対象や法的拘束力についての各位の指摘はいちいちもっともと言うほかありません(遠い目) ただ『表現ガイド』を好んで引用する人々の主張を観察すると、「県の機関以外は対象外?だからと言って守らなくていいのか?(公的機関の代表格である)国や地方自治体がこうしてガイドラインを定めているんだから、同じ公的機関であれば同じように従うべきだ」と謎の信念で食い下がる人が存外多いようです。
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時雨 @light_snow 2020年2月18日
light_snow 適用対象や法的拘束力についての反論をものともしないタフな(婉曲表現)人々の存在を踏まえて、『表現ガイド』そのものの信頼性や論理構成など、別の切り口から『表現ガイド』を検討することで見えてくるものがあるのではないか。そう考えたのが個人的研究の出発点です。目論見が成功しているのかは心許ないのですけども。
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時雨 @light_snow 2020年2月18日
light_snow ここからは余談。内閣府『公的広報の手引』や埼玉県の『表現ガイド』、その他地方自治体のガイドラインを好んで引用する人達の間では、個別のガイドラインの背後にある『汎用・公共表現ガイドライン』とでもいうのか、個別の法令に対する自然法のように超越的な規範が存在するという考えを前提にしているように見受けられることがあります。
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時雨 @light_snow 2020年2月18日
light_snow ・・・・・・そもそもこの印象論が間違っている可能性は充分ありますし、「一人一派」な方々からはお叱りを受けてしまうのかもしれませんが、『表現ガイド』をはじめ個別のガイドラインの適用対象や法的効力についていくら反論がなされてもまるで堪えていないように見えるのは、そういう理由があるのかもしれないなという感触です。
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時雨 @light_snow 2020年2月19日
埼玉県『男女共同参画の視点から考える表現ガイド』の研究(2)':2つの『ガイド』の比較検討 - Togetter https://togetter.com/li/1470408 比較記事を作成したので、比較部分の詳細はこちらへ移動しました。なぜ変更されたのか公式の見解はありませんので、適当に推測するコメントを適宜補完していく予定です。
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