哲学院生のアライさんによる性・出生の哲学話

哲学院生のアライさんによる哲学話 - Togetter https://togetter.com/li/1416702 からの抜粋なのだ!
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑥【反論1:害だけでない】 今度はオーヴァーオールの批判と想定される反論を見ていくのだ。ベネターが生まれてきた子に害悪を避けることを助言しているとすれば、裏を返せば害悪が少ない人生は生きるに値することになるのだ。でも、そもそもベネターは人生が無いことが最もよいと主張しているのだ。 pic.twitter.com/f5N8Rf984u

2019-12-02 23:22:40
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑦【反論2:人生わりといい】 オーヴァーオールによれば、苦難はあっても多くの人が生まれてよかったと思っているし、それは必ずしも楽観主義とは限らないのだ。すべて自己欺瞞とするのは「不遜」なのだ。でもベネターはおそらく個々人の視点ではなく、一般的な視点・宇宙的な視点から考えてるのだ。 pic.twitter.com/5Oz5ZKiOul

2019-12-02 23:22:42
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⑧【反論3:可愛い子には旅をさせよ?】 さらに、事故や苦難をすべて除去しようとするなら子を家から一歩も出さないことになるけど、これだと監禁なので虐待になっちゃうのだ。これに対しベネターならおそらく、「生まれてきた子」と「まだ生まれてない子」の区別ができていないと批判するのだ。 pic.twitter.com/ajyOeMqjn0

2019-12-02 23:22:44
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⑨【反論の難点】 オーヴァーオールの批判は、やはりベネターの主張とすれ違っていて、日常的な視点、すでに生まれてきた子・人の視点が入っているようなのだ。そういう視点から批判しても、ベネターは宇宙的な視点を持ち出して反論してくるはずなのだ。 pic.twitter.com/eoIRMbl6gr

2019-12-02 23:22:46
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⑩【中立は不可】 オーヴァーオールの批判は「親によって生み出され、ある程度生きてきた私たち」の目線から来ているけど、ベネターにとってこれは偏見なので、「宇宙的な視点」ではないのだ。でも小手川氏はそもそも我々は皆、親によって生み出されているので宇宙的視点に立てないと考えているのだ。

2019-12-02 23:22:46
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⑪【形而上学】 ベネターには「苦痛を感じる存在が一掃される世界が望ましい」という態度=ある種の形而上学が前提されているようなのだ。すると ・快苦の非存在の非対称性⇒人類の絶滅 という順序のはずが ・この形而上学⇒非対称性 という順序の論証となって論点先取が起きている可能性があるのだ。

2019-12-02 23:22:47
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑫【世界への態度の適切さ】 ただし、出生主義も、出生を否定せず人間関係等の改善で可能な限り苦痛を減らしていく方がよい、という形而上学に依拠しているようなのだ。とはいえ、世界への態度の適切さは首尾一貫しているかではなく、我々の生きる現実に即しているかによって判断すべきだそうなのだ。 pic.twitter.com/GH7l87TyYf

2019-12-02 23:22:49
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⑬【利他の可能性】 ベネターは利他的な動機から出生を否定するけど、そもそも子どもはまだ生まれていないから、利他の対象がないのだ。生まれてない子に対して産まないとか育てないとか言明できないのだ。さらに、妊娠の前に、「まだ存在しない子のために子づくりすること」も原理的に不可能なのだ。 pic.twitter.com/lslQYCEyC1

2019-12-02 23:22:51
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⑭【子づくりと養育】 小手川氏によれば、現実的に考えて親は、妊娠・出産・養育の中で、胎児や子との関係を形成していくのだ。そのためいきなり「子づくり」だけに集中して避妊の是非といった一般的な議論や「快苦の非存在の非対称性」という難解な哲学的議論にもっていくのには無理があるのだ。

2019-12-02 23:22:51
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⑮【子づくりと養育2】 小手川氏によれば、最初は「子どもが欲しい」という利己的な動機であっても、妊娠・出産・養育を通して「子どもの幸せを願う」という利他的な欲求へと向け直されていくことの内に、子どもの産み育ての固有な価値があると考えられるそうなのだ。養子の養育にも認められるのだ。 pic.twitter.com/NMZnHMjjfA

2019-12-02 23:22:53
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑯【出生主義に苦しめられている人】 小手川氏は、出生主義に苦しめられている人に反出生主義は助けにならないと言っているのだ。出生に関する悲しみや苦しみは「生まないほうがよい」という主張によって癒されることはないので、理論による矯正ではなく「現実の難しさ」に向き合うことが重要なのだ。 pic.twitter.com/YZwqSgY3Lr

2019-12-02 23:22:55
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⑰【まとめ】 小手川氏は反出生主義と出産にフォーカスし、その可能な批判と再反論を挙げたうえで、ベネターの「宇宙的な視点」や「形而上学」がそもそも現実を無視した抽象的なものになっていることを批判し、この微妙な問題に丁寧に向き合うことを重要視しているのだ。

2019-12-02 23:22:56
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑱【補足】 どれが誰の意見かわかりにくいので整理するのだ ③―⑤⇒ベネターの意見 ⑥―⑨⇒オーヴァーオールの批判とそれに対してベネターがするであろう反論 ⑩―⑯⇒小手川氏のベネターに対する批判

2019-12-02 23:22:56
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

哲学話⑯【反出生主義を批判できるのか?】を追加したのだ! 哲学院生のアライさんによる哲学話 togetter.com/li/1416702

2019-12-03 12:29:57
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

①【フェミニズム現象学って何?】 今回は、フェミニズムや、アイリス・マリオン・ヤングのフェミニズム現象学を踏まえた男性性の研究、いわば現象学的な男性学に関する論稿を紹介するのだ!

2020-02-19 10:21:33
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

②【文献】 小手川正二郎「「男性的」自己欺瞞とフェミニズム的「男らしさ」 : 男性性の現象学」、『立命館大学人文科学研究所紀要』(120)、2019年、169-198頁 ritsumei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_… ※ただで読めるよ!

2020-02-19 10:21:33
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③【男らしさ】 医学部入試の男女差別に代表される性差別的な社会構造には「家父長的な男らしさ」も含まれているのだ。しかし、男性がこうした構造から降りようとしても、結局すでに得られた地位・立場からは降りないで男女平等を謳っていたりする、そんな感じもするのだ。 pic.twitter.com/2rIBSgg451

2020-02-19 10:21:36
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④【男らしさへの執着】 小手川氏は、男性たちは「男らしさへの執着をあまりに小さく見積もりすぎている」とも述べるのだ。そんな「男らしさ」を改めることについてフェミニズムやフェミニズム現象学から考えていくのだ。

2020-02-19 10:21:37
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⑤【フェミニズム】 ベル・フックスによれば、フェミニズムとは女性を優遇するものでも、なんでもかんでも男女平等にすることを求める運動でもなく「性に基づく差別や搾取をなくす運動」なのだ。母が娘と息子を差別する、女性が後輩にもハラスメントを耐えさせる、LGBTを差別する… pic.twitter.com/4J2yMBFcP9

2020-02-19 10:21:39
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⑥【男性の解放】 そんな「あらゆる種類の性差別を問題化し批判する運動」がフェミニズムなのだ。そして、男性に対する束縛も運動の対象なのだ。男性が女性を支配・搾取・抑圧することを社会が求めている、男は人前で泣いたりしてはいけない、稼がなきゃいけない…そんな束縛も批判の対象なのだ。

2020-02-19 10:21:39
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑦【つらさの違い】 しかし、平山亮によれば、「(稼得能力が奪われているために)自身の生存のための稼得能力を求める女性」のつらさと、「(支配コストであるところ)他者の扶養=支配するための稼得役割を求める男性」のつらさを混同すべきではないのだ。

2020-02-19 10:21:40
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⑧【絶えざる脱構築】 また、伊藤公雄は、男らしさを捨てた後、男性がまた「男」を選ぶのでは意味がないので、とにかく「男らしさ」を崩していくしかないと考えているのだ。たとえば上野千鶴子は「イクメン」は、既存の性規範のまま異性愛・両親がいる家族を再生産する危険性があると述べているのだ。 pic.twitter.com/45ogzIrG88

2020-02-19 10:21:41
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⑨【フェミニズム的男らしさ】 しかし、ベル・フックスは、一方でこうした既存の男性支配の批判を肯定しながらも、崩すだけではなく、同時にもっとはっきりした形でフェミニズムの考える男らしさのヴィジョンを示す必要があると述べているのだ。

2020-02-19 10:21:41
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑩【フェミニズム現象学】 小手川氏はそうした男性の問題を一人称的観点から出発して経験を分析する「現象学」から解き明かそうとするのだ。そのヒントになるのはフェミニズム現象学の代表作であるアイリス・マリオン・ヤング『女の子みたいな投げ方―女性的身体活動・運動性・空間性の現象学』なのだ。 pic.twitter.com/Ci2NPZzfY6

2020-02-19 10:21:44
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑪【女の子投げ】 実は、いわゆる「女の子投げ」は男女間の筋力の相違がない幼少時でも見られるので、体の構造とは関係ないのだ。むしろ「女らしい」身体運動が起こるのは、男らしい運動と違って、躊躇や自身のなさで抑制されるため、体全体を使えず、周囲環境と連動できないからなのだ。 pic.twitter.com/hKZ02bBTlL

2020-02-19 10:21:45
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