錯視は意識の現象的研究に役立ちますが、更に人間が見ている世界は最終的に脳内で加工されたものであることを教えてくれています。

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Masahiro Hotta @hottaqu

「情報は情報のみで存在し得るのか?」「量子力学が情報を扱う理論であるなら、実在を表す本当の理論を」このようなことを素朴に疑問に思われる方もまだ多いと思います。「実在」というものが日常生活であまりにも当たり前のように刷り込まれているから当然の反応でもありますが、それは幻想なのです。

2019-12-28 18:40:32
Masahiro Hotta @hottaqu

でもよく考え下さい。睡眠から覚めて目に入る世界は、光(つまり素粒子である光子の集まり)が持ってくる情報に過ぎません。例えば錯視は意識の現象的研究に役立ちますが、更に人間が見ている世界は最終的に脳内で加工されたものであることを教えてくれています。

2019-12-28 18:42:12
Masahiro Hotta @hottaqu

このデモンストレーションビデオも重要です。空間や物体を奥行きがある3次元的対象だと感じるのも、脳の働きだと教えてくれています。 youtube.com/watch?v=A4QcyW…

2019-12-28 18:43:46
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Masahiro Hotta @hottaqu

これも錯視の効果です。左の白黒写真がオリジナルで、右はそれにオレンジと青と緑の斜線を加えただけのもの。線を加える以外には色を塗っていないのに、肌や服には色が付いて見えるのが不思議な錯視。 pic.twitter.com/ecdYUaTm83

2019-12-28 18:45:21
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Masahiro Hotta @hottaqu

左のように皮膚や服の領域に色は付いていないという情報を、それぞれの光子は自分の網膜まで届けていたはずなのに、脳内では斜線部分の情報を採り入れて、錯視として右のように皮膚や服に自動的に彩色してしまいます。我々が見ている世界は、決してそのまま実在しているわけではないのです。 pic.twitter.com/j1YgztgQhR

2019-12-28 18:46:37
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Masahiro Hotta @hottaqu

では、その情報を運んでくる「光子」は実在でしょうか。これについても、普通の意味の実在ではないことが分かってます。例えば光子が存在しないはずの真空中を一様加速度運動する測定機や観測者は、加速度に比例した温度の光子の集まりとしての熱浴を観測するのです。mhotta.hatenablog.com/entry/2014/05/…

2019-12-28 18:48:05
リンク Quantum Universe 物理学における存在とは? - Quantum Universe 「存在とは何か?」という問題は、本来実に根が深い。 例えば、相対論的量子場の真空状態|0〉を考えよう。 普通の慣性系での量子化では、真空は粒子数が零の状態だ。 またエネルギー密度の期待値もどこでも零だ。 そして図1のように慣性運動している測定機Aで測っても、粒子は観測されない。 空っぽの「無」の状態そのもののように思える。 しかしFulling-Davies-Unruh効果、通称「ウンルー効果」という面白い現象が知られている。 図1のBのように真空中を一様加速度運動をしている測定機は、あたかもその加速度に 22 users 31
Masahiro Hotta @hottaqu

光子があるかないかは観測者に依存しています。真空中を慣性運動する観測者にとっては、光子は存在しない。ところが一様加速度運動する観測者にとっては、光子は存在するのです。現代物理学の基礎である場の量子論では、素朴な実在概念では光子すらも説明がつかないのです。

2019-12-28 18:48:57
Masahiro Hotta @hottaqu

眠りから目覚めた人が見る世界の光景は、世界が素朴に実在していることを証明してません。情報が脳の中で処理され、それからイメージを作り出しているだけ。ただ毎日起きるたびその世界の風景に再現性があるため、素朴な実在という感覚を生み出して、日常の範囲でそれを長く利用してきただけなのです。

2019-12-28 18:49:48
Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学は素朴な実在を扱う理論ではなく、情報を扱う認識論的理論です。世界は量子情報からできている。量子重ね合わせにある自分自身を認知できない古典性がある意識を持った<私>が、世界の量子情報の独立背反事象の中から、各時刻に唯1つの事象を確率的に体験するという事実があるだけなのです。

2019-12-28 18:50:24
Masahiro Hotta @hottaqu

このトンネル効果のエネルギーの話も、量子力学が実在論的ではなく、情報理論、つまり認識論的であることのその一端を示しています。 mhotta.hatenablog.com/entry/2014/04/…

2019-12-28 18:52:00
リンク Quantum Universe トンネル領域で粒子を見つけたら、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? - Quantum Universe ツイッター(@hottaqu)で、次の問題を出してみた。 例えば1次元空間で図1のようなポテンシャルの中の粒子を考えよう。 基底状態のエネルギーEは、原点付近のポテンシャルVoより小さい。 しかし、エネルギーが足らないため古典的には粒子の侵入を許さない領域にも、基底状態の波動関数は浸み込んでいる。 「トンネル効果」である。 従って粒子が原点周辺に見つかる確率は、零ではない。 しかし原点付近に粒子が見つかるとすると、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか? それが「問題」である。 測定の結果、例えば図 40 users 24
Masahiro Hotta @hottaqu

トンネル領域でも粒子の存在確率は非零です。しかしそこに粒子が実在しているのなら、エネルギーが足りません。つまりその領域に測定前から粒子が実在していることを意味していないのです。その粒子をトンネル領域に見つけるには、位置測定機自身が十分なエネルギーをその粒子に与える必要があります。

2019-12-28 18:53:47
Masahiro Hotta @hottaqu

つまり「もし正確に位置が測れる測定機で測定するならば、必ずその測定中に足らないエネルギーが測定機から供給されて、ある確率で粒子がトンネル領域に観測される」という意味なのです。トンネル領域に粒子の非零の確率密度を与える波動関数は、そのような「情報」に過ぎない概念だと分かります。

2019-12-28 18:55:29
Masahiro Hotta @hottaqu

「情報は情報のみで存在し得るのか?」これには情報自体を記憶させる物理的実在は必要ではないのかという疑問も内包しています。でも「情報が物理的な何かに記憶されている」ということ自体も情報に過ぎません。本当に実在的な何かに情報が書き込まれているのかは、永遠に分かりません。

2019-12-28 18:57:05
Masahiro Hotta @hottaqu

例えば量子情報を担う代表格として量子場を考えてみます。分かりやすさのために入門書的教科書では実在的な描像で量子場を説明する場合も多いです。でも場の理論には双対性というものがあり、見かけが全く異なる場の量子論が、実は同じものだったりすることが分かっています。

2019-12-28 18:59:09
Masahiro Hotta @hottaqu

極端な例で言うと、低次元時空でボーズ場(ハードコアボソンではあるが)だったものが、フェルミ場で書ける双対性も知られてます。この系では、ボーズ場なのかフェルミ場なのかさえを区別する実験も、そもそも存在しないということなのです。

2019-12-28 19:00:12
Masahiro Hotta @hottaqu

また今でも広く研究が続いているAdS/CFT対応も、双対性の一種です。時空の理論である量子重力が、重力を全く含まない、そして空間次元も1つ小さな物質場の理論(CFT)に等価だという話です。

2019-12-28 19:01:05
Masahiro Hotta @hottaqu

例えば、空間次元が1つ高い曲がった時空に住んで、その宇宙の空間的な広がりを感じている人間も、実は次元が1つ低い平らな空間の別な場の理論の中の存在であって、その意識が空間の広がりを量子情報からイメージしているだけと言っても、それは原理的に区別ができないのです。

2019-12-28 19:02:08
Masahiro Hotta @hottaqu

また実際の実験で使う電磁場だって、エネルギー的な観点から本当に実在かと言われると怪しいのです。電磁場のエネルギー密度は任意の時空点において、観測者に依存せず、客観的に存在しているように見えますが、それも実は観方次第です。

2019-12-28 19:03:25
Masahiro Hotta @hottaqu

超弦理論のように高次元空間のコンパクト化で考えると、電磁場だって元は高次元重力場の一つの成分に過ぎません。そして重力場のエネルギー密度はテンソルの成分ではないことは昔から分かってます。ある点を中心とした近傍で座標変換すると、その点での重力場のエネルギー密度は常に零にさえできます。

2019-12-28 19:05:04
Masahiro Hotta @hottaqu

電磁場を含む高次元重力場のエネルギー密度は座標系や観測者に依存する概念です。ただエネルギー密度を空間積分した全エネルギーは、漸近的対称性(ポアンカレ群や反ドジッター群)の座標変換でベクトルとして振る舞うことは分かってます。つまりエネルギー総量だけは、物理学的な意味があるのです。

2019-12-28 19:06:18
Masahiro Hotta @hottaqu

重力場のエネルギー密度が座標変換で零にできる事実は、等価原理と関係してます。重力はある点近傍の局所慣性座標系をとると消えます。だからその場合には、その重力場のエネルギー密度もその点では零であるべきなのです。

2019-12-28 19:07:55
Masahiro Hotta @hottaqu

重力場の空間的なエネルギー総量にだけは意味があるのですが、この総量は興味深いことに、空間無限遠方の境界領域だけで評価できるのです。エネルギー密度がある量の空間微分で書けるためです。

2019-12-28 19:08:59