量子力学における「実在性」について

標準的なコペンハーゲン解釈に基づいた量子力学における実在性に関したTWをまとめました。
31
Masahiro Hotta @hottaqu

南部陽一郎さんは素粒子が専門だったが、若い頃には「物性物理」にも親しんでいたため、対称性の自発的破れの理論を作ることができたというのは、よく聞く話。でも分野横断から新物理を発見する次世代の"Nambu"達は、今度は「量子情報」に親しんでいる物理屋の若手達から現れるはずという確信。

2016-03-21 20:06:26
Masahiro Hotta @hottaqu

21世紀の物理は「世界は情報から成り立っている」という視点が不可欠だと思っているけど、多くの物理屋さんはまだモノの実在性にすごく拘っている気がする。そこで物理屋の皆さんにアンケートです。物理学者としてのあなたは、モノの「実在性」に、

2016-03-21 20:12:23
Masahiro Hotta @hottaqu

う~む。かなりバイアスのある投票行動結果かも。物理学会にくるような人達のメジャーな意見と食い違っている気が。。 twitter.com/hottaqu/status…

2016-03-22 17:00:32
Masahiro Hotta @hottaqu

自分はこれまで言ってきたように、物理学におけるリアリティは幻想であって、全ては観測者に対する量子情報として記述されるので、認識論的な立場をとってます。それで「世界は量子情報からできている」というバズワードを、頻繁につぶやいているわけですが。

2016-03-22 17:04:00
Masahiro Hotta @hottaqu

人類が馴染んできたモノの実在性はそのエネルギーや電荷等の保存則に支えられており、それに基づいた「1つの見方」に過ぎないとも言えます。その保存則の背景には対称性があるというのは現代物理学の基本的理解です。私の中で保存則は情報処理のコードにおける単なる対称性の拘束条件という感覚です。

2016-03-22 17:10:10
Masahiro Hotta @hottaqu

物理法則やモノの実在性は、例えある観測者が死んだ後でもあるはずという意見をもらうことがあります。しかし考えてみると、特定の一観測者にとって、それは反証不可能なメタ科学的な問いであるだけでなく、物理学の議論の中だけでも微妙なところもあるわけです。

2016-03-22 17:14:10
Masahiro Hotta @hottaqu

例えば今の我々の周囲の宇宙はある1つの準安定状態に留まっていて、未来のあるときにトンネル効果で別な状態に遷移することも可能性は否定できないのです。その場合、粒子の質量や電荷の強さなどの素粒子の相互作用に関わる法則は、大きくガラリと変わることもあり得ます。

2016-03-22 17:18:19
Masahiro Hotta @hottaqu

実際ヒッグス粒子の質量の値が従来の予想より大きく出たことで、このような宇宙の相転移やトンネル現象を解析する研究者もいます。 twitter.com/hottaqu/status…

2016-03-22 17:19:16
Masahiro Hotta @hottaqu

振り返ってみたら見えた月が次の瞬間にも実在し続ける保証は、応用上では問題なく使っていいのですが、基礎的レベルでは疑問です。日常生活レベルでそれは信じられないという実感も理解できるわけですが、かといって「実在性」というものはそれほど強固な基盤を持っているわけでもないという感じです。

2016-03-22 17:26:47
Masahiro Hotta @hottaqu

モノの実在性ですが、その延長線上で人間の実在性も問えるわけです。量子力学ではある人間が生まれたという1つの歴史も実は観測者依存な概念です。「ある人物が実在した」ということは、量子力学の思考実験としては、ある観測者にとっては正しくても、他の観測者にとっては意味のない内容となります。

2016-03-22 19:42:05
Masahiro Hotta @hottaqu

シュレディンガーの猫の思考実験というのがありますが、これは生きていた猫がやがて生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせになるという話です。しかしこの初期条件を置く時刻を、その猫が生まれる前の時刻に持っていくこともできますよね。

2016-03-22 19:44:38
Masahiro Hotta @hottaqu

親猫からその猫が生まれてくる前の状態を量子的な純粋状態として準備すると、時間発展によって異なる様々な猫が生まれる歴史の線形重ね合わせが生じます。これは外部から系を見ている観測者にとっては確かであり、その異なる歴史の間の干渉効果も、原理的にはその外部観測者が測定することもできます。

2016-03-22 19:48:20
Masahiro Hotta @hottaqu

つまりその外部観測者にとっては、「ある特定の猫がその親猫から生まれ、実在していた」と述べることはできません。その猫が実在した歴史もあるし、実在しなかった歴史もあります。そしてその系は量子的な純粋状態として、それらの歴史の重ね合わせにあるからです。

2016-03-22 19:51:00
Masahiro Hotta @hottaqu

猫を確認する系内部の観測者を考えれば、その観測者にとってその猫は、実在したか、またはしなかったかのどちらかになります。しかし外部観測者にとっては、その内部観測者の記憶自体も異なる歴史状態の線形重ね合わせになってます。内部観測者が何を確認したかは外部観測者にとって意味はありません。

2016-03-22 19:55:15
Masahiro Hotta @hottaqu

仮に人類が生まれる前に外部観測者(宇宙人!?)が地球全体を純粋状態に設定できたとして、その後エネルギーはコヒーレントにしか出入りさせないとしながら地球の量子状態の純粋性を保つ思考実験をすれば、「徳川家康は実在したか?」という問いはその外部観測者にとっては、意味はないのです。

2016-03-22 20:00:01
Masahiro Hotta @hottaqu

その外部観測者にとって、家康が実在した歴史の状態も、いない歴史の状態もあり、そして地球系全体の量子純粋状態は、その異なる歴史の状態の線形重ね合わせになります。また原理的には、その外部観測者は異なる歴史の干渉項も測定できることになります。家康のいる歴史といない歴史の干渉項です。

2016-03-22 20:03:37
Masahiro Hotta @hottaqu

この思考実験を考えると、家康の実在性すら、量子力学では危うい概念だと感じて頂けるかもしれません。私たちは家康が生まれた歴史の中を生きていますので、それは確定的であり、実在性の脆さを実感できません。でも我々自体をも量子系として扱う外部観測者にとっては実在性という概念は崩れるのです。

2016-03-22 20:08:15
Masahiro Hotta @hottaqu

これらの思考実験の結果は、なんら特別変わった量子論での話ではなく、通常のコペンハーゲン解釈を用いた標準的な量子力学の帰結です。モノや人間の実在性は、決して強固な概念ではないのですね。

2016-03-22 20:12:33
Masahiro Hotta @hottaqu

このように量子力学は、世界の見方を大きく変える力を持っています。ただこれらの話を知ると、また一知半解で量子力学をオカルトに結びつける方も出てくるかもしれません。量子力学は、どれかのパーツを端折るとすぐに邪道化します。ちゃんと基礎から積み上げて、きちんと理解することが大切です。

2016-03-22 20:15:40
Masahiro Hotta @hottaqu

このあたりは、下記記事が参考になるかと思います。波動関数(量子状態)は系に関する情報の束に過ぎないので、観測者依存性が自然にあります。⇒ 「波動関数の収縮はパラドクスではない。」 - Quantum Universe mhotta.hatenablog.com/entry/2014/04/…

2016-03-22 20:20:28
Masahiro Hotta @hottaqu

そういえば、今年に入って超電導量子ビット系での実験で、シュレ猫状態生成と、2匹のシュレ猫の量子もつれ状態生成の記録が、塗り替えられたらしいです。また光子系+セミマクロな力学系の実験で線形重ね合わせを作る実験も最近は、盛んです。もちろんその記述は、標準的な量子力学と整合しています。

2016-03-22 21:14:33
Masahiro Hotta @hottaqu

理論屋は、いろいろな理論の特性、予言を調べ尽くすのも仕事のうち。特にそれがコペンハーゲン解釈の量子力学のような成功している標準的理論なら、そうあるべきだと思ってます。理論屋の皆さんは「逃げてはいけません」。

2016-03-22 21:28:54
Masahiro Hotta @hottaqu

これらの問題の扱いで一番悪いのは、「だから量子力学には解決していない観測問題がある。」という主張で逃げること。標準的コペンハーゲン解釈の量子力学には、この観測問題は全くありません。これは量子力学を教える教師が注意をしなくてはいけない第一のことだと思ってます。

2016-03-22 21:34:17
Masahiro Hotta @hottaqu

科学哲学の人は、コペンハーゲン解釈における量子状態の観測者依存性をよく理解していないから、「観測問題はある」いう新書を出されてしまう。きちんと押さえるところを押さえて、量子力学を語って欲しいところです。(強い強い、個人的希望)

2016-03-22 21:50:42
Masahiro Hotta @hottaqu

観測者と対象系の分離は、その両者間の相互作用のスイッチオンオフが設定できるかどうか以上には制限が付きません。何か根源的な新理論でこの分離を説明したい場合、その観測者がなぜ意識を持ち、線形重ね合わせにある対象系の多数の事象から1つの事象だけを認識できるのかの説明が必要になります。

2016-03-23 03:46:43