中国の海洋進出の実力と限界

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HIROKI HONJO @sdkfz01

【中国の海洋進出 覇権を狙う巨龍の実力と限界】 近年、中国の海洋進出の意思はますます露骨なものとなりつつあります。2019年末には初の国産空母「山東」が、2020年1月にはアジア最大級の新鋭駆逐艦、055型1番艦「南昌」が就役。 今や海軍拡張のペースは米国を大きく凌ぐまでになりました。 pic.twitter.com/ZVNQHXRNuw

2020-05-30 17:36:12
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彼らは何を目指しているのか。彼らの軍事力・国力は何を為しうるのか。 ウィークポイントや限界はどこにあるのか。 そして、戦後最大の安全保障上の危機に直面した日本に出来ることは何か。 以上の分析が本稿のモチーフです。稿者の力量を超えるものであることは、もとより承知の上です。 pic.twitter.com/RkKnxb599X

2020-05-30 17:36:45
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なお、本投稿には人種差別や民族的偏見を助長する意図はありません。 稿者は仕事で何度か中国へ渡航した経験があり、同国の民衆には何ら敵意を持っていません。 それ故、北京が追求する軍事的膨張主義を封じ込め、「有事」を未然に阻止する方策を探ります。 pic.twitter.com/xTfp6riLTR

2020-05-30 17:37:20
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さて、中国の海洋進出の基底をなすのが「列島線」戦略と「真珠の首飾り」戦略であることは、多言を要しないでしょう。 前者は、米国を仮想敵とし、その自国近海への進入・接近を阻止すべく、西太平洋に広大な戦略的縦深を確保しようとするものです。 pic.twitter.com/JnBO5GUWw0

2020-05-30 17:37:59
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当初2020年の実現を目指していた第2列島線は、本州から小笠原、米軍基地のあるグアム、サイパンを経由してニューギニアに至るもので、その内側には領土・資源を巡って日本と係争中の尖閣諸島や、北京が武力併合の可能性を公言する台湾、着々と実効支配を進めている南沙諸島が含まれます。 pic.twitter.com/iyUz6SYXla

2020-05-30 17:38:39
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従って、この構想は単に米軍に対する防衛に留まらず、太平洋西部全域における覇権の確立を意図したものであり、日本の生存に関わる重大な脅威に他なりません。 しかも、中国は新たに第3列島線(ハワイ-サモア-ニュージーランド)やインド洋に第4、第5列島線を設定したとの情報も散見されます。 pic.twitter.com/wnfYOYRYkY

2020-05-30 17:39:27
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第3列島線の定義は必ずしも明確ではありませんが、ハワイを基点に太平洋の東西を米中で分割しようとする意志の顕れであり、2013年の米中首脳会談で習近平国家主席がオバマ大統領に伝えた「太平洋には米中を受け入れる十分な広さがある」というメッセージを具現化したものと言えましょう。 pic.twitter.com/Py6rEBSZ7I

2020-05-30 17:40:15
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これに先立つ2007年には、訪中した米太平洋軍司令官キーティング大将に対し、人民解放軍の高官が「中国が空母を保有した場合」を前提に、同様の分割提案を行ったとされます。 中国は既に国産空母を就役させていることに鑑みれば、北京の策動が今後ますます加速するのは間違いありません。 pic.twitter.com/W3cUmPgqh7

2020-05-30 17:40:53
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一方、「真珠の首飾り」戦略は中東やアフリカ東岸の資源地帯と中国本土を結ぶシーレーンを「保護」すべく、インド洋周辺諸国と関係を強化し、軍事的・準軍事的拠点の確保を推し進めるもので、すでにジブチ、パキスタン、スリランカ、ミャンマー等、各地の港湾を手中に収めています。 pic.twitter.com/0zmKoJhCAn

2020-05-30 17:41:39
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詳細は未だ不明ですが、前述の第4・第5列島線(画像破線)はインド洋に設けられているとされ、この海域における中国の「サラミ戦術」が進展していることを伺わせます。 pic.twitter.com/4Kj2mlM2LY

2020-05-30 17:42:23
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「列島線戦略」と「真珠の首飾り戦略」。この2つは別個に存在するものではなく、相互に補完しあっていると考えられます。 そして、その究極的な目的は、海外からの資源供給路を直接支配下に置くことにあります。 ここで、中国の資源需給について概観しましょう。 pic.twitter.com/ji6RvMvk09

2020-05-30 17:43:07
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もともと、中国は天然資源豊富な大陸国でしたが、近年の急速な経済成長に伴い、資源輸出国から世界最大の輸入国へと変貌を遂げています。 pic.twitter.com/KUisxM2UUQ

2020-05-30 17:43:55
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2003年に日当たり535万バレルだった原油消費は、2018年には1,352万バレル(日本の3倍に相当)へと急伸。この間、国内の原油産出は日産342万バレルから同385万バレルへと微増したにすぎません(それでも産油量は世界7位)。 結果、中国は世界最大の原油輸入国(日当たり967万バレル)になっています。 pic.twitter.com/qRWntyLODq

2020-05-30 17:44:39
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同国の石油輸入のうち、40%が中東から、20%がアフリカからもたらされており、ベネズエラなど南米から喜望峰を回って来るものも含めると、8割近くがインド洋-マラッカ海峡-南シナ海を経由しているのです。 従って、このラインは中国の生命線であると言っても過言ではありません。 pic.twitter.com/FVuCYcM4qp

2020-05-30 17:45:29
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また中国は世界最大の天然ガス輸入国でもあり、2018年には9,000万トンを輸入しましたが、その過半が豪州・ASEAN・カタールなど太平洋西部・インド洋周辺から海路運ばれたものです。 pic.twitter.com/dsmmAbQ0zn

2020-05-30 17:46:13
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鉄鉱石についても、中国は世界最大の輸入国(2019年の輸入量は10億7,000万トンで、第2位の日本の10倍)であり、世界の鉄鉱石貿易量の7割近くを占めます。 同国の輸入量のうち、7割弱がオーストラリア、2割強がブラジル(喜望峰-インド洋経由)で調達されました。 pic.twitter.com/4gwXXZx5tM

2020-05-30 17:47:03
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これらの事実は、万一海上交通が封鎖された場合には、中国の経済がたちまち壊死することを示しています。

2020-05-30 17:47:40
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現在、中国は「接近阻止/領域拒否」戦略に則り、艦船・航空機・地上のミサイル部隊が連携して米機動部隊の進入を阻止する防衛体制の構築を進めていますが、米海軍は危険を冒して中国本土に近づかなくとも、海上交通の要衝を抑えるだけで中国の戦力と継戦能力を破砕することが出来るのです。 pic.twitter.com/eJBxjpNsbc

2020-05-30 17:48:25
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かかる状況は「マラッカ海峡のジレンマ」と呼ばれ、北京の為政者たちの深刻な懸念となっていると言われます。 WW2で米太平洋艦隊を率いたニミッツ提督が、日本について記した次の言葉は、今日、中国にも当てはまるのです。 pic.twitter.com/Na2gqOTkp4

2020-05-30 17:49:18
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「日本は大量の食糧と原材料を輸入し、それを加工して輸出しない限り、日本の国際社会における重要度は速やかに失われるであろう。日本は…その生存を輸入と輸出の能力に依存しているが、この能力は…海上を妨害されないで自由に使用することができるかいなかにかかっている」 pic.twitter.com/FdPy7tGfWz

2020-05-30 17:50:25
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「日本は、強力な海上力をもつことによって、あるいは、大きな海上力を有する強力な同盟国と手を堅く握ることによってのみ、その生存と繁栄をつづけることができる。」 pic.twitter.com/7HYqNpNAVT

2020-05-30 17:51:29
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ニミッツの言に従えば、日本が後者(日米同盟)を選択したのに対し、中国は前者(自ら強力な海軍を保有する)へ大きく舵を切ったのです。 実際、中国の軍事費は公表値ベースで2010年の5,321億元から2020年の1兆2,680億元へと急増しており(2.4倍)、これはGDPの増大(2.0倍)を大きく上回ります。 pic.twitter.com/zLJ11qqgfd

2020-05-30 17:52:43
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ストックホルム国際平和研究所の推計によると、実質的な中国の軍事費は世界2位の2,611億ドル(約1兆8,700億元で公表値の1.5倍)。これは世界1位の米軍の0.36倍、自衛隊の5.5倍に相当します。 pic.twitter.com/kGlNsLrRGO

2020-05-30 17:53:44
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ちなみに上記推計による中国の軍事費の対GDP比は1.9%(日本は1%)となり、「国際的に見てそれほど高くない」とされますが、研究機関によっては、公表値の2倍から3倍に達するという見方もあることに注意が必要です。(その場合対GDP比は最大で3.9%に達する) pic.twitter.com/L3XWintfld

2020-05-30 17:54:46
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また、中国のGDPは誇張されている可能性が濃厚であり(米ブルッキングズ研究所は中国が過去10年に渡り経済成長率を毎年1.7%ポイント水増ししていたとしている)、この点を加味すれば軍事費の対GDP比は更に高いものとなるでしょう。 pic.twitter.com/x3aZ1mP7Em

2020-05-30 17:55:42
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