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2020年6月21日

【映画レビュー】私の若草物語ではなかった「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

現在公開中の映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」のレビューです。完全ネタバレ注意。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」 観てきました。 監督の前作「レディバード」が大変傑作だったため、事前に原作小説二巻、過去の映画二作(33年版、94年版)を観て挑みました。 結論から言うと、私的には微妙でした。事前情報を仕入れすぎて失敗した形。 ※以下ネタバレ注意 pic.twitter.com/69vZS6CXkv

2020-06-21 03:40:18
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

今作の最もセンシティブな要素は何と言っても「新進気鋭の女性監督グレタ・ガーウィグの新解釈による映画化」でしょう。今作の評価はこれにノれるか否かでしかないところがある。 で、原作小説を事前に読んでこちらを大変気に入った身としては、ノれなかったんですね。 pic.twitter.com/niLP1UZqU3

2020-06-21 03:40:18
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

その新解釈をサクっと説明してしまうと『主人公のジョーは本当は結婚なんかしたくなかったはずだ』というもの 幼少期から男勝りで作家志望の主人公ジョーは、色恋沙汰を毛嫌いして幼馴染のイケメン金持ちの求愛すら断るのですが、二巻にあたる「続若草物語」の終盤、ある男性と結婚してしまうんですね pic.twitter.com/EdHIZ9JNru

2020-06-21 03:40:18
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

、この展開は作者のオルコット女史の当時の発言(遺っている手紙等)からすると不本意だった、というのがどうやら通説らしい。出版社に「そのほうが読者が喜ぶ」と求められて変えた筋だとか。 今回の映画化はこの説に則った改変が成されています。

2020-06-21 03:40:19
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私自身、この情報を知らなかった過去の「続若草」感想ツイートで『ジョーが終盤くっつく展開がなんか強引』と書いてるので、まあこの解釈自体はわからんでもないんです。 ただ、私は作者の発言だからといって、それを既に発表された作品にそのまま適用してしまうことに、あまり感心しません。

2020-06-21 03:40:19
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

文学批評においてはロラン・バルトの「作者の死」以降、こうした「作品を作者の思想を混同する」ような解釈、批評は一定の否定がなされている。 例えば、殺人鬼の話を書いたからといってその作者が殺人衝動を抱えている、ということにはなりませんよね。

2020-06-21 03:40:19
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

名探偵コナンの作中では今まで何百人と人が殺されてると思いますが、作者の青山先生に異常殺人衝動があるなんて誰も思わないと思います。 逆に、作者が口で言ってることより、作品に現れたことのほうがその当人の本質を現わしていることだって十二分にある。 pic.twitter.com/kW2PM2691y

2020-06-21 03:40:20
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

グレタ的解釈では「オルコットが若草の後に描いた他作品も独身女性主人公を扱っていて、そちらのほうが活き活きとしている」という話もあるらしいですが、私はその作品を読んでないのでなんとも言えませんが、その理屈もどうなのかなぁと。あくまで「若草」シリーズとは別の作品のことでしょう。

2020-06-21 03:40:20
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

とはいえ、私自身も「続若草における終盤のジョー結婚の経緯」には違和感を抱いていたので、この解釈の「方向性」自体には異論がないわけです。 今作でノれなかったのはまた別の要因でして、それは『この解釈を正当化するために施した仕掛けが単純すぎる』ということなんですね。

2020-06-21 03:40:21
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

今作でこの解釈による改変を実現するために監督・脚本のグレタが施したのは『最後のプロポーズの場面を空想上のものにしてしまう(メタフィクション化)』というもの。 正直、それ以外はほとんど原作通りなんですよ。私がガッカリしたのはここです。このやり方はあまり創意を感じない。

2020-06-21 03:40:21
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

優れた脚本というのは、物語の全編に渡って結末に指向していて、無駄がない。ラストだけ変えれば意味合いが変わるという単純なものではない、と私は思っています。その程度で解釈が180度変わってしまう作品は元々大したことがない。

2020-06-21 03:40:21
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

勿論監督のグレタは巧みで、今回は一応『どちらともと取れる風にしている』と明確に証言していますが、私的にはどう見ても「結局結婚しなかったよ」としているとしか思えません(そもそもそこだけ原作と変えてるんだからそういう意図の存在は絶対に否定できない)

2020-06-21 03:40:21
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私は「脚本家グレタ・ガーウィグ」は大変高く評価させていただいてるのですが、監督としては正直まだそこまで、という印象でした。そしてそれは今回も同じ。 映像演出面が弱いんですね。今回も映像的に非常に印象的なシーンや構図というのは特に無かった。過去の映画版と比べてもそこまで差はない。 pic.twitter.com/vkvs4DFAKb

2020-06-21 03:40:22
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

脚本は確かに上手いです。今作の最も特徴的な点は「時系列を解体した構成」ですが、この試みは確かにうまくいっている。 従来の映画版もどれも「若草~続若草」までと扱ってる範囲は同じなのですが、今までの映画版で弱かったのは「姉妹の成長が感じられない」ところで。

2020-06-21 03:40:22
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

若草物語二巻分は、一巻で姉妹達の幼少期の生活、二巻でそれぞれ独り立ちしていく成長の様子が描かれるのですが、この二作品のコンセプトの違いを、一つの映画ではなかなか演出が出来なかったわけです。 今回グレタはこれを「現在と過去のシーンを完全に分断して織り交ぜることで対比的に描いた」

2020-06-21 03:40:22
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

過去の、皆が揃って和気あいあいとしていたシーンは暖色系の色合いの画面で、現在の離れ離れになったシーンは寒色系の画面という使い分けも見事です。 これは「ゴッドファーザー2」的な栄光の過去と硬質な現在の対比のテクニックと言えます。 pic.twitter.com/fCrmpJKLoo

2020-06-21 03:40:23
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

どの時系列か混乱した、という感想も見かけますが、前述した画面の色合いや「ジョーの髪の長さ」で現在と過去をハッキリと分断しているので、特に混乱することもないと思います 序盤の移行ではハッキリと「長髪に埋もれたジョーの顔アップ」から過去のシーンに入るのでしっかり「サイン」も出してます pic.twitter.com/C5pqZhj9GJ

2020-06-21 03:40:23
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

冒頭のスムーズさは素晴らしかった。ジョーが出版社に乗り込むところから始まるのがまず意外で、華やかな社交界のエイミーと、田舎で子育てに苦闘するメグ、その場面にベスが空っぽになった家で弾いてるピアノの音が被ってくる。四姉妹の現在の対比が、完璧にスマートに提示される。

2020-06-21 03:40:24
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして過去の「四姉妹が一緒に居た頃」に移るのですがここの原作のエピソード取捨が「なるほど!」と唸る 社交パーティに行く前の準備でジョーがメグの髪を焦がしてしまうという、原作では「ハプニング」の事件を持ってくることで、子供達がギャーギャー騒ぐシーンを最初に見せることで印象付けている

2020-06-21 03:40:24
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

今作は「7年前」の幼少期も現在と同じ女優陣が演じてるので「子供っぽく見せる」工夫が必要なわけで、それを「ハプニングでピーピー大騒ぎする四人」で表現してるわけです。これはエピソードの取捨が実にうまい。若草の映画化でこの話を最初に持ってこようとは、なかなか思わないと思います

2020-06-21 03:40:24
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

とまあ導入部や時系列を解体した構成は見事なんですが、肝心の描かれるエピソードはわりと原作通りで、演出的にも特にどうと言うこともないんですね。ここがちょっと力不足かなぁ、と思いました。正直結構「そのまま」なので観てる間はちょっとダレましたね。

2020-06-21 03:40:24
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

例えば原作で人気の「ローレンス氏とベスの友情」の場面ですけど、ここも正直そんなに感慨深いシーンとは感じなかったです。原作ではそれまで交流のなかった頑迷な老人のローレンス氏の心が解きほぐされ、内気なベスが心を開くのが非常に感動的なシーンなのですが。 pic.twitter.com/f5lF2Em4f3

2020-06-21 03:40:25
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ローレンス氏の頑迷さや迫力が全然表現されてなくて、「隣の家なのになんで今まで交流なかったの?」と思わざるをえない。 あと、クリスマスの食事を貧しい家に運んだ後にローレンス氏が差し入れしてくれるご馳走が大袈裟すぎる。絶対余りそうだからそれももっと持っていってあげたら?と思いました。 pic.twitter.com/xcdagTpxDm

2020-06-21 03:40:25
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

あと気に入らない点は、「女性の自立」を描くためなのか、男性キャラクターが意図的に魅力なく描かれてるように見えるところ。 ティモシー・シャラメのローリーはいいんです。94年版のクリスチャン・ベール版もよかったですけど、ベスト・ローリーと言えるんじゃないでしょうか

2020-06-21 03:40:26
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

スーパーイケメン俳優かと思いきやひょうきんな演技もよかったですし。勿論紳士になった後は圧倒的。 ジョーに告白する場面では強風に煽られて髪の毛が乱れるんですけど、「強風に煽られてボサボサになってもこんなアニメキャラみたいなカッコイイ髪があんのかよ!」と衝撃でした。 pic.twitter.com/adf02wIrx0

2020-06-21 03:40:26
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