ライトノベル史と批評を残すのがなぜ重要か

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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

【ライトノベル史と批評を残すのがなぜ重要か】 連休でもあるので少し解説。私や嵯峨景子@k_sagaさん、大橋さん@garamonminiがラノベ史、少女小説史をまとめたり、批評をしていて面白いのが、創作の原点や繋がりが見えてくるからなのです。古めの作品となるけれど、その連鎖をちょっと披露しましょう。

2020-09-21 12:18:40
中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

《サイバーパンクとライトノベル》 ギブスンの長編処女作であり、サイバーパンクの記念碑的な代表作『ニューロマンサー』が、早川書房から刊行されたのが1986年です。黒丸尚さんによる独特な翻訳文体との相乗効果もあって大ヒット。 pic.twitter.com/CLg5xrA97R

2020-09-21 12:19:23
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

ちなみに『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の初出は『ヤングマガジン海賊版』1989年5月号、単行本は1991年10月発売。 pic.twitter.com/E8cE1huZG6

2020-09-21 12:20:07
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

そのギブスンが切り開いたサイバーパンクの世界というのを、それぞれに創作に取り入れデビューしたライトノベル新人作家が、スニーカー小説大賞からデビューした冲方丁、七尾あきら、電撃小説大賞からデビューの古橋秀之の3人になります。デビュー年は95、96年

2020-09-21 12:20:30
中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

冲方丁『黒い季節』『マルドゥク・スクランブル』 日本SF大賞を受賞した後者については、ジェイムズ・エルロイと黒丸尚の影響が見て取れるのは言うまでもない。あとサイバーパンクに含まれる猥雑な暴力性への志向とどの様にしてその暴力性を抑えるのかというのは様々な作品に観られる要素でもある。 pic.twitter.com/y6gFdaKtn3

2020-09-21 12:21:08
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

七尾あきら『ゴッドクライシス 天雷鬼神伝』『古墳バスター夏美』 前者は黒丸尚の文体を独自解釈し、アクションを書こうとした意欲的作。主人公は外惑星用のサイボーク体を持つ女性で、ネットで助けを求めてきた少年(実は妖怪)を助けての探偵譚。「うしおととら」とサイバーパンクのマッシュアップ pic.twitter.com/aCG8tGgCpg

2020-09-21 12:22:12
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

ちなみに初期のSF的な代表作と言える古墳バスター夏美の3巻は、今で言うところのマルチバースもので、平行世界の破壊者となった主人公の影と戦う話。「スパイダーバース」っぽいと伝わりやすいのだろうか。 pic.twitter.com/jCF7arkcjg

2020-09-21 12:22:42
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

古橋秀之『ブラックロッド』 魔法文明が爛熟して世界の危機を引き起こした、サイバーパンクならぬオカルトパンク傑作が「ブラックロッド」シリーズ。作品詳細は省略。ただ本作が重要視されねばならない理由の1つに、《オカルトからのセカイ系への補助線》を果たした点がある。これはまた別項にて。 pic.twitter.com/CcQ9P09urS

2020-09-21 12:24:00
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

ここは書くとすごく面白いことが山ほどあり、しかもまだ「エヴァンゲリオン」の影響がラノベに及ぶ前の話。もうちょっと取材と考えをまとめないといけない部分がある。その取材の1つとして遊んだのが、こちらの冲方丁×古橋秀之対談。書くこと山ほどあるけど、Noteとかに書いたほうがいいのかなぁ。 pic.twitter.com/1CpaWiAPtL

2020-09-21 12:25:24
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

【余談】デビュー作で、「僕は子供の頃からこれが好きなんだ―!」みたいな感じで溢れるほど書きまくっていると、大体デビュー5年から10年ぐらいして、「じゃあ君、リメイクしてみない?」みたいな話が持ち込まれる。冲方丁=攻殻機動隊、古橋秀之=レンズマンみたいに。アピール大事。 pic.twitter.com/7o9NsBzrgA

2020-09-21 12:34:50
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中津宗一郎@図書館設立&名作復刊 @nakatsu_s

で、確か「俺はサムライ・レンズマンが大好きなんだ―!」とか言う作家が、講談社レジェンドノベルスでデビューしたって聞いたけど、誰でしたっけ? @legendnovels さん まぁこんな感じで続いていくのである。

2020-09-21 12:37:24
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

ジャンルがきちんと自前で評論家を育ててほしいと思うのは、そうでないと、どうしても他ジャンルの評論家が、自分のところの視点から見た歴史を語り(その意図はなくても、どうしても)「歴史的植民地化」(という言い方が正しいのかわからないが)が行われてしまうからである……。

2020-09-21 14:12:57
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

中津さんの一連のツイートとか、間違っているわけではないが、一方で、ある主の典型的な「SF者から見たライトノベル史」だと思う。ライトノベルの内側からなら、別の歴史を書くことはもちろん可能だし、そうした複数の歴史観があって、摺り合わせが行われるのが一番だと思う twitter.com/nakatsu_s/stat…

2020-09-21 14:16:21
カトル・カール @nekogami_chang

『ライトノベルめった斬り』が出てきたとき、すごく良い本だと思った反面、SF中心史観とでも呼べるものが見え隠れして危険なものを感じました。 twitter.com/maezimas/statu…

2020-09-21 14:19:08
カトル・カール @nekogami_chang

『めった斬り』はかなりその辺気をつけている本だったとは思いますが。

2020-09-21 14:21:07
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

「新聞・雑誌でライトノベルを論評かるのがなぜSF関係者ばかりなのか?」という苦情は作家から実際に受けたことがあり、そして、私もSF関係者の端くれなので、「申し訳ない」とも思ったのだが、一方で、ならば是非、業界が、この人こそと思う評論家・ライターを支援・育成してほしいとも思ったのである

2020-09-21 14:21:12
@mEGGrim

市場規模が小さいから…と前に出てきた論を思い出したりしたが、それならSFもミステリーも同様っちゃ同様なわけで、市場規模が小さくてもそこに文化的背景があれば評論家が存在する芽はありそう。まあつまり現在だとライトノベル業界にそんなものはないという話な訳だけど

2020-09-21 14:25:59
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

ともあれ、これも難しい話で、SF・ミステリ界隈になぜあれだけ多くの評論家、ライターがいるかと言えば、原稿料は安くとも(SFマガジン・原稿料で検索しよう)、そのジャンルの専門家という名誉が報酬として与えられている……と考えられるからです。 twitter.com/mEGGrim/status…

2020-09-21 14:34:07
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

一方でライトノベルには、「売上」=「若い読者の支持」以外の別の基準を作ることを拒否し、「専門家様がなんと言おうが、読者が面白いと思ったものがいい作品なんだ!」という、これはこれで、大変健全な姿勢があるように思うんですよね。

2020-09-21 14:37:56
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

だから、ライトノベルが、その姿勢を守るため(話の単純化のために業界に一貫した考えがあるように書いてしまっていますが無論そんなものはない、というのは念のため)自前の評論家、ライターを持たないという選択をするのも、それはそれで十分合理的だと思うので、私の思考はいつもここで止まるのです

2020-09-21 14:42:02
MAEJIMA Satoshi @MAEZIMAS

若干、筆を滑らせると、だから『このラノ』で毎回毎回、「協力者」と「一般投票」の割合や重み付けで議論が起こるのは、結構、本質的な問題だとも思っているんですよね……。ライトノベルに専門家という権威を認めるべきなのか、必要なのか、という話なわけで……。

2020-09-21 14:52:50