【山を降りて】福間健二 #k2fact275

11月5日から14日まで。雑誌の原稿など、もう年末気分。回顧ということをさせられる。では、と思った。「そうだったかもしれない過去」を振り返ってみよう。「現代詩手帖」年鑑号に「展望」を書くために次々に読んだ詩集、アメリカの大統領選挙のニュース、そして最近凝っている音楽関連のことなどで、頭はずっと忙しかったが、毎日、これを書くときだけはのんびりした気がする。10のだれかが歌う「貧乏な詩人よ、働こう。」はアポリネールの作品「毛虫」から。 音楽は、映画『メーキング・オブ・モータウン』を見てからモータウン熱がぶりかえしているので、The Supremes 「Baby Love」。 https://www.youtube.com/watch?v=Yd43nWkgUzg
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福間健二 @acasaazul

なんだろう。ひとりでいるためのためらいを分解した。平地の、何分かの警察。語られたこと。本当に起こったのかわからない。戻りたくなかったのに。だれかに練習させるために。どこに。そこに、例によって蓋をするのを忘れた求愛の箱のそばに。悲しい結末なら慣れている。(山を降りて1)#k2fact275

2020-11-05 17:45:01
福間健二 @acasaazul

最初の、三人の旅。少しずつ毒がしみこみ、よい枝と思った共感線もそれほどつよくない。ライターを探すように。表現することとの落差、いつ深刻になるか。ハラハラしていると手続き、書き写した曲、一番おいしい部分から。何度も底が見える。ちがうと思ったときはもう遅い。(山を降りて2)#k2fact275

2020-11-06 11:44:54
福間健二 @acasaazul

腰を大事に。バッハはそれを妻に練習させるために書き写していた。十一月の知りたいことを隠され、愉快な仲間が来ても来なくても。空気が乾いている。皮膚が痒い。何が出ようとしているのか。目的の、楽園からの娘たちはベートーヴェンだ。打て。感動させろ。いまからでも。(山を降りて3)#k2fact275

2020-11-07 20:46:07
福間健二 @acasaazul

あと一歩の、群島のはたらき。労働ということではない。ここ、宇宙のここで人を抱きしめる。そっと、やさしく、だよ。皮膚の使い方。むかしぼくはどうした、こうしたという人が悪い人とはかぎらない。遠くから振りかえった林。鈴の音がして悲しい果実を食べている鬼がいる。(山を降りて4)#k2fact275

2020-11-08 23:08:07
福間健二 @acasaazul

連れだしたくても連れていく場所が思いつかない。現在性の露出もいまの季節では、というトリちゃんの町は、行くバスが一日に一本だけ。たぶん曇っている。青い袋に入れて抱くのでは落ち着かない。人が思うこと。その人の内側の、かわいい動物が寝ている空き地。その動物を。(山を降りて5)#k2fact275

2020-11-09 10:37:28
福間健二 @acasaazul

それとも、夜を。だれかの背中と枕。あればいいけど、なくても眠れる。ラグビーボールほどの石を抱いて岬に立つのだ。目を閉じる一般市民。モデルとしてだが、星型を食べる禍々しさ、出きれない芽を死なせないための心配など。上手にできた摘出のあとは、だれでも楽天的だ。(山を降りて6)#k2fact275

2020-11-10 09:57:53
福間健二 @acasaazul

人生とは、こうだ。少年として柵をこえ、薄暗がりの自分よりもわかりにくい原型の腕と脚を組み合わせる。なるのだ。濡らした靴でなにか訴える労働者に。訴える。まだ攻撃じゃない。やがて山の娘との直接交渉。その身の上と可能性はもっと下の方で咲く花と入れかわる。(山を降りて7)#k2fact275

2020-11-11 16:49:43
福間健二 @acasaazul

だれかと入れかわって入れかわったままのつもりだった。驚いたか。ロックンロール少年、祝福なしで柵をこえて五十代、六十代も銀色の大きなラジカセで主張することがあるとは。行く雲に告げる。頭で思うこと、体で感じること、その落差を。やっと気づいた愛のように。(山を降りて8)#k2fact275

2020-11-12 15:08:00
福間健二 @acasaazul

見つからない書類。頭痛。でも命令されていることの大筋はわかって、それをしないために、さまざまの課の椅子にふんぞりかえる者たちへの挨拶の順番を待ち、待ちきれずに好きな景色を描いて歩いた。田んぼと畑。ゆうめいにならなくてよかった。みなさん、そうなんですよ。(山を降りて9)#k2fact275

2020-11-13 09:48:04
福間健二 @acasaazul

バス停の人の列を見てホッとした。だれかが歌う。貧乏な詩人よ、働こう。気がつけばトリちゃんのいれるお茶を飲み、トリちゃんが首や胸にかじりつくのがくすぐったい。何度も置きわすれた箱の口はトリちゃんの手でふさがれて、この静かな夜。黙って立っていればいいのだ。(山を降りて10)#k2fact275

2020-11-14 09:55:45