映画レビュー「魔女見習いをさがして」 コンセプトは興味深いが…

現在公開中のアニメ映画「魔女見習いをさがして」のレビューです。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして謎の三つの綿毛が象徴的に描かれ、三人を象徴したそれが出会いに繋がるという、元々魔法じみた現象からこの映画は始まっている。 ハッキリ言って好みの問題だが、私はまずこの導入部が全然「乗れなかった」のである。

2020-12-06 06:41:38
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私がハリウッドの脚本術を基準に語るのは、私自身が脚本のノウハウ、研究に関してはハリウッドが世界で最も発達してると感じてるから。 日本は脚本術に関する書籍、実際の作品を見てもかなり遅れていると感じている(勿論差があるのは脚本だけじゃないのだが)

2020-12-06 06:41:38
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「ハリウッドの脚本術」と言っても別にハリウッド映画専用の作劇術ではなく、根幹的な作劇理論なので、日本のアニメや漫画に適用出来ないなどということはない。 むしろ面白い物語を書きたい日本のクリエイターは率先して勉強していると思う。

2020-12-06 06:41:39
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

だから、私が「ハリウッドの脚本術を鑑みて」と言う時、それは「ハリウッドナイズしろ」という意味ではなく「技術的に優れた理論、観点を導入してそこから考える」とスタンスを表明しているだけなんである。 これが、アニメファン等には納得いかないと思う。

2020-12-06 06:41:39
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しかし例えば「若おかみは小学生!」のように、ハリウッドの定石的とは言い難いものの物語として高いレベルで独特な形になっている作品もある。それは「ハリウッドの定石」を知っているからこそわかる「価値評価」なんである。

2020-12-06 06:41:39
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私が「魔女見習い」で出した代案(恋はデジャブ等の主人公覚醒型)は、ハッキリ言って実際のフィルムのコンセプト通りとは言い難い。むしろ別物になると言ってもいい。 しかし、その方がより大人の観客層が納得出来る物語になるだろう、ということで言っているのである。

2020-12-06 06:41:39
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ブレイク・スナイダーが「大きなウソは一つまで」というルールを提示している。ウソが増えれば増えるほど論理的な観客は冷めていき、感情移入出来る人は少なくなっていく。最後は幼児しか楽しめない奇想天外なものになる(行き過ぎればアートになるかもしれないが) pic.twitter.com/ARy7vvmhat

2020-12-06 06:41:40
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「魔女見習い」の問題点はここなのである。 『この作品がどこまでを❝ウソ❞としているのかがわからない』 どれみ本編でも感じた「論証の適当さ」あるいは「魔法の定義のあやふやさ」がしっかり引き継がれている。

2020-12-06 06:41:40
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

現実を舞台にして奇跡を、魔法の実在を信じさせたいのであれば、それまでの過程は徹底的にリアリスティックに描き、最後の最後で一つだけ大きな奇跡を出す、大人の観賞に耐えうるものにするならば、そのくらいがちょうどいいわけである。 pic.twitter.com/n3730HTPie

2020-12-06 06:41:41
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

映画の冒頭で幼少期の主人公達が視る「どれみ達」は影絵で、映画のラストで幼少期の主人公達の幻影がどれみ達の仲間入りを果たす。幻影だったどれみ達はアニメ本編と変わらぬ姿として実体化して映画は終わる。 描きたいことはわかるけど、行き過ぎじゃないだろうか。 pic.twitter.com/aWKJuCDR1l

2020-12-06 06:41:42
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

誰しも心の中に魔法がある、少しの奇跡が現実にはある、どれみ達はあなたの心の中に居る。要はそういうことが言いたいのであろう。 しかし、私はこの「ウソまみれの論証」では、心のなかにどれみを見出すことは出来なかった。

2020-12-06 06:41:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私が提唱していた「ハリウッド流のやり方」は、観客の心の中になるべく信じられる「魔法」を作り出そうとするやり方なのである。 まあ好みの問題といってしまえばそれで終わりであろう。完成フィルムで納得する人も居ると思う。どちらが正しいと言い切るつもりはない。

2020-12-06 06:41:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ただ、完成品は非常にごく一部の限定的な層にしか刺さらないのは間違いないと思う。 元々そういう層を想定した作品だと言われたらそれでおしまいだけど、私はもっと多くの層に投げかけることの出来る可能性を秘めたコンセプトだったと思う。

2020-12-06 06:41:43