【本当にあった追放もの】その男の名は「范雎」、今より2千数百年前、春秋戦国時代も終わり頃

まぁ昨今は「追放モノ」というのが流行りだそうですね。 すごく優秀なのに、集団から偏見で追い出され、その後他のところで立身出世し、元いた集団が自分がいなくなったことで危機となり、助けを求められるも「もう遅い!」と言って拒絶するというカタルシスが受けているんでしょうか。
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SOW@ @sow_LIBRA11

作家のはしくれでございます。「戦うパン屋と機械じかけの看板娘」(HJ文庫)全10巻。「剣と魔法の税金対策」(ガガガ文庫)全6巻「機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE(ストーリー担当)」ガンダムエースにて連載中です!

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「桶に入った草」でした。 馬や牛に与える飼い葉です。 唖然とするショカに、范雎は言います。 「腹いっぱい食え、皆の前でな」 各国要人の前で、魏の国の使者たるショカを馬扱いすることで、魏の国の面目を叩き潰したのです。 拒めないショカはなきながら飼い葉を喰らいました。 pic.twitter.com/SGDMeCCIhW

2020-12-28 00:29:58
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「桶に入った草」でした。 馬や牛に与える飼い葉です。 唖然とするショカに、范雎は言います。 「腹いっぱい食え、皆の前でな」 各国要人の前で、魏の国の使者たるショカを馬扱いすることで、魏の国の面目を叩き潰したのです。 拒めないショカはなきながら飼い葉を喰らいました。 pic.twitter.com/SGDMeCCIhW

2020-12-28 00:29:58
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しかし范雎の逆襲はこれで終わりません。 「秦の国と友好を結びたくば・・・俺を殺しかけたあの魏太子を連れてこい。ただし、“首から下はいらん」と告げます。 つまり、「お前の国の王子を、お前の国の者が殺し、その首を捧げろ」ということでした。 「断れば、滅ぼす。秦軍の総力で魏の国を滅ぼす」

2020-12-28 00:31:41
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魏の王室は真っ青になりーーませんでした。 むしろ、「王子一人の首でいいなら」とさえ考えます。 それくらい秦国は強かったのです。 当時、秦国には白起というチートに強い将軍がいました。 どれくらい強いかと言うと、ちょっと前に、魏が二国と同盟組んで挑み、13万人ぶち殺されたくらいです。 pic.twitter.com/V3pK82vbH8

2020-12-28 00:37:53
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自分の親や兄弟友人知人に殺されそうになった魏太子は、 「なんで俺が范雎なんかに殺されなきゃいけないんだ!」と、泣きながら隣国の「趙」の国に逃げます。 この国には「平原君」という、戦国四君と称されるほどの王子がおり、「わかった、俺が秦王に言って止めてもらうよ」と言ってくれました。 pic.twitter.com/TWpXgqhDtk

2020-12-28 00:41:07
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当時の秦の王様は、昭襄王(昭王)でした。 「キングダム」に出てくる、嬴政のひいおじいちゃんですね。あの王騎将軍が心から忠誠を誓った相手で、名君と知られていました。 話せば聞いてくれるだろうと、平原君も思ったのですが。 答えは「NO」でした。 pic.twitter.com/EJDaSZfHnL

2020-12-28 00:44:51
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昭王「え、だって、俺のかわいい范雎にひどい目にあわせたんでしょ? 殺さなきゃ。断るなら、滅ぼさなきゃ、その国」と、にっこり笑顔で返され、 説得に応じた平原君まで幽閉されてしまいます。

2020-12-28 00:45:57
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范雎、めちゃくちゃ優秀でした。 歴史家の中では、「范雎がいたからこそ、秦は天下統一できた」と言うほど、優れた政治家だったのです。 その彼を辱めた以上、秦国が全力を出すのは、もはや決定事項だったのです。

2020-12-28 00:47:18
SOW@ @sow_LIBRA11

「魏の王子の首よこさないなら魏の国滅ぼすよー」 「逃げ込んだ魏の王子を匿うなら、趙の王子の平原君も殺すよ。あとついでに趙の国も滅ぼすよー」 と、ガチモンの警告が出されます。 范雎一人の復讐に、大陸の大国が動いたわけです。

2020-12-28 00:48:43
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最終的に、魏太子は、「もう逃げられない」とあきらめ、自分で自分の首を斬り、事態は収まります。 まぁかようにこのほど、「追放」系ジャンルで、おそらくこれ以上かました人物は他にはいないでしょう。 国家を揺るがしたわけですからね。 こういう人が「実在」するのが歴史の妙味。

2020-12-28 00:53:19
SOW@ @sow_LIBRA11

ちなみに范雎がどれくらいの権力を持っていたかと言うと、先に申し上げました、「最終的に百万人敵を殺した」な、リアルミリオンジェノサイダーな白起。 彼を政治的謀略で抹殺したくらいです。 チート武将を超える、チート政治家だったんですな。 pic.twitter.com/WPvAjAtZmy

2020-12-28 00:54:51
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この范雎の晩年は諸説あり、「これ以上権力握り過ぎたら自分が危うい」と、適当なところで引退し、穏やかな余生を過ごしたとも言われますが、もう一個説があります。 誠実な彼は、「恩はメシの一杯でも返す」をモットーとしており、かつての自分の恩人を、将軍として引き立てました。 pic.twitter.com/W5GAN5YVgc

2020-12-28 00:59:11
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この時の恩人を、白起亡き後の後釜にしたところ、現れた廉頗にとてつもない大敗をしてしまい、「推薦者も同罪」の慣例があったため、その敗戦の罪を問われ、ともに殺されたという説もあります。 pic.twitter.com/LMcW9tNBPd

2020-12-28 01:02:30
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SOW@ @sow_LIBRA11

こう見るとおもしろい構図が成り立ちますね。 范雎の死の原因となった将軍廉頗、 その廉頗は以前に政治力に勝る趙括に将軍職を奪われた、 その趙括は白起に40万の兵ごと殺される、 その白起は「殺しすぎた」ため范雎に謀略で殺された。 ぐるっと一周します、 こういうのも、因果応報というんですかな。 pic.twitter.com/ZSr4gwWuel

2020-12-28 01:12:12
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