『日本近現代建築の歴史 ー明治維新から現代まで』発売にあたって
- makawakami
- 1625
- 2
- 0
- 0
21/04/22,W刊行記念として饗庭伸×日埜直彦のトークイベントがありました
以下、著者によるツイート
来週には刊行される拙著『日本近現代建築の歴史』について、少しプロモーション的なツイートをさせてください。長文になりますが、まぁ滅多ないことなのでご勘弁を。
2021-03-03 17:27:43拙著『日本近現代建築の歴史 ー明治維新から現代まで』が刊行されます。タイトルの通り、明治の西洋式の建築導入以来、現代に至る日本の建築の歴史の全貌を描く本です。以下スレッドで概略を記します。重い本ですが、簡明を心がけました。ぜひ手に取ってみてください。 amazon.co.jp/dp/4065228670/…
2021-03-03 17:27:59既存の日本近代建築史の記述は半世紀ほど前で途切れています。70年代に日本近代建築史の通史がいくつも刊行され、一種のブームでしたが、それ以降アップデートは滞っていました。そのギャップを現代につなぐのがこの本の眼目です。今の建築の状況がいかに生まれたのか、そこから見えてくるはずです。
2021-03-03 17:28:1370年代で途切れているのを現代に繋ぐだけなら、それ以後を書き継げば良さそうなものですが、どうもそういうふうにはいかない。というか、おそらくまさにそうできないからこそアップデートが滞っていたのではないかと思います。70年頃を境にその前とその後はだいぶ様相が違うのです。
2021-03-03 17:28:27明治維新以来100年の節目が1970年になるわけですが、本書の第一部:国家的段階はそれ以前、第二部:ポスト国家的段階はそれ以後を扱います。国家的段階の建築において、国家は実に強い意味を持っていました。その強さは以後を生きる我々にはなかなか想像し難いほどのものでした。
2021-03-03 17:28:39既往の日本近代建築史は、西洋式建築の導入の動機が当初不平等条約の改正にあったことを明確にしません。またいわゆる様式論争から伝統論争に至るまで、たびたび「日本の建築」というテーマが問われますが、なぜそう問うたのか明確にしません。こんなふうに国家の存在は正面から扱われませんでした。
2021-03-03 17:28:51おそらく建築史家は、建築家が、モダニストも例外なく、国家に奉ずる存在だったことを戦後民主主義的な彼らの視野において認めがたかったんでしょうね。でも興味深いことに丹下健三はそこを有耶無耶にしませんでした。このことひとつとっても、やはり丹下さんは卓越した存在です。
2021-03-03 17:29:01理念的に国家が問われていただけではありません。高度経済成長期まで建築家が扱う近代化した建築はいわば例外的なものでした。国家が西洋式建築を建て始め、その周辺の政商がそれに続き、資本主義の成長とともに裾野が広がっていく、その中心に国家はいて、建築家の活動はその領域に限られていました。
2021-03-03 17:29:14この状況が高度経済成長期に変化します。近代建築の社会全体への普及とともに、国家の比重は現実的に低下していきます。この過程で、国家的段階の構図は形骸化してきます。建築家と国家の結びつきは解けました。そうして70年以後の状況、拙著がポスト国家的段階と呼ぶ状況が具体化してきます。
2021-03-03 17:29:3470年代の通史ブームはこうした状況の変化において、それ以前の歴史を総括することを目指していたのでしょう。『日本近代建築史再考 ー虚構の崩壊』はその代表になります。しかしその議論の足場となるポスト国家的段階の状況はまだ不確かで、国家的段階の相対化は十分完遂されませんでした。
2021-03-03 17:29:45そうして二つの問題が浮上してきます。まず国家的段階における国家の存在の重さを的確に見定めること、そしてポスト国家的段階における国家の不在がもたらした状況の具体を見定めることです。第一部の主題が前者、第二部の主題が後者です。
2021-03-03 17:29:53なにを念頭において建築を考えれば良いのか、基軸が失われ、拡散しました。だから我々は「建築の根拠」をたびたび問うているのです。「建築の根拠」なんて戯言?そうかもしれませんが、まさにそう言う人が、例えば資本の論理を国家に代えて建築の根拠に据えているのです。それは当然のことでしょうか?
2021-03-03 17:30:03野武士世代の建築家は、建築の可能性についてそれぞれの確信を掘り下げていきました。その確信は個人的なもので、だからその射程に限界はありましたが、小さなものでもそれが具体化すると、そこから発展していくテーマが見出されました。そうして現代の日本の建築家の姿勢は育まれました。
2021-03-03 17:30:13国家が建築の根拠となり得ない状況のなかで、建築の状況は分断と拡散に向かいます。それがおそらく我々の現代の基本的条件です。バブルがあり、ポストバブルがあり、災害と復興があり、そうして現在があります。いろいろなし得たことはあるけど、でも何かがうまくいっていないという実感もある。
2021-03-03 17:30:25そもそも建築が国家を基軸とするなんてかなり変なことです。日本特有の歴史的条件からくる特殊なバイアスですが、しかしそういう時代がかつて確かにあった。もっと多面的に、雑食的に、建築はあらゆることと絡み合うはずですが、国家は特権的な位置を占めていました。この構図はシコリとして残った。
2021-03-03 17:30:36建築の根拠をなにか特定のものに見出そうとする変な癖はこのシコリなのでしょう。遡れば明治に西洋式建築が国家によって導入された強引さがこのシコリの起点です。それが現代まで繋がっている。そういう意味で、明治はあまり遠くなっていないのです。
2021-03-03 17:30:48逆にそのぶんだけ我々は先鋭化を躊躇しない。だから海外の建築家は日本ではなんであんな素っ頓狂が建つんだと訝しむ。そうして先鋭的な現代日本の建築家の国際的な高い評価があり、他方でベースラインがあやふやだから底無しの低劣化も時にまかり通り、また出鱈目な街並みが当然のようになっている。
2021-03-03 17:30:58結局、多くの高い水準の仕事はあれど、ごく一般的な状況としては建築の貧困は認めざるを得ない、という分極化が起きている。現代の建築の色々うまくいっていない感じはぼんやりしたものではなく、厳然とした歴史の産物です。こうした歴史を直視した上で、我々はなにを考えていくべきか。
2021-03-03 17:31:07長過ぎましたね。失礼。あれこれ触れられてない事項もあるけど、この本なりに大構図はくっきり描いたはずです。420ページ、記述の密度は高くてゴリゴリです。ただ文章自体は簡明です。そんでお値段税別2250円。お買い得ですぜ。
2021-03-03 17:31:514/22 B&Bで日埜直彦さんとトークです! 「この国の都市と建築の実像を問う」 『平成都市計画史』(花伝社)『日本近現代建築の歴史』(講談社)W刊行記念 bookandbeer.com/event/20210422…
2021-03-18 15:24:53