鏡の国の王子さま(仮)・現在進行形共同作品(非公式)古い順1
「なんだ、グルド・・・こんなところで寝やがって・・・」 グルドは、よく日が当たる窓際の椅子ですっかり眠っているのだった。恐らく休憩時間なのだろう・・・と判断したギニューはグルドを起こさず、鳴り止まぬ妙な音のするテラスへと出てみたのだった。 #sarass
2011-09-12 17:31:30テラスに出た途端、ギニューは額に手を当て、大きなため息をついた。「リクームまで寝てやがる・・・」妙な音の犯人はリクームだった。それも、ただのいびき・・・思いっきり大の字に寝転んで、夢の世界に浸っている姿に呆れ返った。 #sarass
2011-09-12 17:31:57二人を起こさず、部屋を去ろうと踵を返し、テラスから部屋へ戻ろうとしたその時だ。ドーーーン!!!「な、なんだ??」テラスから聞こえた爆音に瞬時振り向いた。 #sarass
2011-09-12 17:33:08「お、王子じゃないか!!!」なんと、今までいなかったはずの王子がリクームを下敷きに倒れているではないか!何がどうなって王子がここに倒れているのかは分からない。 #sarass
2011-09-12 17:34:06外から壁を伝ってよじ昇るということは王子には出来ないだろうし・・・(空から降ってきたのか?いや、今はそんな事はどうでもいい!まずは王子の状態だ!)「おい!王子!!大丈夫か?!」 顔をペチペチと数回叩いてみるが、唸るだけで返事はない。 #sarass
2011-09-12 17:34:50「意識が無いのか・・・これはまずいな・・・」いつもは冷静沈着のギニュー。そんな彼でも紫色の肌が少しばかり青ざめた。王子が長い髪を三つ編みにしていることや、額や耳に飾りをしていることは多少気になったが、そんな余裕は無い。もしかしたら、一刻を争う事態かもしれないのだ。 #sarass
2011-09-12 17:35:32「おいっ!!貴様らー!!起きろ!!!」しかし王子の下敷きになっているリクームは、それでもまだ、幸せそうにいびきをかいている。2人のいびきは部屋中をコーラスでいっぱいにするだけで、一向に目を醒ます気配はない。 #sarass
2011-09-12 17:36:17「ちっ!役に立たんヤツらだ・・・仕方ない・・・」ギニューは三つ編みの王子を乱暴に自身の肩へ担ぎ、慌てて救護室へと運んで行った。 #sarass
2011-09-12 17:36:31男の怒鳴り声と、それに畏縮する複数の声が入り交じって聞こえる。(相変わらず騒がしいな・・・)と、思った。(全く、アイツらときたら・・・)声の主の名前を言おうとした。(・・・ん?アイツら?アイツらって・・・誰だ?) #sarass
2011-09-14 12:10:42思い出そうとするが、手のひらから砂がこぼれ落ちるように消えていく。(分からない・・・それに・・・私は・・・私の名は・・・)突如、得体の知れない恐怖に駆られた。出口の無い闇に突き落とされた気分だ。嫌だ!と、思った瞬間。凄い力で揺り起こされた。 #sarass
2011-09-14 12:11:41目を開けるとそこには、見たことのない男がこちらを凄い形相で睨んでいた。何やら一言叫ぶと、再び身体を揺さぶられた。「や、やめろ!加減と言うものを知らないのか!?」あまりの痛さに、思わず叫んでしまった。男は驚き、掴んでいた手を離すと、また話し掛けてきた。 #sarass
2011-09-14 12:12:15「・・・?それは私の名前か?」男は自分のことを『ザーボン王子』と呼んだ。全く聞き覚えのない名前だ。男は更に驚きの声を上げ、今度は自分の名前を名乗った。ギニューと言うらしい。だが、覚えがない。と言うより、自分の名前も過去の記憶すら思い出せないのだ。 #sarass
2011-09-14 12:12:45「は?お前は"ザーボン王子"だろうに。全く何を寝ぼけてるんだか・・・」 とギニューはため息をついた。 「それより、王子・・・また趣味が増えたのか?今度はコスプレか?とっとと、これに着替えろ。」 そういうとギニューは王子の普段の服をテーブルに置いた。 #sarass
2011-09-17 20:49:11「それと、お言葉だが、その装飾品だ。余計チャラチャラして見えるぞ?王の怒りに触れても困るだろう、三つ編みも外しておいた方が無難かと思うが。」ギニューが救護室を出て行くと、早速用意された服に着替え、三つ編みの王子は装飾品を外し、三つ編みを解いた。 #sarass
2011-09-17 20:50:09ギニューから『ザーボン王子』と呼ばれた男は、自分自身の記憶の破片を探すべく、救護室から廊下に出た。 目の前に広がったのは紅い絨毯の敷かれた長い廊下だった。 真っ直ぐに伸びた廊下をゆっくりと歩き始めた。 壁面には彫刻が掘られており、所々に絵画が掛けられている。 #sarass
2011-09-17 21:34:50それらを眺めながら、宛も無く長い廊下を歩き続けた。 しばらく歩くと、ふと、甘い香りが漂ってきた。 バニラのような、ふんわりと優しい香り。 自分がどこに行くべきか解らない『ザーボン王子』は誘われるままその甘い香りがする方へ行ってみることにした。 #sarass
2011-09-17 21:35:04一方、ようやく眠りから覚めたグルドは、目の前のテラスを見て驚いた。ガラスの破片まみれになったリクームが、まだ気持ち良さそうに眠っていたのだ。「お、おい!起きろよ、リクーム!」グルドが慌てて揺り起こすと、リクームは暢気にも大欠伸をして目覚めの挨拶をしてきた。 #sarass
2011-09-14 12:13:45「おはよ~・・・ふあ~ぁ・・・よく寝たなぁ~・・・」 大欠伸を何度もしながら身体についているガラスを落とすリクームの様子を見るグルド。 #sarass
2011-09-17 22:21:31「一体、何があったんだ?」とリクームに訊くが、グルドが起こすまで眠っていたのだ。分かるはずもない。首を傾げて考えていたリクームは、すぐに笑みを浮かべると、脱兎の如く逃げ出した。脇にはグルドを抱えたまま。 #sarass
2011-09-14 12:14:15「わっはっは~!なんかヤバそうだからな!とりあえず、ここは逃げるが勝ちだ!」猛スピードで走っていると・・・ぐぅぅぅ~「あっはっは!なんか腹減っちゃったな~!城の外に逃げようかと思ったけど、行き先変更!」リクームはグルドを抱えたまま走り続け、庭園の裏を抜けて行った。 #sarass
2011-09-17 22:23:33着いた先は、温室のようだった。リクームは中へ入ると、グルドを地面に下ろした。「何だ?ここは・・・」色々な実をつけた植物があちこちに植えられていた。あまり見かけないものばかりだ。「へぇ・・・」珍しげに眺めるグルドを、リクームは不思議そうな顔で見ていた。 #sarass
2011-09-14 12:14:48