GHOSTAPPLE_LaPucelleSyndrome 第一話「硝子職人の悲哀-EXODUS-」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#GHOSTAPPLE_LPS 「後……君がウィザード級のハッカーで、ビースト級のプログラマーだからかな」 「ビースト級……！？」 流石のTACも、その言葉には反応した。 ビースト級プログラマー。プログラマーの中でも最上位に存在し、日本国内でも僅か数人しかいないと言われている。 だがしかし。

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#GHOSTAPPLE_LPS 「ビースト級プログラマーは、武器輸出規制法で国外に出る事は―」 「……自由になる事が、そんなに悪い事ですか」 虚の声は、震えていた。しかしそれは先程までの演技では無く、本当の感情……怒りと悲しみによるものだ。と、かせんは楽しげに笑う 「あっはっは！悪い訳無いじゃん！」

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#GHOSTAPPLE_LPS 「え……？」 その言葉に呆気に取られる二人。と、かせんは何時もの調子で続けた 「だって虚ちゃんも人間だもん。しかも可愛い女の子だもん。そんな子が兵器な訳無いでしょ」 「でも……」 「だから、お姉さんは虚ちゃんがこの国を出たいって言うなら手伝うよ」 かせんはそう言った

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#GHOSTAPPLE_LPS あまりの台詞に、呆気に取られた虚。と、TACはかせんに聞く 「……依頼主の秘密は探らないのでは？」 「それははんちょ〜のポリシーだからね。私は”可愛い子には旅をさせよ”がポリシーだよ」 「そんな理由で……」 再び溜息が出るTAC。と、かせんは再び虚に聞いた 「んで、何処に？」

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#GHOSTAPPLE_LPS 「……マゴニアインダストリアルです」 「成程、企業亡命ね」 第三次非核大戦後、力を付けた国際企業達はそれぞれが国から独立し、ある種の国家の様な力を手にした。当然国家に備わる権利は大体を有し、亡命もまたその一つである 「最近、プログラマーを広く募集していて……」

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#GHOSTAPPLE_LPS 「んじゃ、お姉さんから一つヒントをあげよう」 唐突にかせんはそう言って、指を一本伸ばした 「なんでマゴニアは、急にプログラマーを募集したと思う？」 「……え？」 キョトンとした表情の虚。と、TACは何かに気付いて答えた 「……最近、南極重工業が欧州シェアを占めましたよね」

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#GHOSTAPPLE_LPS 南極重工業。世界初の”脱国家”企業であり、世界最大のコングロマリットである。当然兵器産業も行っており、現在では欧州の兵器市場をほぼ独占している 「つまりもしかして……企業間戦争を始めるつもりでは？」 「はいTACちゃん正解！」 TACが言い切ると、かせんは指を鳴らして褒めた

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#GHOSTAPPLE_LPS 「ま、本当かどうかは知らないけどね？今のタイミングのプログラマー募集は戦争準備だよ」 「そ、そんな……」 小さく呟く虚。その表情は、何処か絶望に似ている 「折角戦争に関係無い仕事に着けると思ったのに……」 「残念だけど、そうそう甘くは無いよ。世の中」 かせんは言った

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#GHOSTAPPLE_LPS 「私はさ、可愛い女の子には幸せになって欲しいのよ。だからね？亡命したいなら止めないし、応援してあげる。少なくとも、それが幸せならね？でももしそうじゃないなら……」 そこまで言って、かせんは口を紡ぐ。何故なら― 「……これはこれは、マゴニアは随分なお出迎えだねぇ」

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#GHOSTAPPLE_LPS 到着した西第二港には、一隻の潜水艦が停泊していた。そして地上には、二個小隊規模の歩兵と― 「……MMBT-89S、最新型の多脚戦車が二台ですか」 「こりゃ、南重工との戦争も強ち冗談じゃないっぽいなぁ」 明らかに亡命者護衛にしては、過剰な戦力が存在していた 「んで、どする？」

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#GHOSTAPPLE_LPS かせんは虚に聞いた 「亡命する？それとも止める？」 暫くの沈黙。そして 「……止めます。自由が無いのは嫌ですけど……戦争の道具になるのは、もっと嫌ですから」 その言葉は、虚が振り絞った本心だった。そしてそれを聞き、かせんは嬉しそうに笑う 「よし、よく言った虚ちゃん！」

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#GHOSTAPPLE_LPS そして端子を取り出し、片方を繋いでTACに投げた 「TACちゃん！これ繋いで！逃げるよ〜！」 「うわっ！」 「きゃっ！」 返事を待たず、バンを急発進させるかせん。慌ててTACが端子を項のコネクタに繋げると、慌てふためく兵士達と動き出した多脚戦車が見えた 「多脚戦車、来ます！」

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#GHOSTAPPLE_LPS 「はいはいっと！」 かせんはそう言い、コンソールのボタンを押す。と、バンの後部ハッチがせり上がり…… 「菱川の30mm連装エリコン砲だよTACちゃん！撃てーっ！！」 「了解！」 TACは有線でバン後部のエリコン砲を撃ち、多脚戦車を牽制……しようとしたのだが。全て明後日の方に

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#GHOSTAPPLE_LPS 暫しの沈黙の後、かせんはボソっとTACに聞いた 「……射撃補正プログラムは……」 「……元同僚がガンナーだったので、必要無いと思って……」 再びの沈黙。と、虚が自分のコネクタから伸ばした端子をTACに有線する 「今応急で作ったプログラムですが、使える筈です！」 「ナイス！」

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#GHOSTAPPLE_LPS 一瞬視界が無くなるTAC。しかし直ぐに視覚素子は再起動し、今度は多脚戦車の関節に30mm高速徹甲弾を当てられた 「凄い……！当たる！」 「牽制だけでいいからね、TACちゃん！」 「了解！」 TACは頷き、もう一発。と、不意に二台の多脚戦車は動きを止めた。そして、潜水艦に帰って行く

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#GHOSTAPPLE_LPS 「かせんさん！」 「大丈夫、見えてる」 端子を引き抜き、かせんを見るTAC。と、バンの頭上を二機のヘリが通過した 「県警だよ。多分バレてたんでしょ、彼奴等。だから乗らなくて良かったね、虚ちゃん」 そう言ってウインクするかせんに、TACも虚も笑うしか無かった

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#GHOSTAPPLE_LPS 所変わって、萬屋の事務所。その所長席に座るはんちょ〜は、とある者と電脳通信していた 「で、貴方の依頼通りにプログラマーの身柄を保護し、武器の密輸出しようとしてた運び屋の場所を教えたのよ？だから、ちゃんと支払いなさいよ」 「う〜ん……しかしねぇ……」 「何よ、不服？」

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#GHOSTAPPLE_LPS はんちょ〜の前に座る、一人の男。臙脂のジャケットに、薄い金のネクタイ。そして到る所に配されたトランプのダイヤマークが、この男のセンスを物語っている 「……私の可愛い可愛い”娘”を持って行ったのは君だし……」 「また始まった……あのねぇタチバナ。あれはあの子の意志よ」

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#GHOSTAPPLE_LPS はんちょ〜がそう言うが、タチバナと呼ばれた男は不満げだ 「だってお父さん聞いてないし」 「……はぁ、分かった分かった。黒木田に請求書は回すから」 そのはんちょ〜の言葉と同時に、電脳ロビーは閉じた。そしてドアが開き、かせんとTACが現れる 「ただいま〜」 「あら、お帰り」

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#GHOSTAPPLE_LPS 「どうだったかしら？初めてのお仕事は」 はんちょ〜笑顔でTACに聞いた。と、TACは少し逡巡してから返す 「まぁ……前職よりは安全ですかね」 そう言った時、かせんはTACの頭を撫でる 「んま、今後も宜しくね！TACちゃん」 かせんはそう言って、TACの拳を握らせて自分の拳と合わせた

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#GHOSTAPPLE_LPS 「……なんですかこれ」 「相棒の証。イエーイ！」 テンション高めなかせん。と、はんちょ〜はちゃんと報酬が入金されたのを確認し、二人目を抱き寄せる 「いよぉ〜し、今日はTACちゃんの初仕事を祝って、焼肉行くぞー！！しかも高い奴！！」 「やったー！！おかーさん大好きー！！」

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#GHOSTAPPLE_LPS そう叫び、はんちょ〜に抱き着くかせん。と、TACは前職の上司の厄介過ぎる性格を思い出し……溜息と共に、言うべき台詞を絞り出した 「……お母さん大好き」

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ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ ﾊﾟｯﾊﾟｯ

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と言う訳で第一話終了！！