「21世紀初頭の世界政治は、基本的にふたつのかたちで冷戦時代のそれとは異なるだろう」という日本語のややおかしなところ
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辻谷真一郎という、翻訳の指南書を書かれた人がいます。この人の特長は、専門が文学系ではなく医学系であること、あまり(多分)知られていないこと、そしてアン・シャーリーが最初に学校で授業を受けたアンドリュース先生並に口が悪いことです。それにしても、なんですかこの日本語は、みたいな感じ。
2021-12-30 22:12:28翻訳入門みたいな本は、小説の書きかたに関する本と同じようなもので、この人の場合はこうやってる、ぐらいにしか基本的には役に立ちません。つまり、参考になる部分しか参考にならない。
2021-12-30 22:12:54プロットをみっしり作って、毎日○字きちんと書いてる作家もいれば、結末しか考えてなくて、毎日仕上げるテキスト量もムラがある作家もいるでしょう。
2021-12-30 22:13:03で、辻谷真一郎は、以下のようなことを述べています。 ・「より+形容詞、副詞、動詞」は多用しない 「より深く理解する」は「理解を深める」に ・「これらの、それらの」よりも「この、その」 「これら6箇所の発電所」は「この6箇所の発電所」に
2021-12-30 22:13:41・比較に「~のそれ」を使うとかえってわかりにくくなる 「マレーシアの気候はインドのそれよりしのぎやすい」は「マレーシアの気候はインドよりしのぎやすい(マレーシアはインドよりしのぎやすい気候である)」に
2021-12-30 22:14:08ということを念頭に置いて、次の文章を考えます。 「21世紀初頭の世界政治は、基本的にふたつのかたちで冷戦時代のそれとは異なるだろう」 確かに意味はわかりますけど、どうも日本語として安定感がない。つまり、いかにも日本語以外のテキストを日本語化してみました、という感じがする。
2021-12-30 22:14:38たとえば、この「それとは」って必要ですかね。 そうすると、 「ふたつのかたちで」は「ふたつの点で」 「異なるだろう」は「異なるものになるだろう」 なので、 「21世紀初頭の世界政治は、基本的にふたつの点で冷戦時代とは異なるものになるだろう」
2021-12-30 22:15:27しかしどうも「基本的に」の位置と言い回しには、これでいいのか、という部分はあります。辻谷真一郎の翻訳法は「つまらないようには訳さない」「英語と日本語で、どの部分が強調されているかを統一して訳す」という点で、実に勉強になります。
2021-12-30 22:16:04