ブレヒト『アンティゴネ』の邦訳について
- MasahiroKitano
- 2024
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B1208 "Am Cocytus" はS1128のΚωρύκιαι(コリュキオン)をヘルダーリンが誤読したのをブレヒトが継承。Tは「冥府のコキュトス」と訳し、Iは「コキュトス」に「冥府のぬかるみの川」と注記するけれどそんな意味合いはない。I「コキュトスの浜で、恋人たちと座っていた」のだから、ここでは地上の地名。
2021-12-31 20:21:00B1238-9 "Sie wuschen schweigend ihn und legten ihn/ In frische Zweige, soviel übrig war" 下男たちがポリュネイケスの遺骸を埋葬する場面。T「集められる限りの若枝を集め」 I「残ってる若枝をすべて集め」残ってたり残ってなかったりするのはポリュネイケスの遺体。せっかくのグロテスクが…
2021-12-31 20:39:08H278では”(wir) Bereiten heilig Bad, und legen ihn In frische Zweige, so viel übrig war" S1201-2は" ἐν νεοσπάσιν θαλλοῖς ὃ δὴ ’λέλειπτο συγκατῄθομεν" 「残っている限り」はὃ で受けられて、複数の「枝θαλλοῖς」は先行詞にならない。ドイツ語でもübrig warで単数。Zweigeは複数。
2021-12-31 20:51:13Jebbの注釈、「ὃ δὴ = ὃ τι δήποτε で身体の多くが破損されていることを含意する」ソフォクレスでは火葬で、「一緒に焼く」συγκατῄθομεν のσυνにばらばらの遺骸を「かき集めて焼く」のニュアンスがこもっているらしい。
2021-12-31 21:00:22B1290-2 "Wir aber/ Folgen auch jetzt ihm all, und/ Nach unten ist's." T「我らもまた、あの男の後についてゆこう、あの世の底へと」 I「我らもやはり/これからみな王の後に従っていこう。/あの世への道だ。」 auch jetztは「今もなお」「この期に及んでも」だろう。C"even now" Ma "still"
2022-01-01 00:13:391292-4 "Abgehaun wird Daß sie nicht zuschlag mehr Uns die zwingbare Hand" T「我らを無理強いしたては打ち落とされて、もはや我らを打ちのめしはしない」I「我らを強制した手は、もう切り落とされて我らを/打つことはできぬ」 コロスを美化する傾向が強い。
2022-01-01 00:16:53「もう殴らないように」切り落とされるのは、uns die zwingbare Hand「私たちの縛られるべき手」なんだろう。両者ともunsをzuschlagと結びつけて「私たちを殴る」と理解している。また、「切り落とされる」を過去形にしている。
2022-01-01 00:54:10でもここは、「縛られるべき我々の手は、もう殴れないようにと切り落とされるのだ。」やろなぁ。 C "Our biddable hand / Never to strike again /Will be hacked off" Ma "Our violent/ hand shall now be cut off so that it shall not strike again."はzwingbarのニュアンスは異なるがそう理解。
2022-01-01 00:58:33B1294-5 "Aber die alles sah Konnte nur noch helfen dem Feind" T「あの女/すべてを悟りはしたが、ただただ敵を助けたばかり」 I「だがすべてを明察した彼女も/結局は敵を助けることになっただけだった」 逆接的で、「敵を助ける」のが悪いことになっているのは何故なのかしら。
2022-01-01 01:02:11普通に「すべてを見通した彼女は、ただただ敵を助けるしかなかった」でええやん。 正月にかかってしまったけれど、#ブレヒト 版 #アンティゴネ の検討は大体以上かしら。
2022-01-01 01:07:48間違えていた daß~mehrが副文で括弧に入れると、Abgehaun wird Uns die zwingbare Hand「縛られるべき手は、もう殴ることのないようにと、我らから切り落とされる。」かしらね。 twitter.com/MasahiroKitano…
2022-01-01 10:40:25最後 B1297-30"nimmer genügt sie /Hinzuleben, undenkend und leicht /Von Duldung zu Frevel und /Weise zu werden im Alter." T「だから何も考えずに生きのびたり/忍耐に忍耐を重ねたり、/悪逆非道へ走ったり、/年とってからやっと賢くなったり、/そんな余裕は、人間には決してないのじゃ」
2022-01-01 10:55:46I「何も考えずに安逸に暮らしたり、忍耐を重ねたり罪科に走ったり/老いて賢明になる暇などないのだ」 前提は「人生は短く見渡せば不幸ばかり」。でもどういう教訓なのかわからない これ「AしたりBしたり~」って文章ではなく「AしてBして~」って文章ではないの。人間の生き方についての教訓。
2022-01-01 11:00:59von Duldung zu Frevel und weise zu werden im Alterは「(邪悪を)黙認していたのが(自分も)邪悪になり、老いてから賢くなる」von A zu Bの文章。 #ブレヒト #アンティゴネ
2022-01-01 11:07:41K「時は短く あたり一面不幸が取り囲む。 だから、決して十分ではない、 思慮なしに安易に、 邪悪の黙認から邪悪そのものへと落ちる生き方をして、 歳を取ってから賢くなるようでは。」 hinleben のhinは下方への運動を示す。 さて、これを反映して明日でも紀要を提出しよ。
2022-01-01 11:29:30