新人賞で落選しちゃった、という読切マンガをネットで見た。これで落選するの?と驚いたー「何をするお話なのか」が分かるログラインの重要性

一発で「見たい!読みたい!」と感じさせるような一言の紹介。 「何をするお話なのか」が分かるもの。  それがログライン  _(:3 」∠ )_
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「貧乏な絵描き志望のイケメンと、望まない結婚を迫られているお金持ちの女の子」の組み合わせだけで、すでに強い皮肉があります。絶対に結ばれるはずのない二人をカップルにするのは『ロミオとジュリエット』の時代から続く鉄板 of 鉄板。たぶん人類は本能的に、こういう男女カップルのお話が大好き。

2022-02-05 21:43:25
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「沈む運命にあるタイタニック号で大恋愛をする」という部分にも、強い皮肉があります。私たちは恋愛にハッピーエンドを望むものです。人類は永遠の愛を夢見る動物です。でも、その舞台がタイタニック号なわけですよ。〝永遠〟から一番離れた舞台設定ですよね、沈むんだから。

2022-02-05 21:45:46

大衆が興味を持つものは、究極には4つしかない!

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19世紀末から20世紀初頭に活躍した新聞王ノースクリフ卿いわく、大衆が興味を持つものは、究極には四つしかないそうです。すなわち、犯罪、セックス、お金、食べ物。『タイタニック』のような大ヒットムービーを見ると、ノースクリフ卿の見識の正しさを感じます。この四要素が上手く盛り込まれている。

2022-02-05 21:47:14
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恋愛ドラマなんて、言ってしまえば若い男女が乳繰り合うだけです。が、人類はそういうお話が大好きなんですよね。『タイタニック』がヒットした理由の1つは、それが乳繰り合うお話だったからです。ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットの二人が乳繰り合うところを、みんな見たかったんです。

2022-02-05 21:51:24
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QT「冒頭とは、問いの形をしたエンディングである」──『ストーリーボードで学ぶ物語の組み立て方』p245

2022-02-05 21:59:24
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マンガの冒頭部分、ジャンプ作品は「主人公」をすごく重視している印象がある。「この主人公はこんなやつです!この人を好きになってください!」って感じ。炭治郎は家族のために炭を売りに行くし、デンジくんは金策に悩むし、潮火ノ丸は廻しをまいて電車登校する。

2022-02-05 22:09:15
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比べると、マガジン作品は「主人公がどんなやつか」よりも、「どんな状況に置かれているか」を重視しているイメージがある。状況設定の面白さで引きつけようとしている印象。『ブルーロック』のように、しばらく主人公が出てこない作品もある。もちろん、主人公が軽んじられているわけではないけど。

2022-02-05 22:11:51
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主人公のジャンプ、世界観のマガジン……という雑な括りをすると、『進撃の巨人』がマガジンだったのも分かる気がする。『進撃』は世界観が抜群に面白くて興味をそそられるマンガだ。第1話は(扉と見開きを見せた後)調査兵団が巨人と戦うシーンからストーリー本編が始まる。エレンの登場はその後だ。

2022-02-05 22:18:28
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こういう創作論・技術論は、一部のワナビからは蛇蝎のごとく嫌われる。ここで紹介したいのは、日本の伝統芸能の「守破離」の考え方。先人の発明した〝型〟をまずは完璧に使いこなせるようになるまで守って、それから型を破り、離れていきましょうという考え方だ。

2022-02-06 02:33:15
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QT「そりゃあんた、型がある人間が型を破ると〝型破り〟、型がない人間が型を破ったら〝形無し〟ですよ」――無着成恭

2022-02-06 02:35:15
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こういう技術論が嫌われる理由も分かる。創作者の自由な発想を奪う〝縛り〟のように感じるからだ。でも、たとえば俺が学んだハリウッド式の脚本術であれば、ホラティウスの時代から西欧で受け継がれてきた先人の〝発明〟が詰まっている。それらを無視するのは、車輪を再発明しようとするようなものだ。

2022-02-06 02:38:08
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電子レンジが発明されたばかりのころ、雑誌『暮らしの手帖』は辛辣な批判記事を掲載したという。電子レンジなんか使わなくても、蒸し器を使えば充分に食事を温め直せたからだ(ついでに当時の電子レンジの性能が悪かったという事情もある)。でも、使う前から発明品を食わず嫌いするのはもったいない。

2022-02-06 02:40:17
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創作論・技術論は、先人の〝発明品〟の詰め合わせだ。とりあえず使いこなせるまで使ってみて、それから「自分のやりたいこと」に役立つかどうかを判断しても遅くないと思う。今の俺は電子レンジを便利に使っているけれど、パスタを茹でるときはデカい鍋を使う。そのほうが俺好みの味になるからだ。

2022-02-06 02:41:54
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お話作りに〝正解〟はないし、ルールはない。創作論・技術論は、たんなる目安程度のものでしかない。航海するときのGPSやクロノメーターのような、頼りになる道具ではない。それでも、暗い海を進むときは、推測航法くらいはあったほうがマシだと俺は思う。

2022-02-06 02:48:25

オススメの創作術の教科書 & 読んで終わらないために

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Q. オススメの創作術の教科書はありますか? A. ブレイク・スナイダー『SAVE THE CAT』シリーズと、シド・フィールドの三部作が〝定番〟の教科書だと思います。またリンダ・シガー『ハリウッド・リライティング・バイブル』とロバート・マッキー『ストーリー』は、この分野の現代の古典。 pic.twitter.com/q6VgCXa88r

2022-02-06 10:51:55
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ホラーティウス『詩論』 →古代ローマの天才詩人による創作論。時代や文化圏を超えた普遍性があります。 ボグラー&マッケナ『物語の法則』 →スナイダーやフィールドの教科書が〝概論〟だとしたら、こちらは〝各論〟。理論というよりも、実践での小ワザがたくさん紹介されています。 pic.twitter.com/drMHRfxLS3

2022-02-06 10:54:49
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★応用編★ ブルックス『工学的ストーリー創作入門』 →ハリウッド式の脚本術を小説に応用するなら?という視点で描かれた本。小説は映画よりも自由でいいんだ!という気持ちになれます。 グレイバス『ストーリーボードで学ぶ物語の組み立て方』 →こちらはアニメ・マンガに応用するときの本。 pic.twitter.com/jdZawFYi89

2022-02-06 10:57:34
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攻略本だけ読んでもプレイしなければゲームは上手くならないし、教本だけ読んでも体を動かさなければスポーツは上達しません。たぶんお話作りも同じで、何よりも「たくさん書くこと」が大切だと思います。いきなり大長編は書けないので、まずは掌編や短編から始めるといいのではないでしょうか。

2022-02-06 11:01:39
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小説なら5,000~1万字、マンガなら8ページくらいの超短編から書き始めて、脳内の「物語回路」を鍛えると良いと思います。脳は臓器なので、筋肉と同様、使えば使っただけ鍛えられるはずです。ジャンプ編集部の『描きたい!!を信じる』にも、打ったピリオドの数だけ作家は成長すると書かれていました。

2022-02-06 11:04:37
Rootport🍽 @rootport

それから、〝写経〟は凄まじく効果的な練習方法だと思います。『ヒカルの碁』のほったゆみ先生は、好きなマンガのコマ割りと構図を写経して、ネームをリバースエンジニアリングする練習をしていたそうです。これをやると、流し読みでは気づかなかったお話の〝構造〟が見えてきます。

2022-02-06 11:07:37
Rootport🍽 @rootport

知人の作家の羽根川牧人先生は、デビュー前後に「好きな映画を勝手にノベライズする」という練習をなさっていました。これも一種の〝写経〟でしょう。ホラティウスの「ut pictura poesis(詩は絵のように)」という格言を地で行く練習法ですね。文章で視覚的な表現をする訓練になるはずです。

2022-02-06 11:10:55
Rootport🍽 @rootport

俺は学生時代に生物学専攻で(高解像度のデジカメがあるにもかかわらず)1年次にはスケッチを叩き込まれました。自分の手を動かさないと、構造を理解できないんですよね。昆虫の触覚にいくつ節があるかとか、ある部位から生えている毛の本数とか。写真では気づかないことが、手を動かすと分かる。

2022-02-06 11:16:49
Rootport🍽 @rootport

ネームや小説の〝写経〟も同じで、自分の手を動かすことで初めて気づくものが結構たくさんあります。

2022-02-06 11:17:46