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展示「しなかった」資料の解説!特別展「オホーツク文化ーあなたの知らない古代ー」

特別展「オホーツク文化 あなたの知らない古代」(横浜ユーラシア文化館:2021年10月16日~12月26日、大阪府立近つ飛鳥博物館:2022年1月15日〜3月13日)において、展示されなかった資料について、主催者である東京大学常呂実習施設の熊木俊朗教授による解説です。
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

「笠形」とした方が良かったですね。訂正します。

2022-01-21 08:17:51
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

実は、この1号竪穴というのは、擦文文化後期(12世紀前後)のものなのです。詳しい出土状況は不明なのですが、報告では竪穴に伴う扱いになっています。オホーツク文化期のものではと述べましたが、それならば9世紀末以前のはずなので、出土遺構とは年代的に大きなずれが生じます。さてどうしたものか。

2022-01-20 18:47:31
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

この遺物、論文や概説書などで取り上げられることは少ないのですが、その裏には、上記の矛盾の扱いが難しいことがあるのでしょう。実際、この特別展でも、同じ理由から出陳を見送らざるを得ませんでした。資料としては非常に希少で重要なのですが、惜しいですね。

2022-01-20 18:47:32
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

さて、年代的な矛盾の問題ですが、これを解く前提として知っておくべきことがあります。それは、この1号竪穴はオホーツク文化の集落跡にまさに隣接してつくられている、と言うことです。図録の71-4図に追記して示します。 pic.twitter.com/0flTKt5YsV

2022-01-20 18:47:33
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

このことからすると、元々はオホーツク文化によってもたらされた遺物が、擦文文化の竪穴住居跡に混入した可能性も考えられなくはありません。出土状況の詳細が知りたいところなのですが、1958年の発掘であることもあって、情報が限られています。当時の調査写真の再整理を進めなければなりませんね。

2022-01-20 18:47:34

第3回 石製動物頭部像

熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

#選ばれなかった資料たち 第3回。石製動物頭部像です。トコロチャシ跡遺跡から、遺構に伴わずに出土しました。長さ6.6cm、砂岩製で、大きな目と突き出た鼻が特徴的です。後頭部を凸線が一周してめぐり、両横には三角形を呈する薄い突起が浮き出ています。 何の動物に見えますか? #オホーツク文化 pic.twitter.com/gJrSZU60Jr

2022-01-21 18:05:44
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

報告書ではクマ像とされましたが、私には、この三角形の突起は海獣類の耳たぶか、鰭を表現しているように見えます。他にも様々な種である可能性が考えられますが、いずれにしても写実的な像ではなく、判断が難しいですよね。 pic.twitter.com/o9oPnsRno5

2022-01-21 18:05:47
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

動物像であり、オホーツク文化のものである可能性が高いのですが、遺構に伴うものではないことや、オホーツク文化の特徴である写実性の高さが見られないことから、縄文時代や続縄文時代のものであるとも考えられたため、今回は出陳を見送りました。でも、やっぱり惜しいですね。 pic.twitter.com/iL6Jzhchid

2022-01-21 18:05:49
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

せっかくですからアンケート。 先ほどの動物像、何の動物に見えますか?

2022-01-21 18:10:11
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

動物像のアンケート、思ったより多くの方々にご回答いただき、恐縮しております。 twitterに不慣れなため、回答期限を長く取り過ぎてしまいました。結果が確定したら、あらためてコメントします。

2022-01-24 17:22:18
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

アンケートに投票してくださった皆様、ありがとうございました! 海獣類と見た方が多かったのですね。 各項目について、少しコメントしてみたいと思います。 twitter.com/okhotskuma/sta…

2022-01-30 15:44:47
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

まず海獣類ですが、私と同じような見方をされた方が多かったのでしょうか。 イルカを含むクジラ類と見た方もいらっしゃいました。伸びた鼻先、確かに、ツチクジラなどを思わせるようなところもありますよね。でもこの場合、鼻の穴の位置が問題になるように思います。 twitter.com/okhotskuma/sta…

2022-01-30 15:51:40
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

次にクマですが、この場合は三角形の突起が何を表現しているのかが問題になるでしょうか。耳とみるのも不可能ではないですが、ちょっと苦しいかな、と思いました。 twitter.com/okhotskuma/sta…

2022-01-30 15:54:49
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

ブタ案は、鼻や耳?の形に説得力があるように思ったので提示してみました。実際にブタが飼われていたことも重要です。しかし、実はイヌやブタといった家畜を表現した像は、これまで、オホーツク文化では確認されていません。特にブタについては、儀礼的に扱われた痕跡も見当たらないようです。なので twitter.com/okhotskuma/sta…

2022-01-30 16:01:21
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

これがブタだとすると注目すべき発見ですが、前例がないので慎重な見方をしたいところです。

2022-01-30 16:01:22
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

鳥に投票された方もおられました。鳥の造形、土器の貼付文で表現されることが多いのですが、像としての造形は少ないです(フクロウがありますね)。翼の表現と見るのも悪くないかな、と思ったのですが、やはり鼻の穴が問題になりますよね。 twitter.com/okhotskuma/sta…

2022-01-30 16:04:52
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

なお上記4例の他に、生息域がオホーツク文化の分布と重ならない動物をあげていた方もいらっしゃいました。これについては、セイウチ牙の例や、北海道でトナカイの角製とみられる製品が出土していることをあげておきましょう。遠くに生息する動物のことも、場合によっては知られていたと思われます。 twitter.com/YokohamaEurAsi…

2022-01-30 16:12:09
横浜ユーラシア文化館 @YokohamaEurAsia

セイウチ牙製?の鉤状製品。香深井1遺跡出土(北大総合博物館蔵)。用途不明ですが、非常に大きな牙で作られています。セイウチの主な生息域は北極海やベーリング海であるため、カムチャツカ半島や千島列島を経由して持ち込まれた可能性があります。 #オホーツク文化 #あなたの知らない古代 pic.twitter.com/ugK7exaVth

2021-12-21 11:07:58
横浜ユーラシア文化館 @YokohamaEurAsia

セイウチ牙製?の鉤状製品。香深井1遺跡出土(北大総合博物館蔵)。用途不明ですが、非常に大きな牙で作られています。セイウチの主な生息域は北極海やベーリング海であるため、カムチャツカ半島や千島列島を経由して持ち込まれた可能性があります。 #オホーツク文化 #あなたの知らない古代 pic.twitter.com/ugK7exaVth

2021-12-21 11:07:58
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

オホーツク文化の動物観、まだまだわからないことも多いですが、これまでの研究成果を参考にしながらの推測、いかがだったでしょうか。 以上、コメントでした!

2022-01-30 16:15:28

第4回 刻文系土器(トコロチャシ跡遺跡出土)

熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

#選ばれなかった資料たち 第4回。刻文系土器(後期前半・道東)です。トコロチャシ跡遺跡で1974年以前に採集された資料です。高さ23.2cm、口縁部に肥厚帯はなく、頚部と胴部にはスタンプによる文様(櫛歯文)が巡っています。この土器で注目されるのは、その器形です。#オホーツク文化 pic.twitter.com/fnZHx6QkpB

2022-01-24 17:55:31
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

頚部より上の口縁部が長く、大きく開く器形は、道北部によく見られるものです。この時期の道東部の土器は、基本的には、写真のように頚部から上が短い甕形となります。後期後半の貼付文土器によくあるプロポーションですね。 pic.twitter.com/xRkqA6RiPp

2022-01-24 17:55:33
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熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

北海道のオホーツク文化では、中期から後期にかけて道東部で遺跡が増加するのですが、その過程で道北部と道東部の間に何が生じていたのか、それを知る上で、あのような「よそ者的な」土器がヒントになるのです。そんな重要な土器ですが、なぜ選ばれなかったのでしょうか?

2022-01-24 17:55:34
熊木俊朗 / Toshiaki Kumaki @okhotskuma

理由は単純でして、2枚目の写真に挙げた、栄浦第二遺跡の土器(4点一括で出土しています)の方が、移行期の影響関係が説明しやすかったからです。そうです。展示スペースの都合であります。 でも、残りの良さから見て墓の副葬土器(被甕)の可能性も考えられるこの土器、いい資料なんですよね...

2022-01-24 17:55:35
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