白蛇の戯れ

種 一＠刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@null 今回も寺生まれの毛利さんで語りますが、だいぶ前に戻って、元親が鶴ちゃんに会う前のお話だと思ってくださいまし。主となる登場人物は東西アニキとなります。　基本パラレルくらいとして見ていただけたらと思います…。　　それではしばし、お耳拝借。 #kai_bsr_fu

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#kai_bsr_fu@null 抗議が終わり、広げていた参考書などをしまう。途中突っ伏して寝ていたからか、端の方が寄れているのはご愛嬌だ。内容の半分も書けていないルーズリーフをファイルに入れて、欠伸を一つ零した。 #kai_bsr_fu

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@null 次の時間は空いているので時間をどう潰そうかと考えていたら、いつの間にやら隣の席に顔見知りが腰掛けていた。「Hey西海。今夜平気か？」「あン？予定はねぇが…」「そうか、そのまま空けとけよ」「待て待て待て、用はなんだよ！」 #kai_bsr_fu

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@null それだけ言ってすぐにどこかに行こうとした政宗の服を引っ掴み、また座らせる。何をするんだというような目で見られたが、それはこっちの取る態度だろう。「テメェ、前科がある事を忘れんなよ。嫌な予感しかしねぇ」「チッ……All right、話すから離せ」 #kai_bsr_fu

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@null 服を離してやればシワが気になるのか少し服の端を伸ばした後、ようやくこっちに向き直った。「明智トンネルってとこに行くんだが…」「パス！」「まだ何も言ってねぇ！」「うっせぇ！心霊スポットで有名なトコじゃねぇか！！」「だから、よく聞けっての！」 #kai_bsr_fu

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@null 耳を塞いで続きを聞くまいとする俺と、その手を剥がそうとする政宗の言い争いに、教室内に残っていた奴らから奇異の目を向けられる。それで少し気分が萎えた隙に手を引っぺがされた。 #kai_bsr_fu

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@null 「いいか？そこが有名になったのは、そこに行ったloversは皆別れちまうからだ。で、幽霊が現れるのは偶数人で行った時のみ」「それで俺とか？他にもいんだろ真田とか」「真田はあの一件以来、繁華街でもないと遊びにいってくれねぇ」「自業自得じゃねぇか」 #kai_bsr_fu

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@null 「ンなとこに女とは行けねぇだろ？頼むぜ元親」「むしろなんであんな目にあって、まだ行きてぇとか思うんだよ」「小十郎の野郎が……」「こじゅろう？」なんか聞いた事ある名前だ。確か、あからさまにヤーさんみたいな奴で、頬に傷のある男だった気がする。 #kai_bsr_fu

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@null 意外な事にいいトコ育ちのお坊ちゃまである政宗のお目付け役とかで、大学一年の時は十時を過ぎても遊んでると迎えに来てたような…。黒塗りの高級外車をゲーセンに横付けてる光景はシュールだった…。 #kai_bsr_fu

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@null 「前の時も、んな危険な事すんなってスゲー怒られて、一週間外出禁止、一ヶ月門限は八時までとか言われたんだぜ！？今時中学生でもそんな早くねぇよ！」つまり、反発してわざと言いつけを破ってやろうって事か…。もっと締め付けが強くなるだけな気がするが。 #kai_bsr_fu

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@null 「そんなん今度は俺まで怒られそうじゃねぇか…俺あの人怖いから嫌なんだけど」「安心しろ、奴なら出張で二週間いねぇ！」「…トンボ帰りしてこないか？」「……保障は出来かねる」「やだー俺絶対やだー！」「怖ぇのかよ！」「オメェんトコのお目付け役がな！」 #kai_bsr_fu

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@null そんな感じでギャアギャアと言い争っていたが、結局押し切られて（後で手料理食わせてやるって言われちまったからな。こいつ何故か料理めちゃ上手いんだ）車に乗せられた。徐々に少なくなっていく電灯に合わせて、気分も暗くなってくる。 #kai_bsr_fu

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@null 「ところでなんで偶数人なんだ？普通男女なら、とかだろ？」「Ah－、俺らみたいに男４人グループで行った奴らの前にも出たんだ。白いでっけぇ蛇」「蛇…？」「車が飲み込めそうなくらいの大蛇、って話だが…どうだかな」 #kai_bsr_fu

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@null ハッと鼻で笑った政宗の顔も、少しばかり緊張の色が見える。そりゃまぁあんな事があったばかりだから当然だろうが、それでよくもう一回行こうと思えるもんだ。こんな性格だからお目付け役が必要なんだろうな、と生暖かい目を向ける。 #kai_bsr_fu

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@null 「着いたぜ……んだその目は」「いや、若いっていいなと思ってなぁ」「殴るぞテメェ」小突かれながらも車を降りれば、これ見よがしに照明も何もないトンネルが暗い口を開けて存在していた。ヘッドライトが中を照らしてはいるが、向こう側までは見えない。 #kai_bsr_fu

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@null 「……中か？」「そうだな。一応向こうまで通じてるらしいが、半分くらいで出てくるとよ」そう言ってさっさと歩き出す政宗に慌てて後を追いかける。用意のいい事に、その手には懐中電灯が握られていた。 #kai_bsr_fu

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@null トンネルの中に一歩足を踏み入れると、外の暑さが嘘のようにヒヤリとしていて、それだけで気味が悪い。だが政宗は全く足を止めないので、仕方なく二歩ほど後ろを歩いてついていく。 #kai_bsr_fu

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@null ヘッドライトの明かりもすぐに遠くなり、丸い明かりが下のコンクリートを照らす。進めば進むほど寒くなっていき、嫌な予感が強まった。思わず腕を擦る。 #kai_bsr_fu

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@null 「これマジもんの雰囲気じゃねぇか…。てかなんでそんなにサクサク進むんだよ」「こういうのは立ち止まったら負けなんだよ」「誰に対してだよ…」 #kai_bsr_fu

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@null やっぱりムキになってやがる。性格が似てるからこそわかるが、一度頭に血が上っちまうとそれしか考えられなくなるんだよな。といっても、いつもは俺より冷静のはずなんだが…。 #kai_bsr_fu

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@null そんな事を考えていたら、政宗の足がピタリと止まった。ついつい足元ばかりに向かっていた視界の端に、何か薄白いものが映っている事に、今更気が付く。そろそろと視線を上げていくと、確かにそいつはいた。ブアッと一瞬にして全身に鳥肌が立つ。 #kai_bsr_fu

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@null それは白い、あまりに白すぎて闇からも拒絶されたかのような、大蛇。だが、口先から伸びる舌と瞳は、血液のような赤だ。そして、何より目を引くのはその巨体。トンネル全体を塞ぐような形で塒を巻き、大人の腕でやっと一抱え出来るような太さの鎌首を擡げていた。 #kai_bsr_fu

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@null 『おやおや……珍しいお客さんですねぇ…』シューシューと鱗が擦れるような音とともに、脳内に直接声が流れ込む。無表情のはずの表情がニタァ…と笑んだような錯覚を覚えた。 #kai_bsr_fu

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@null 「ッ――！逃げるぞ独眼竜！」大蛇を懐中電灯で照らしたまま固まった政宗の腕を引っ掴み、出口に向かって走り出す。カラァンと懐中電灯の落ちる音がトンネル内に響き渡った。 #kai_bsr_fu

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@null 『おやおや…せっかくいらっしゃったのに、もうお帰りですか……寂しいですねぇ…』ネトリとした声が頭蓋に響いた。気持ちが、悪い。 #kai_bsr_fu