- rouillewrite
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アシュリーは、そっと、彼女を抱きしめた。 力強く、しかし優しく、痛くないように。 抱きしめた小さな身体が小刻みに震えているのがわかって、余計に悔しくなった。
2022-05-12 21:30:27抱きしめられたマリンは、驚いたように「あ…アシュリー?」ともう一度彼の名前を呼ぶ。 顔は見えないが、その腕は温かく頼もしい。
2022-05-12 21:30:56その言葉は、マリンの耳朶を力強く叩いた。 根拠はない。 人より体力があるわけでも、飛び抜けて頭がいい訳でもない。 積極的に誰かの前に立てるわけでも、誰かの手を強く引っ張ることができるわけでもない。
2022-05-12 21:33:11吹き荒れる風が少し止んで、彼らを優しく撫でる。 身体が少し冷えるまで、2人はしばらくそうしていた。
2022-05-12 21:38:10遊戯場での1件があり、各々意気消沈したまま翌朝を迎える。 過呼吸を起こしていたガブリエルは大丈夫だろうか、とギルは食堂に向かう途中でぼんやりと考えていた。 1人にさせるのは気が引けたが、誰かがいても気が休まらないというので、交代で扉の前で見張りをする約束を交わし、朝を迎えた。
2022-05-12 21:39:34変わった様子はなかった、というが、如何せん全員が疲労困憊のために、しっかり見張ることが出来ていたかは定かでない。 しかも今動ける探偵は、アシュリー、イーライ、ギルの3人だけだ。
2022-05-12 21:40:28レイラを連れて食堂へと来ると、既にアシュリーとマリン、イーライ、エリーゼの4人は座って待っていた。
2022-05-12 21:41:32広々とした食堂に4人しかいない光景を見て、随分と寂しくなったものだと、ギルは目を伏せる。 ビュッフェスタイルだった朝食も、人数が減ったことでコース料理に変えられていた。 デアダームが1人で細々と厨房で準備している音が聞こえる。
2022-05-12 21:42:12席順も、もはや振り子時計に近い方から詰めて座ることになっていた。 ……そうして、ガブリエル、オリヴィア、レオニードの3人を除いた現時点で生存している6人全員が揃ったところで、朝食がスタートする。
2022-05-12 21:43:53無言でいるのもなんだか気が落ちる気がして、ギルはふとエリーゼに投げかける。 エリーゼは口に入れていたパンを飲み込むと、小さく頷いて微笑んだ。
2022-05-12 21:45:58「今は痛くはないです。ただ、あの人の言った通り、左目は見えてないみたいです」 「…みたい?」 「眼帯をつけてる時と、外した時で視界にあまり差がないので、時々どっちなのかわからなくなるんですよ。確かに左の方は死角になっちゃいましたけど」
2022-05-12 21:47:03つまり、眼帯を外したところでつけている時と同じだから見えているか見えていないかの比較をしようがないようだ。片方は見えているので、視界がなくなったと断定できる感覚がないのだろう。 「そうか」とギルが小さく返した後に、再び黙り込む一同。
2022-05-12 21:47:41