文体とトリックと後期クイーン的問題

リアリティラインが多様化する現代においては、文体とトリックとの合致性が重要になっているという話
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@quantumspin

「サブカルチャーと後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/2020442

2022-12-25 10:51:04
天見ひつじ @izutis

地の文、その人が「なにを」「どう見ているか」がモロに出てくる部分だと思うので、色々なものをよく見ること、それについて考えることが訓練になるというか、そういうことをナチュラルにする人が文章書きになるんじゃないかな。

2023-01-04 09:43:59
@quantumspin

これが本格ミステリになってくると、作者が文体をトリックやプロットにまで利用してくるので恐ろしい。逆に文体とトリックとが乖離したミステリを読むと、今度はメタな印象になってくるのでこれまた恐ろしい

2023-01-04 12:04:18
@quantumspin

このあたりに自覚的な作家とそうじゃない作家とで力量がわかれていく印象がありますね。ミステリ批評家のはしくれとしては、できるだけ後者を前者に導ける文章を書かねばと思っていたりします

2023-01-04 12:07:21
@quantumspin

かつて都筑道夫はトリックとリアリティとの乖離を問題にしていましたが、文体までは問題にしていなかった。これはおそらく都筑の時代にはリアリティラインと言う概念が希薄だったからだと感じます

2023-01-04 12:14:04
@quantumspin

近年のミステリの特徴のひとつに、文体で世界観やリアリティラインを表現するようになってきた事が挙げられると思っています。こうなると単に、リアリティとトリックとの関係だけ考えても充分ではなくなります。それが誰にとってのリアルかが問題になるからです

2023-01-04 12:17:40
@quantumspin

まあそういった考えから、自分は文体とトリックとの合致性を問題にしていたりします。モダーン・ディテクティヴ・ストーリイ論を現代風に言い換えただけで、言いたい事は同じなんですけどね

2023-01-04 12:21:14
@quantumspin

文体とトリックとの関係に自覚的な作品は多いですが、最近感心させられたのはなんと言っても相沢沙呼『medium』ですね。あれは相沢沙呼の文体だからこそ効果的に成立するトリックだと思いました

2023-01-04 21:54:37
@quantumspin

だから自分は、あの作品のドラマ化は難しいだろうなと思っていました。ドラマだと文体でリアリティラインをコントロールできないからです。実際のところ、前半で脱落した視聴者は少なくなかったのではないかと見ていて感じました

2023-01-04 22:00:49
@quantumspin

現代ミステリの文体の変化は、後期クイーン的問題が下火になってきた理由のひとつにもなっているように思っています。後期クイーン的問題を発症させるには、エラリー・クイーンのやったような、精密画のような写実的文体が前提されているからです。円堂都司明が「『謎』の解像度」と呼んだアレです

2023-01-04 22:13:39
@quantumspin

簡単に言うと、天才であるべき探偵に手掛かりを懐疑させるには、それ以外の可能性をすべて消去しなければならない筈で、これをラノベ文体で表現することは難しいと言うか、ちぐはぐになっていく。実際に、ラノベ文体で氷川透作品のような表現は難しく、後期クイーン的問題は、ネタとして消費されていた

2023-01-04 22:22:46
@quantumspin

現代ミステリの特徴のひとつに、探偵が聞き込みをあまりやらない、と言うのがあります。国名シリーズなど読むと、関係者への聞き込みがやたら長く、多くの証言は謎とは無関係だったりする。それでもクイーンは頑張ってそれらを事細かく書いていたんですね。そうやって作品世界のリアリティを高めていた

2023-01-04 22:28:42
@quantumspin

探偵のカメラアイがハイビジョンであるからこそ、後期クイーン的問題を発症してしまうわけです。一方現代ミステリにおいて、探偵はエラリーほど捜査しないし、文体も風景描写は控えめになっています。「チェーホフの銃」と言うのか、出てきたエビソードはほとんどの場合謎に貢献させられていく

2023-01-04 22:33:33
@quantumspin

これが転じて、最近では、テクストに記述された事自体が、推理の根拠になっていくように書かれたミステリが出てきたりしていますね。AはBである。なぜならチェーホフの銃より、描写されたものは物語に貢献しなければならないから、といった感じのロジックを探偵が語るようになってきました

2023-01-04 22:39:57
@quantumspin

これ自体は問題ではなく、むしろミステリの新たなポテンシャルを引き出す試みだと個人的には思っています。謎解きの前提がしっかりしていれば、読者もついていける。実際にこれを利用したミステリを作ったのが井上真偽

2023-01-04 22:43:58
@quantumspin

しかし一方で、文体はライトでチェーホフの銃的論理を駆使しているにもかかわらす、トリックは新本格時代の古風なまま、と言う作品もあって、個人的にはそういった作品にはやや冷淡だったりします。むろん読みどころは様々あるので、それだけで駄作になるわけではありませんが

2023-01-04 22:48:18
@quantumspin

「定義論と後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/2266686

2023-11-29 08:13:24