掌小説語り~自作つぃのべる集~96

自作つぃのべるのまとめです。 2021年4月分。
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リュカ @ryuka511

「薬の時間だ。起きられるか?」「うん」心配げに僕を見つめるのは吸血鬼だ。「今日は調子がいいんだ」「なら良かった」憂い顔の彼がそう微笑むから胸が痛む。僕の病は確実に進行している。いかに吸血鬼といえど、人間の病を治す薬は作れないだろう。彼を1人残して逝きたくないけど、仕方ない #twnovel

2021-04-02 00:04:19
リュカ @ryuka511

魔王城のある孤島は荒れ狂う海の先だ。どこの港街も漁村も船など出せないと断られた。無理もない。だがそれでも行かねばならない。この海を渡るにはどうしたら。自作の簡素な船は一瞬で波にのまれた。空を行く手段もなく、島へ洞窟を掘るのも無理だ。魔王城を目前に、僕らの旅は幕を閉じた #twnovel

2021-04-02 23:53:44
リュカ @ryuka511

君の剣に合わせ炎を放つ。炎をまとった剣が魔物を殲滅させた。君の背を守り支援しながら戦う。それは君と奏でるデュオのよう。君の戦う姿に、戦いの後の笑顔に心躍る。恐れられた私の力を君は必要としてくれた。このデュオが途切れないように、魔物がいなくならないようにと願う私は、罪深い #twnovel

2021-04-04 00:10:14
リュカ @ryuka511

「我が子を託せるのはお前しかいない。頼まれてくれるか?」死に瀕した主のお言葉に頷き、私が半吸血鬼となったのは遠い昔。私の役目はそろそろ終わり。だけど。「逝かないでくれ」主によく似た瞳で縋られ戸惑う。いけません。私は従者、貴方様にも主様にもなど、主従以上の関係は許されない #twnovel

2021-04-05 00:59:22
リュカ @ryuka511

「もう抵抗しないんだな」「お前が俺に何をしようと、俺の親友なのは変わらないさ」「親友、か」僕が無理矢理抱いて愛を告げても、お前は僕を愛さない。受け入れられないくせに突き放さないのは、こいつの優しさなんだろう。だけどその理性も偽善も崩してしまいたい。そんなの、却って苦しい #twnovel

2021-04-05 23:34:02
リュカ @ryuka511

「哀れな」震える半吸血鬼に銀の杭を翳す。「人には戻れず、完全な吸血鬼にもなれず、苦しかろう?今楽にしてやる」抵抗を封じ胸に杭を突き立てる。凄絶な悲鳴をあげ半吸血鬼は灰と化した。自我も理性も無くし化け物となった哀れな半吸血鬼。望まずして異端となった者、彼らを救うのは死のみだ #twnovel

2021-04-06 23:47:33
リュカ @ryuka511

幼い頃は何もかもが永遠だった。夕方になっても明日になればまたみんなと遊べた。明日も明後日も来週も来年もずっと続くと思ってた。永遠なんて無いと知ったのは、君にもう会えなくなってから。みんなの中で君が一番好きって言えば良かった。大人になっても戻りたいと願う、あの頃の夕暮れ時 #twnovel

2021-04-07 23:35:25
リュカ @ryuka511

同じ世界に生きていても、僕らは決して交わらない。君を救う為に僕が過去を変えたから。君に会おうとしても会えなくなった。君の世界に僕は存在しない。君を守って死んだ僕と、守れなくて死んでしまったはずの君が、同じ世界にいる矛盾。君が生きている事を僕は知っている、それだけでいい #twnovel

2021-04-09 00:27:30
リュカ @ryuka511

君の悲しみに曇った瞳には、それでもあいつしか映っていない。あいつはもう帰って来ないと君は解っているはず。それでも待ち続けるのは、愛なんだろうか。果たせやしない約束で君を縛るあいつが憎かった。親友と同じ人なんか好きになるもんじゃない。大切なものを同時に失う事になるのだから #twnovel

2021-04-10 00:25:08
リュカ @ryuka511

彼女は女王であり女神だった。善政を行ったのはもちろん、多くの人が彼女の起こす奇跡に救われた。だが彼女はある日突然王位を息子に譲り人々の前から姿を消した。玉座を渡された王は後に語る。王位を退いたその時彼女は疲れたように「お前が私の魔力を継いでなくて良かった」と涙したという #twnovel

2021-04-11 00:31:04
リュカ @ryuka511

苦難の末にここまで来たのに、まさか君に裏切られるなんて。僕らの情報や切り札も全て持ち、君は魔王軍へ戻って行く。初めからそのつもりだったと、なかなか楽しい旅だったと言い残して。裏切るくらいならいっそ殺めてほしかった。君を失った僕らに勝利はない。せめて、君の手で僕にとどめを #twnovel

2021-04-12 01:13:55
リュカ @ryuka511

ある日突然、地球の自転が止まった。時計の針は夜を指しているが、辺りは夕暮のままだ。誰もいない大教室の教壇に立ってみる。世界中がパニックに陥っているこの現象を、解説できるのは私だけだ。無論、極秘事項だが。宇宙の外側で大いなる力が動き出したのだ。我々の悲願達成の日も近い。 #twnovel

2021-04-12 23:42:48
リュカ @ryuka511

吸血鬼と人間の共生など不可能だ。後天的吸血鬼の私が言うのだから間違いない。吸血鬼としては半端者だが人間ではない私を、どちらも受け入れなかった。吸血され半吸血鬼になった者は多い。半端者の私達が平穏に生きるには、人間も吸血鬼も滅ぼせばいいのだ。私達の安寧の為、ここに決起する #twnovel

2021-04-13 23:52:11
リュカ @ryuka511

いつもの路地裏に蹲る。月の無い今夜は星が綺麗に見える。だけど、こんな狭い空じゃ流れ星の行方も分からない。広い空が見える場所への行き方なんて知らないし、知れた所で行く事はできない。薄汚れた路地裏。蹲ってちゃいけないのは分かってるけど、ここからは逃れられないのだから仕方ない #twnovel

2021-04-14 23:57:14
リュカ @ryuka511

世界を統べる次期国王として、魔王を討伐せよと言われた。対立する弟王子の派閥が、僕を亡き者にすべく仕組んだに違いないと、使命感も無く投げやりな気分で旅に出た。だけど君と出会って共に戦って、考えが変わった。誰かを失いたくないだなんて初めて思ったんだ。君の為だけに、魔王を倒す #twnovel

2021-04-15 23:46:47
リュカ @ryuka511

「ここは俺が食い止める。お前達は進め」「この数はいくら隊長でも」「いいから行け!」俺達の目的は首領の首ただ一つ。雑魚の相手は俺一人で充分、雑魚共を殲滅し合流する、はずだった。響く銃声。胸を貫く衝撃と熱。遠のく意識。遠くで炎の爆ぜる音。あいつらは、無事、かな。油断、するなよ #twnovel

2021-04-16 23:19:41
リュカ @ryuka511

桜色に染まった校庭をぼんやり眺める。上の音楽室から吹奏楽部の演奏が聴こえてきた。帰宅部の僕がまだ帰らないのは君のフルートを聴く為だ。僕には到底できない事を難なく熟す君が眩しい。きっと10年経っても僕と君の差は縮まらないんだろう。空っぽな僕の拍手なんて、君にはきっと響かない #twnovel

2021-04-18 00:07:53
リュカ @ryuka511

「叶わない約束をしましょう。せめて今共にいる証に」君は気丈に笑って言った。魔王軍からも、助けてくれない世界からも、逃れられなかった。君を守りたくて握った手が震える。ずっと守られてたのは僕の方だったなんて情けない。だから僕も涙を堪えて笑った。「うん。ずっと一緒に生きよう」 #twnovel

2021-04-18 23:40:36
リュカ @ryuka511

この心を一つ殺した所で君に幸福など訪れない。私達は愛し合っているのだから。だけど君には親が決めた許嫁がいる。私の立場では到底できない事を、あの人は君にしてあげられる。それはある意味では幸福なのだろう。愛があればなどという青臭い綺麗事は、身分という現実には無力だと思い知る #twnovel

2021-04-20 00:24:35
リュカ @ryuka511

諦めかけた夢を、共に行こうと言う君の説得でもう一度追おうと決めた。君となら、どこまでも高みへ行ける気がした。だけどそれもここまでだ。夢の続きをくれた、君はもういない。神様は君を傍へ連れ去ってしまった。神様に愛された君と、顧みられなかった僕。共に行けるはずなどなかったのだ #twnovel

2021-04-20 23:50:44
リュカ @ryuka511

僕の腕の中で君は怯えた顔をする。どうしたのと問うと、幸福の過剰摂取は毒だと返された。愛しい人を腕に抱く、僕にはごく自然な事が君には度を越えた事に感じるようだ。君の過去を詳しくは知らない。だけど、僕の腕に愛に包まれる事を当たり前と受け止められるように、君を慈しんでみせよう #twnovel

2021-04-21 23:00:09
リュカ @ryuka511

背後には殺した感情の屍が山になっていた。腐敗するもことなく生々しい姿を晒すそれらは、蘇る気配もなく確かに死に絶えている。何の感慨もなくそれらを眺めた。これを抱えたまま生きていたら、身体も死んでいただろうか。背を向けてまた歩き出す。この身体も感情のように殺せたらいいのに。 #twnovel

2021-04-23 00:03:45
リュカ @ryuka511

幽霊船ロマンスクルーズに参加した。幽霊船を模した船で行くゴシック浪漫の旅。そこで骸骨の仮装をした青年と恋をした。何もかもが虚構の中、彼との恋は本物だった。旅の終わり、彼は魔女の仮装をした私へ淋しげに言った。「魔女様、時を止めて下さい」#twnovel 下船後に見た乗客名簿に、彼の名が無い

2021-04-24 00:12:52
リュカ @ryuka511

「これ以上の課税は民衆の反発を招きます」私が進言すると王は優雅に笑った。「民衆の反乱など、お前がすぐに鎮めてくれるのだろう?」「無論です」即答してしまい自嘲する。王からの絶大なる信頼と、身に余る程の寵愛に溺れていた。王は変わってしまった。だが一番道を誤っているのは、私だ #twnovel

2021-04-25 00:14:33
リュカ @ryuka511

君が生まれてきた時から、私と君は戦う運命にあった。それ事態は問題ではない。だが、出会うべきタイミングを誤ったのは、何の悪戯なのだろう。運命を知る前に出会い惹かれあってしまった。剣を手に対峙した運命の時。互いに“宿敵”の正体を知る。何故。どこまで時を戻せば、運命に抗える? #twnovel

2021-04-26 00:13:37