お玉さんの読書マラソン企画「本格力を高めよう サンシャイン」(4部B)

オールタイムのミステリベスト本『東西ミステリーベスト100』(2012年度版)国内編と海外編双方の同順位作品を、ミステリ読みの鉄人 お玉さんが比較検証。感想を述べつつ「どっちが好きか!」判定する対決企画です。第4部Bはシリーズの白眉ともいうべき第38位対決(『11枚のとらんぷ』VS『血の収穫』)を収録。特に後半の『血の収穫』翻訳比較や謎解き読み考察は必読です! 第1部はこちら→ https://togetter.com/li/1723552 第2部はこちら→ https://togetter.com/li/1750586 第3部はこちら→ https://togetter.com/li/1810946 続きを読む
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お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

更に追い討ち、 夫婦で登場する登場人物たちの全員が、良い感じの信頼関係で繋がっている様子を作中に忍ばせてるのよね。脇の脇でほんの数行、そんな程度で差し込まれる挿話がやたら鮮明なの。彼ら彼女らが手品を心から楽しんでる様子を交えながら、あの構図の犯罪を書くんだよ。泡坂妻夫、タチが悪い

2023-06-30 02:25:14
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

趣向や仕掛けにこだわった泡坂妻夫は当然みんな大好きだと思うんだけど、恋愛系統のミステリ作品群も、私、相当気に入ってるんだよね。 『11枚のとらんぷ』って、トリック狂想曲的印象が激つよカテゴリーな作品と思い込んでいたけど、後の恋愛ミステリちっくな要素も含まれてよなぁ? と思うのよ。

2023-06-30 02:26:13
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

ことさらユーモアたっぷり風味に見せようとする作者の思考誘導や、謎解きミステリに対する万感の意気込み、小説という媒体のみが出せる恋愛や夫婦の感情の機微や、手品というエンタテインメントが持つ楽しさや、、、そういうのをしこたまブチ込み過ぎてるんだ『11枚のとらんぷ』

2023-06-30 02:28:01
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

その姿勢、本当にありがたい。 けど、客観的に考えると第一部と第三部に少し間延び感を覚えるわけだし、第二部がキビキビ過ぎて余裕の無いように思えちゃうんよね。 正直、高望みなんだけど、泡坂妻夫に高望みするのはミステリ読者としては当然の権利なんだ。期待、応えてくれた作家なんだモン

2023-06-30 02:28:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

(先に挙げた要素を同様に扱いながらも、全てを完全に制御しきって、ナチュラルに起承転結を進行させる。そんな日本ミステリ史上の空前のド傑作『乱れからくり』がどうしても念頭から外せないんのも『11枚のとらんぷ』の不利な点なのよね)

2023-06-30 02:28:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

(作中の登場人物たちの扱いとその構図が見せるエグ味。それを根底に潜ませながらも、表層部分はドタバタ劇で伏線を沢山拾いまくりの本格趣味。 そんな難儀なものに手を出してくれた姿勢を褒めよう。以降もこの傾向の作品を定期的に書いてくれたことを褒めよう。今回の感想はその方向性で考えていた)

2023-06-30 02:31:23
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

けど、なんか棘のある感想になっちゃったわね『11枚のとらんぷ』 初読みの魔法は完全に消えてるみたいね。 でも、今だから気づけた好きなシーンもいっぱいある。 「11枚のとらんぷ」部分での、丁寧に語り過ぎていない(かなりイジワルな)真相開示の仕方、ホンマにキレッキレで好みなんだよなあ

2023-06-30 02:31:23
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

というわけで『11枚のとらんぷ』感想でした。 でもって、明日から『血の収穫』感想です。第一部ですね。 ではでは

2023-06-30 02:32:39
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて(今日は『血の収穫』の感想の上ですわ)(『血の収穫』の感想は上・中・下・完結編の全4回の予定)(最後の最後の考察がまだ埋まってないの)(考察を進めていく内に、とあることに気づいて、そこを推理してる最中です) ではでは→

2023-07-01 00:52:02
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

さて、『血の収穫』である。 日本語訳にしてほんの300ページ程度の小説だ。何も考察せず何となくで追いかけたら、理性は少しあるけど正義などはまるで無い、銃弾と爆発物と刃物、次々と人の命を奪われていく。 そんな暴力讃歌の物語。そういう風に映るんじゃないかな。

2023-07-01 00:54:18
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

けど、 この手の作品にてありがちなテンションや熱量といったものはかなり低く、登場人物たちの駆け引きに洒落た雰囲気は漂ってはいるけど、雰囲気は極めてアンニュイである。劇的なドラマチックな死は描かれておらず、登場人物たちはわずか数行、一瞬の間に退場させられていく、そんな物語である。

2023-07-01 00:54:18
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『血の収穫』 パワーバランスが一触即発の飽和状態の町。そこに起きた幾つかの事件を利用し、主人公は騒動へ、血の収穫祭へ町の顔役や有力者たちを誘っていく。何件か自らの手で人を殺めたりはしてるが、主人公のアクティブさは対立している組織をカチ合わし、抗争を引き起こすことに費やされている。

2023-07-01 00:55:25
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

だから、ストーリーをさらっとなぞるだけなら、主人公の悪魔のプロジェクトが完遂されるのか? に注視すれば良い。 現代の硝煙系暗黒小説に触れてたりすると、構成のバランスの面で少々思うとこが出てきそうだが、劇的な演出を避けに避けてながらも派手な展開は、独自の読み応えを覚えるのでは? だ

2023-07-01 00:56:17
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

はい。 『血の収穫』、僕はめちゃくちゃ好きなんですが、今現状の気持ちしては「あまり人に強くオススメできるタイトルじゃないな」という感じです。 現代のミステリ読者と相対しても充分に戦えハメット作品は『マルタの鷹』であり『ガラスの鍵』 『血の収穫』はミステリとしては、かなり落ちます。

2023-07-01 00:56:54
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

だいたい、「文豪が認めた!」やら「筒井康隆が言及した!」とか、今現在『血の収穫』に興味を持ってしまったとき、そんな余計な知識が先に付き纏っちゃうの本当によろしくないですよ。 先入観! 先入観 Σ(゚д゚lll) 仰々し過ぎるよお。ミステリ作品として向き合い方に絶対誤謬が出ちゃうやぁーん

2023-07-01 00:57:34
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

正直の話、『血の収穫』にハードボイルドの肩書きをつけちゃうのも疑問符モンなのよね。 僕の中でのハードボイルドジャンルの最初のロールモデルは『マルタの鷹』なんだ。『血の収穫』(それと『デイン家の呪い』)は「マルタ」の叩き台。『血の収穫』はハードボイルド夜明け前、そんな認識なんだよ

2023-07-01 00:57:35
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

状況がハードな短編ミステリを書くことで得た手応え。 その手応えがあったからこそ、ハメットは『血の収穫』という長編作品の雑誌連載が取り掛かれたんだ。 状況もより過激でハードに! そのサービス精神は嬉しけど、作品内での取捨選択がファンの贔屓目から見ても、それほどちゃんと出来ていない

2023-07-01 00:58:44
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

大量殺戮という題材が、まだミステリとして、エンタテインメントとして全然昇華し切れていないんよね『血の収穫』は。 だからこそ、抑え切れない(抑える気はなかったんだろうね)文学的問題が行間から匂ってくる。血の匂いとともにプンプンと匂ってきやがる。

2023-07-01 00:58:44
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

皆殺しミステリ作品としては、ファンの贔屓目で見ても、チューニングが不足しており、かなりボンヤリしてるんだ。 でも、皆殺し文学作品としての『血の収穫』は、かなり、かなり、かなり、ブッ突き抜けている。 チューニングが効いてないため、問題はソリッドな形のままで転がりまくっているんだわ

2023-07-01 00:59:25
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

たくさんの死体とたくさんの企みとたくさんの血の量で過剰に彩られてはいるが、ハメットが過去に行った「労組潰し」という個人的体験が、『血の収穫』の素地になっているのだろうなあ? ってのは想像容易い。 仕事の一環で他人に暴力を振るった人間が描く皆殺し文学だ。暴力文学なのである。

2023-07-01 00:59:58
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『血の収穫』の殻を剥くと、一気にその内容は難解さがつきまとう。 エンタメとして割り切れてないため、物語に作者の投影が見え隠れする。文学研究でのアプローチが如く内容理解のため作者研究も視野に入れなけばなのだ。 登場人物の退場劇に見られる不安定さも文学文脈での考察なら紐解けそうかもだ

2023-07-01 01:02:04
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

「プライドをコケにされた」という一応の動機は提示されているが、読者にとって全く信頼できない主人公の行動理念。 そこも、あくまで作者が仕事として行った体験の誇張化と考えると、腑に落ちそうなんだよね。 20章の殺人肯定、21章の夢のエピソードあたりはいくらでも思考を巡らすことが出来そうだ

2023-07-01 01:02:05
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

最終章での潜入倉庫を間違えてしまうエピソードなんかは、ガチガチのミステリ視点で見ちゃうと尺伸ばしにしか思えないんだけど、少しだけ頭を柔らかくして考えてみると、暴力との距離感が暗喩的に描かれてるようで、めっちゃ味わいがあるんだよね。大好きなシーンの一つだ。

2023-07-01 01:02:05
お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

『血の収穫』は現実の「労組潰し」の拡大化、誇張化された内容なのではあるが、同時に1929年のアメリカにおける諸問題を凝縮化した、そういう物語と見て取っても全然通じちゃうんだよね(当時の世界全体における勢力圏すらもディフォルメ化し包含しているようにも見られるんよなあ)

2023-07-01 01:04:15
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