お玉さんの読書マラソン企画「本格力を高めよう サンシャイン」(4部B)
……と、いつもの私なら、ここから、「難解文学として挑む『血の収穫』」を妄想タップリで突き進めていく(ヘミングウェイ(文豪)とかとの比較になるんじゃないかな)のだが、今回は目先を変える。 ここからは、この難解な作品に対し、日本の訳者がどう挑んでいったのか? を展開していきたいと思う
2023-07-01 01:04:43じゃじゃじゃ〜ん さぁ、楽しい楽しい血の収穫祭の始まりだよ。 血の収穫祭! つまるところ、日本語訳の読み比べなのでありまするよ。 pic.twitter.com/lT6M6xXR0R
2023-07-01 01:06:26日本語で翻訳された『血の収穫』(『赤い収穫』)は8作品あったりします。 今回のミステリ感想は、この8作品を読み比べます。 もちろん、訳者のクセの違いがあれど、ストーリーは全部一緒です。 リアル、エンドレスエイト Σ(゚д゚lll)
2023-07-01 01:08:41けどね、本格以上にジャンルの定義がね曖昧なんだよねハードボイルド。だからこそ「出版された時代毎のハードボイルド認識、翻訳者毎のハードボイルド観、それらが各々の『血の収穫』にフィードバックされているのでは?」と考えに憑かれちゃったら、もう「エンドレスエイト、やるしかないだろッ!」
2023-07-01 01:08:41あとね、人がポンポン死ぬ非情のシチュエーションだけど、僕は先に言った通り『血の収穫』はピュアなハードボイルド作品ではなく、文藝寄りの難解な小説という認識を持っているんですよ。 、、、文学嗜好部分も翻訳家さん、拾ってくれているのかな? というのも興味津々だったんだよね。
2023-07-01 01:08:41そういうわけで、ここから血の収穫祭。 訳の違いを少しでも見てもらいたいので、各翻訳の紹介に、セリフ上での「対人一人称」と地の文にある「内面一人称」を付します。 また、幾つかのセリフも一緒に並べることとしましょう。紹介するセリフは、→
2023-07-01 01:09:071章・町の顔役の一人である賭博師を見たときの感想 10章・賭けボクシングで大儲けしたヒロインの浮かれセリフ 11章・病気にかかった女性の弱気な独白 21章・主人公が行うトリック(本格ファンにも嬉しいけっこうな大トリック)の説明 25章・銃撃戦 となります。 サァ、収穫祭ですよ。
2023-07-01 01:09:08①『赤い収穫』翻訳/砧一郎(1953年) 対人一人称・基本は「ぼく」。一部「わたし」「おれ」を使用 内面一人称・「わたし」 pic.twitter.com/wt1Og2x9KF
2023-07-01 01:09:401章「ふふ……ダイナマイトだつて格好はなかなかスマートだぜ。」 10章「おそばを、五十杯ほどおごつてね。」 11章「いいのよ、そんなこと……あたし、こんな汚らしい格好で死ぬのがくやしいだけさ。」 19章「上出来のアリバイだ。」 25章「おい、ファット。あの野郎どもを焼き殺してやれ。」
2023-07-01 01:09:41砧一郎翻訳! ニュアンスが難しい箇所では、そこの文章をまるっと省いちゃったりしているし、文意を完全に無視したかなりの直訳で処理をカマしてる場面もそこらかしこにあったりするんだ。 何を語っているのかが、分からん! そんな戸惑いが、僅か(?)だけど存在したのは、この砧訳だけなんよね
2023-07-01 01:11:48セリフのひとつひとつがひどく説明口調で、言い回しがやたら丁寧なのが戸惑ってしまう(いや、一周まわってその戸惑いが楽しい)何だろう、セリフにリズミカルさが全く無いのよ。 70年前よりもっと前の日本ミステリを読むことはしょっちゅうあるが、ここまで学級委員口調なミステリは、そうそう無いゾ
2023-07-01 01:13:2323章。恫喝を含んだ、主人公の聞き込みシーン。(ずっと後にこのシーンのことで語るのため、訳の例として写真をパシャって見せてるが、砧訳の中では、ここはかなりドライブ感があるんだ。これでも、この翻訳の中では、セリフがはずんでいるシーンなんだよなあ) pic.twitter.com/nCl41Wjknl
2023-07-01 01:15:19決して妙訳じゃないんだけど、妙な訳なんだ。それが砧訳! 固有名詞の呼称がまちまちだったり(マグロウとマグローなど)、長台詞の中で一人称がコロコロ変わったり、途中からツッコミポイント探しな読み込みへとなること必須だよ。
2023-07-01 01:16:37あまりにアレなので、同じ砧訳の『影なき男』と『探偵コンチネンタル・オプ』をポチってみた。でも、『影なき男』は昔読んだ印象より存外マトモ、『探偵コンチネンタル・オプ』は凄くシッカリ訳している、で謎がますます深まる。ポケミスのほぼ創刊ラインナップということで、タイトな締切だったのかな pic.twitter.com/tiAKm7BryK
2023-07-01 01:16:39でも、ポケミス初期作なので、解説が江戸川乱歩なんよ。乱歩のポケミス解説はそれほど拾えてない(『海外探偵小説 作家と作品』はお値段的に厳しいの)けど、その簡潔さと理路整然なデータ捌き、ミステリ普及への使命感とポケミスへの期待感が入り混じったおり、乱歩史上屈指の名解説になってるのよ。
2023-07-01 01:21:03今更、ポケミスで『血の収穫』を読む人などいないと思うけど、この乱歩解説は価値あるよ、実質の本編と言っても過言じゃないよ、と。 最初期のポケミスって、日本でさ普及が遅れてるハードボイルドジャンルの紹介、その試みがあったのでは? と思ってるけど、その証左と言って差し支えない解説なのね
2023-07-01 01:21:04丁寧な言い回しがすごく堅くて、砕けたセリフとかは何だかヘンテコリン。 本編の翻訳は、到底、乱歩先生の期待には応えられていないのよなあ(あのシーンでの「アイスピック」とか、何箇所かでグッドなワードセレクトをしてるけども……) 砧一郎訳、本編は変わりダネというヤツである。解説が本命!
2023-07-01 01:21:04だけど、 ハードボイルドというものがどういうものなのか? 全然理解が及んでなかった時代に、対人と内面とで一人称表記を変更して翻訳を執り行っている。 本当はこの一点だけでも評価しなければなんだよね。ポケミス以前のハードボイルド翻訳事情を知らないので、……この点は迂闊に評価出来んのよ
2023-07-01 01:22:59というわけで、『血の収穫』感想の第一回でした。 明日は日本語訳の②から⑤、田中正二郎(創元文庫文庫旧)、能島武文(新潮文庫)、河野一郎(中公文庫)、稲葉明雄(講談社ハードカバー)をお送りいたしますわよ。 ではでは
2023-07-01 01:25:43さて、『血の収穫』感想の第2回です。 今回は②から⑤までの感想を投下いたしますよ。 読み比べとかいいながらも、ただの偏った主観感想、個人の印象論なので、そこらへんはあしからずなのであります。 ではでは→
2023-07-03 01:07:03②『血の収穫』翻訳/田中西二郎(1956年) 対人一人称・「わたし」 内面一人称・「おれ」 pic.twitter.com/FWjCPmdOm8
2023-07-03 01:07:26