フィジシャン、ヒール・ユアセルフ #6
「イヤーッ!」その時!ナックラヴィーを庇うように手前の砂利中からニンジャが飛び出し、飛び蹴りアンブッシュを仕掛けた!ドトン・ジツ!「グワーッ!?」全力スプリント中のガードは容易ではない。ニンジャスレイヤーは重い蹴りを受け地面を転がる!そのニンジャは……おお、ブルーブラッド! 43
2011-11-24 16:54:53「ハァーッ!ハァーッ!」赤い人外の目を大きく見開き、ブルーブラッドはバック転で間合いを取るニンジャスレイヤーにカラテを構えた。白衣は脱ぎ捨てたか、ドトンに汚れた暗青のニンジャ装束ひとつの出で立ち。砕けた頭部は血みどろであったが、先程よりも明らかに傷の程度が浅い! 44
2011-11-24 16:59:17ナラクの焦りはこの事であったのだ。白木の杭……一見馬鹿馬鹿しい話であったが、現実にブルーブラッドはあの状態から復帰し、ここに現れた!幸いと言うべきか残念ながらと言うべきか、ナラクの歯噛みする声は聴こえてこない。共鳴切断後のナラクは休眠に入らざるを得ないのである……! 45
2011-11-24 17:13:37「お前……やってくれたな……リー先生と僕の作品を!僕らの計画を!」ブルーブラッドの両手爪が伸びる!「殺してやるからな!」「アバーッ、アバッ」片腕のナックラヴィーもよろめきながら起き上がった。「ブルーブラッド=サン。私ハ……作品デハナイ。ナックラヴィー。ナックラヴィー、ダ」 46
2011-11-24 17:18:31「チッ!」ブルーブラッドは舌打ちした。「どれだけ思い上がったゾンビだ、お前は!とっととこの邪魔者を殺し、実験を再開する!」「アバー……」ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構え、チャドー呼吸を整える。「スゥーッ!ハァーッ!」手負いとはいえ強大なニンジャが二人!万事休す! 47
2011-11-24 17:23:25「呪われろ!呪われろ!呪われろ!呪われろ!」叫びながら、獣じみた男は真っ逆さまに落下して行った。闇の中へ。ヤモトは恐怖に足を竦ませ、手摺にほとんど倒れるようにもたれかかった。ここは五重塔のバルコニーだ。となると、ここはキョート?そんなはずは無い。でも、キョートだ。今の男は、 49
2011-11-24 17:29:49「アアア!アアアアー!」口をついて出るのは声を枯らすほどの絶叫だ。己の両腕を掻き毟る。蕁麻疹だ。腕だけでは無い。両脚。顔も、身体も。不浄な七色の油。力が抜け、ヤモトは膝をつく。そうだ。さっき、こんな風に。だからこれは現実だ。上空の夜空には金色の月。月?ゆっくり回る立方体だ。 50
2011-11-24 17:35:19ヤモトは毒の中にうつ伏せに倒れる。両手が地面の砂利をまさぐる。死ぬのだ。まるで歯が立たなかった。あのニンジャ。悪夢の中から抜け出たような。いや、ここが既に悪夢なのだ、ここが?「タスケテ……タスケテ」乾いた唇から呟きが漏れた。「……何やってやがるんだよ。バカめが」答える声。 51
2011-11-24 17:39:14何かがヤモトの頭に触れた。一瞬にして周囲の闇が払われた。彼女は目を覚ました。勢いよく起き上がった。すぐそばの地面に突き刺さったカタナ、ウバステ。そうだ、スクラップヤードだ。あのニンジャに……「邪魔だから、そこで座ってやがれ」声の方向を振り返る。「……ケンワ=サン!」「畜生め」52
2011-11-24 17:48:14ヤモトは彼を視界に捉え、そして凍りついた。「……へ、へッ。そこで座ってろ。お前は出る幕じゃねえんだよォ」ゴボゴボと泡立つ不快な声が、ヘドロ塊の奥から響いた。「全くゴボッ、災難ってのはよ、ゴボゴボッこれだよ」ヘドロ塊は離れてゆく……ナメクジめいた粘つく液体を地面に残しながら! 53
2011-11-24 17:54:01(第二部「キョート殺伐都市」より:「フィジシャン、ヒール・ユアセルフ」#6 終わり。 #7へ続く) 54
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