マダニ媒介感染症(未完)

感染症法で4類に指定されているマダニ媒介感染症は、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ライム病、回帰熱、野兎病、ダニ媒介脳炎の6病種である。これらの流行状況について既存資料をまとめてみる。
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マダニ感染症

今井長兵衛 @medanjin

日本農業新聞の「マダニ感染症報告が最悪ペース」という記事がTLに流れてきた。 agrinews.co.jp/news/index/169… 記事ではSFTSが国内で初めて報告された2013年以後のデータが示されているので、感染症法施行の1999年以後のマダニ感染症6病種の届出数推移を図示してみた。日本紅斑熱の増加傾向が顕著だ。 pic.twitter.com/cKbGeLQOhj

2023-07-14 14:23:01
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今井長兵衛 @medanjin

野兎病とダニ媒介脳炎の届出患者数はほぼゼロで推移している。 2019~2022年の届出患者数は、ライム病が全国80人、北海道から65人(81%)で、南限は福岡県(3人:5%)。 回帰熱は全国57人、北海道57人(100%)。 したがって、これら2病種は温暖化で北へ拡がったわけではない。

2023-07-14 17:54:55


SFTS
重症熱性血小板減少症候群

今井長兵衛 @medanjin

重症熱性血小板減少症候群SFTSは2013年に初めて報告され、この10年間に届出患者数は48人から118人に、年間届出都府県数は13から26に増加。届出都府県は兵庫から東京まで東進、島根から富山まで北上。ウイルス保有マダニに外部寄生された動物間でウイルスが拡散されてきたものと思われる。 pic.twitter.com/56hcvNUTyL

2023-07-14 21:14:10
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今井長兵衛 @medanjin

2019~2022年の4年間に重症熱性血小板減少症候群SFTS届出患者数は406人で、九州地方160人(39%)、中国地方123人(30%)、四国地方61人(15%)。したがって、西日本が流行の中心と考えられる。ちなみに、沖縄からの届出患者数はこの10年間で2016年の1人だけである。

2023-07-14 22:47:20
今井長兵衛 @medanjin

感染研のデータでは2023年1月31日時点で、SFTS発症者805人、死亡者96人で、致死率は12%。年齢別では40歳代までで発症者37人、致死率0%;50歳代で発症者51人、致死率6%;60歳代で発症者178人、致死率7%;70歳以上で発症者539人、致死率15%。 niid.go.jp/niid/ja/sfts/3… news.yahoo.co.jp/articles/d7fe2…

2023-06-16 17:51:56
今井長兵衛 @medanjin

2016年以前の調査では、関東地方のイノシシ349個体のなかにSFTS抗体陽性個体はゼロであった。 eiken.co.jp/uploads/modern…

2023-05-29 15:50:14
今井長兵衛 @medanjin

和歌山県ではアライグマのSFTS抗体保有率が2007年0.0%から2014年の24.2%まで上昇。2016年以前にサルの感染も確認された。 eiken.co.jp/uploads/modern…

2023-05-29 15:37:23
今井長兵衛 @medanjin

中国地方で2009~2013年に捕獲された野生動物のSFTS抗体保有率はイノシシ8%(9/115)、シカ50%(65/130)。 agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030912710.…

2023-05-29 17:33:39
今井長兵衛 @medanjin

2010~2014年の山口県での調査では、SFTS抗体保有率はシカが24~54%、イノシシが0~12%。2016年以前の調査では、イヌの抗体保有率3.7%、ウイルス保有率1.5%だった。 eiken.co.jp/uploads/modern…

2023-05-29 14:53:13
今井長兵衛 @medanjin

愛媛県で2018年以前に調査されたSFTS抗体保有率は、患者報告地域の50歳以上農業従事者694人の0.29%(2人)、イノシシ10/40、シカ4/20、野外飼育イヌ3/33、ノライヌ2/14、ノネズミ(アカとヒメ)0/50。 az.repo.nii.ac.jp/?action=pages_…

2023-05-29 16:57:53
今井長兵衛 @medanjin

長崎県では2013~2016年にイノシシ136個体、イノシシ以外21個体を調べ、SFTSV(SFTS病原ウイルス)は検出されなかった。ほぼ同時期と思われる同県内の別の調査ではイノシシ190個体のうち36個体で感染確認。 pref.nagasaki.lg.jp/shared/uploads… 2つの結果を合わせると、イノシシの感染率は36/326=11%となる。

2023-05-29 12:52:06
今井長兵衛 @medanjin

鹿児島県ではヒトのSFTS抗体保有率が2015年7月13日~2016年1月21日に調査され、被験者646人中の2人(0.3%)が抗体陽性、内訳は狩猟関係者125人中1人(0.8%)、それ以外521人中1人(0.2%)だった。 pref.kagoshima.jp/ad08/kurashi-k…

2023-05-29 14:14:13


日本紅斑熱

今井長兵衛 @medanjin

日本紅斑熱患者発生状況(下図)。全国の届出患者数は1999年の39人から2021年の486人まで、届け出のあった都府県数は1999年の9から2021年の31まで増加している。流行地域は東や北に緩やかに拡大しているようだが、東日本では面的な広がりにまでは至っていない状況だ。 pic.twitter.com/tx6296akwZ

2023-07-20 19:52:39
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今井長兵衛 @medanjin

西日本における日本紅斑熱届出患者数の推移(下図)。ただし、三重県は紀伊半島東部なので、近畿地方として扱った。1999年頃と比較すると最近の届出数増加率は中国>九州≒近畿>四国だが、4地域のいずれでも増加傾向にある。流行地域の急速な拡大は見られないが、西日本各地で流行が激化している。 pic.twitter.com/6LEutbiS9b

2023-07-20 21:32:08
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今井長兵衛 @medanjin

なお、沖縄における日本紅斑熱届出患者数は、2010~2012年に各1人、2017年1人、2021~2023年(26週まで)に各1人、合計7人である。

2023-07-21 09:25:39


ダニ媒介性脳炎

今井長兵衛 @medanjin

北海道でダニ媒介脳炎の患者がはじめて報告されたのは1993年のことで、1995年には患者発生場所近くで放し飼いにしたイヌ10個体のうちの5個体が約1カ月後までに感染し、1996年春には周辺のヤマトマダニ♀300個体15プールから2株のウイルスが分離されている。 square.umin.ac.jp/hdkkk/topics/e…

2024-03-28 18:20:14
今井長兵衛 @medanjin

日本におけるダニ媒介脳炎の届出患者数は4人で、2016年に1人、2017年に2人、2018年に1人、いずれも北海道から報告されている。これは1999年~2023年に届出されたマダニ媒介感染症患者数6370人の0.063%に相当する。 pic.twitter.com/N9g3WkcFXe x.com/kamo_kamos/sta…

2024-03-27 19:12:56
渡瀬ゆず💉 @kamo_kamos

ファイザーの不活化 ダニ脳炎ワクチンが承認されました! ダニ脳炎はヨーロッパや稀に北海道で見られるマダニによる感染症なのですが、日本はワクチン未承認でした。 致死率は1~2%、北海道でも死亡例があり、回復しても脳の後遺症が高頻度で残ります。 流行国への海外旅行の際はご検討下さい! pic.twitter.com/UK2dWHAb0C

2024-03-27 08:22:29
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今井長兵衛 @medanjin

北海道におけるマダニ媒介感染症の1999年~2023年の報告患者数は139人で、同時期の日本全国のマダニ感染届出患者数6370人の2.2%に相当する。その内訳はライム病68人(49%)、回帰熱67人(48%)、ダニ媒介脳炎4人(3%)で、日本紅斑熱とSFTSの届出患者数はゼロ。

2024-03-27 21:12:35


まとめ

今井長兵衛 @medanjin

マダニ媒介感染症2019~2023(第27週まで) ① 4類指定6病種のうち、野兎病とダニ媒介脳炎の届出はゼロ。 ② この4年半に届出がゼロだったのは、青森、岩手、宮城、山形、群馬、山梨の6県。 ③ 届出が1人だったのは、秋田、福島、栃木、埼玉、新潟(以上、日本紅斑熱)、長野(ライム病)の6県。

2023-07-22 14:44:03
今井長兵衛 @medanjin

マダニ媒介感染症2019~2023(第27週まで) ④ 下図はこの4年半の届出患者数2人以上の35都道府県の病種別届出数。北海道はライム病と回帰熱。日本紅斑熱は広島、三重、和歌山、島根で突出して多いが、沖縄を除く西日本で広く流行。SFTSは静岡以西で流行。 pic.twitter.com/mlm7ExTsPr

2023-07-22 16:14:16
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