稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.06.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ふたり、立ってる奴がいるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

長い髪を、フワ〜ッと揺さぶりながら、 白い着物の奴が、立ってるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その木の奥に、それがチラチラって見えるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

これは降りられないですよ。山道を･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

奴に追われるような気がして、ね。 恐怖が先に立ちました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうなると、人間というのは逆なんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

腹の中でもって、「ウワァーッ！」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と私ね、悲鳴を上げながら、 逆に突っ込んでいったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

確かめたかったから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

人間なら、それでよし。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

じゃなければ･･･どっちにしたって、この山道、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな想いながら行くの、 とてもじゃないが恐くてできなかったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ウワァー！」言いながら、原生林の中、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ドーン”と突っ込んでいって、 “バァン”ってぶつかったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

墓石でしたね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私の背丈ぐらいの墓石が、ふたつ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこに、赤や白のキレがむすんであって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

長〜くヒラヒラ揺れてて、それと一緒に、 長い髪の毛が、結いてあるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ゾーッ”としましたね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

次の瞬間、まわりから、たくさんの目が、 私を見ているのがわかりましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

出てきました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そして、自分の民宿へ戻ろうと思ったら、 みんな上がってきたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

話したんです。 ｢じゃあ、一緒に、もう一回、行ってみようや｣

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ってことになって、上がっていった。 さっきのところですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

車がありましたよ。