知識と技術の継承としてのAI

知識と技術の継承としてのAIに関する走り書き。
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

知識の管理は学者の仕事であったが、これからはAIの仕事である。 幾百、幾千の知識の管理は人間の行えるところではない。 AIにはその能力がある。ただ、その体制が、システムが作れていない。情報学は博物学にもう一度回帰する。図書館情報学を含んで、それはより大きな体系となるだろう。

2023-09-18 14:49:10
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人はやがてAIから知識を引き出すようになる。ちょうど大規模言語モデルから知識やオントロジー、アフォーダンスを引き出そうとするように、AIが所持した膨大なデータから自分用の知識を作り出す。 芸術でさえも、その流れから自由でないだろう。

2023-09-18 14:49:18
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

いろいろ事情があって、ある論文を自動翻訳を使いながら英訳していて感じることは、 ああ、こういう感じだな、という未来の既視感。足元には、大量の知識を持つAIがあり、そのAIが大量の知識から正解を提案する。7割はあっているけど、2割は解釈違い、1割は完全な間違い。それを修正するのは自分。

2023-09-18 16:16:20
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

もし、その間違いがわからないなら、その人は自動翻訳に飲まれて終わる。 しかし、こうやって知の管理は次第にAIへシフトしていく。 しかし、AIの間違いがわかる人間でないと、AIの言うことから逃げられなくなって、飲み込まれて自由ではない。

2023-09-18 16:16:31
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

自由にAIを活用するには、AIよりある意味詳しく、知識の量ではなく、センスや理解の面で凌駕しておく必要がある。

2023-09-18 16:16:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

例えばソルベー会議について調べるとする。年代別の参加者はAIの方が詳しい。しかし、その意義や歴史的なポジションについては自分の方が理解している。すると、AIが間違ったときには、正解はわからなくても、間違ったとわかる。

2023-09-18 16:16:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

知識はAIが管理する。人間はその上に立つ。 AIの知識量に飲み込まれてしまう人間は、 マスメディアのニュースや、ネット検索の知識に飲み込まれてしまう人間と似ているかもしれない。 哲学とは、知への誠実さ、のことだ。 AI時代の哲学はまだ構築されていない。 それはこれから構築するものだ。

2023-09-18 16:16:59
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

しかし、よりアクチュアルな議論としては技術の管理を誰が行うか、である。 技術は知識であると同時に実践的なノウハウの作業術であり、膨大な蓄積がある。

2023-09-18 16:18:24
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

技術者とは、実はすべてを知っているものではなくて、その場で要求された要件に対して、技術を引っ張ってきたり、再生産できる人間であって、実は膨大なライブラリから引用できれば、もっと楽になる。しかし、なかなかそういう技術の蓄積場所はない。

2023-09-18 16:18:51
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そして、まだAIにもできない。はんだ付けのノウハウは列挙できても、AIが人間を指導できるためには、目があり、手がなくてはならない。それはタイヤ交換でも、他の技術でも同様である。

2023-09-18 16:19:02
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

なぜ、理学部より工学部があれだけ大きくて細分化されているかといえば、理学が知識であり、工学が技術であるからである。 しかし、技術は膨大である。日々蓄積され、今でもそれを管理できていない。ゲーム産業を観れば一目瞭然である。

2023-09-18 16:19:13
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

その技術の蓄積は、長い目で見れば、AIに任すのが妥当であろう。ゲームプログラミングも、やがてAIができるようになる。ゲームエンジンもAI化されていく。対話的にゲームが作られていく。技術リストもAIが管理する。

2023-09-18 16:19:25
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームエンジンが過去のゲーム技術の集大成になっているように、さまざまなテクニックを総体化した人工知能の作成が目指されるべきである。

2023-09-18 16:19:34
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

近代フランスで百科全書が現れたように、現代では博物学的AIが求められる。技術の世界でも、技術の世界こそ、人類の技術の集大成をそこに編纂できなければ、我々は作ったはしから失われていくような、技術のエッジを生きることになるだろう。

2023-09-18 16:19:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

我々は遠い未来のために、技術をAIに託し、そして、未来の人々はAIから技術を引き継ぐ。

2023-09-18 16:19:52
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

哲学の企て、とは、全学問の根底に哲学を敷こう、という試みである。 そんなことは、無理をしなくても、ソクラテス、プラトンを経て、アリストテレスが完成させた。だが、そこには言葉という最強の武器があった。そして、その主体は人間であった。

2023-09-18 18:50:44
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人間を主体とする学問は終わりを迎え、AIを扇の中心とする学問の体系を打ち立てることで、我々はより自由になるだろう。

2023-09-18 18:50:50
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

博物学がすべての学問の基礎であるとすれば、我々はそこにAIを入れて学問をやり直す必要があるのではないか。

2023-09-18 20:12:07
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

あらゆる論文を読み、その論文の間の諸関係を体系樹として持つこと。一つの分野でさえ、その全体像を保持し続けることは難しい。たとえば、自分であればデジタルゲームAIの全論文、全発表の体系樹が頭の中にあるが、それを描いてみせろ、と言われれば、数か月はかかるだろう。

2023-09-18 20:13:11
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

AIならそれを一瞬でやってのける。 参照文献の系譜なら自動化できるが、問題はそこだけではない。専門家なら、その分野で持つ系統樹がある。それを全分野、また横断的に行えるのは、もはやAIだけだろう。

2023-09-18 20:13:18
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

その分野の専門家が持つそういった知識体系が、その教授なり専門家の価値なわけであるが、実際のところ、近くにいて話しかけなければ、自分にとって価値あるものを引き出せない。だからこそ、研究室があり学生がある。しかし、そういった知の体系は、万人に開かれるべきだ。

2023-09-18 20:13:22
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

AIによって日々積み重なる論文や発表資料、講演録を吸収し、知の系統樹を作らせる。我々はそれが巨大な樹木となっていくのを見ながら、欠けているピースや来るべき枝葉を準備する。

2023-09-18 20:17:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そして、その巨大なツリーは万人がどこからでもアクセスできるようにする。そうやって知の体系は、どの人からも、どの職業からも可視化されるようになる。

2023-09-18 20:17:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

何十年も重要な論文が忘れ去られて発掘されるような光景も、やがて過去のものになる。 我々は常にAIによる知の樹木の発展を観ながら、知的活動に従事する。

2023-09-18 20:18:05