ルソー『社会契約論』の翻訳について(他の作品にも言及しています)

ルソーの翻訳、特に『社会契約論』の翻訳は誤訳の宝庫であり、その結果ルソーが人民主権を打ち立てたというこの本には書いていない話が広まっている。そこでルソーのフランス語原典をどう読むべきかをツイートしたものをまとめた。
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Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

自分が必要とする…人々から、恐れられるようにすることができないとき、また彼らのために有効に奉仕してもそれが自分の利益にならないと知ったときに、彼はいやおうなしに彼らを欺かざるをえないことになる(同p.101f)。 人から尊重されないし人の役に立つ気がなくても人が必要なら騙すしかないのだ。

2024-01-03 12:35:49
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「この崇高な制作者は自分のもっとも美しい作品が侮辱されるよりは破壊されるのを見るほうが、いっそ腹立たしさを感ぜずにはいないのではなかろうか」(同115p) 侮辱されるぐらいらな破壊される方がましとする、光文社版の訳が正しい。

2024-01-06 10:17:51
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「私には次のことは確かなように思われる。即ち、政府は単に専制的な極力から始まったものでないだけではない」(同116p) 「だけではない」は「確かなように思われる」に掛かっているのに誤読している。訳文がややこしくなるので、他の本は「ただけではない」を省略している。

2024-01-06 14:02:14
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「自然が自分の教えるのとはちがったふうに歩くように人間を運命づけたのだ」(同136)。 la nature a destiné l'homme à marcher autrement qu'elle ne lui enseigne 人類は二足歩行を学んで身につけたが、本来は四足歩行の動物だった。

2024-01-09 00:49:34
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

大腸は全長1.6メートルの管で、盲腸から始まり上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸で構成されています。盲腸からS状結腸までを結腸といいます。 onaka-kenko.com/various-illnes…

2024-01-10 10:31:18
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

フランス語の強調構文は英語とだいぶ違っている。 C'est un trésor que la santé. 健康は宝だ これも強調構文で英語には似たのがない。

2024-01-11 22:39:07
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ラ・フォンテーヌ版「兎と瓶」仏語対訳(イル・サンジェルマンの散歩道) billancourt.blog50.fc2.com/blog-entry-81.… J'entends(~という意味だ) 、dis-je(話を戻すと) Moi, l'emporter は、私の勝ちだ。 que serait-ce Si… は、あんたも家を運びゃばよかったのに。

2024-01-12 18:57:25
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『不平等起源論』で、文明国の人口減少は必然の帰結だとルソーがさんざん言ってるのに、この本はひどい翻訳のせいであまり読まれてなくて、お金を使えば少子化対策になると思ってるインテリが多いというわけです。

2024-01-13 12:18:22
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

望んでもなかなか得がたい多くの立派な人々の助けを借りなければ維持されない上に、どんなに注意しても、常に表面 上の利益より、実際上の災害のほうが多く生れる、というような社会構成を軽蔑するであろう(同158p)。 この本ではルソーは君主制を支持して、民主制を嫌っていたらしい。特にアテネの。

2024-01-13 15:20:05
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

"Franks and Normans" rousseau でGoogle検索すると、ルソー「不平等起源論」の英訳がいくつか見つかる。

2024-01-13 18:30:51
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

Second Discourse - The Platypus Affiliated Society platypus1917.org/wp-content/upl… ルソー『不平等論』の最新の英訳がここに全部ある。

2024-01-14 15:21:15
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

Histoire générale des voyages — Wikipédia fr.m.wikipedia.org/wiki/Histoire_… ルソー『不平等起源論』の注に出てくるアベ・プレヴォー編纂の旅行記集

2024-01-15 09:52:04
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「これらの報告を別にすれば、われわれは…東インドの諸民族を少しも知らない」(同169p) 文脈からこの「東インド」には中国と日本とペルシアも含まれる。今のアメリカ東部の西インドに対する東インドなので、いまの東アジアを意味するが、ここはアジア全体。 東インド会社 y-history.net/appendix/wh090…

2024-01-15 11:05:29
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「夫と妻が連続的にいっしょに住むことは、新たな妊娠のおそれのある機会に非常になりやすいので」(同175p)。 ロックは女は次々と妊娠するので人類の夫婦の共同生活は動物より長くなると言うが、因果関係が逆だろうとルソーは反論している。これを社会状態のことを言っているとする光文社版の解釈は?

2024-01-16 10:20:51
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「個人としての人間はだれでも彼を観察するただ一人の見物人…彼の価値のただ一人の審判者と自分自身を見なし ているのだから」(同181p)。 見物人、審判者を自分自身にかけているが、主語にかかるのではないのか。彼を見ているのは彼だけなのだと。だから、彼が人を見て比べるなんてありえないと。

2024-01-17 12:28:43
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

つづき「自分の力の及ばない比較ということにその源を発する感情が、彼の心のなかに 芽生えるなどということは不可能だからである」(同) だから彼には比較なんか出来っこないと。 これを光文社版は「自分の力のおよばないものとの比較から…」(258p)。こんな勝手な解釈がこの訳には多いようだ。

2024-01-17 13:07:54
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ルソーの最後の注19は、justice distributive、とは名誉や地位の公平な割り当てのことで、国への奉仕の度合いによるべきだと言っている。イソクラテスはそれを「ἀξία mérite 価値」に応じてすべきと書いているが、これは個人的な価値のことではなく奉仕のことだとこの注で修正しているのである。

2024-01-18 11:23:39
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

平等といってもすぐれた人と劣った人を区別せずに同じ権利を主張するものは非とし(イソクラテス『アレイオス・パゴス演説』21 西洋古典叢書) すぐれた人と劣った人は原文では善人と悪人でルソーはそう訳している。道徳的な基準が賞罰の基準にならないのは当然だとルソーはわざわざ言及しているわけ。

2024-01-18 12:54:19
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『不平等起源論』で人間社会の醜悪さをこれでもかと描いているルソーのあとで、それを美しく美しく描いているホメロスを読むと救われます。 twitter.com/tomokazutomoka…

2024-01-20 09:56:40
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

トロイ城に駆け寄るアキレスの姿 …彼が燦爛と輝き平野馳せ来るを、25 まさきに王者プリアモスその目をあげて認め得つ、 秋としなれば大空に夜の影ぬち、衆星の 間にありて爛々の光を放つ一巨星。 オーリオーンの犬と名を人間の世に歌われて、 … その星のごと駆け来る彼の胸甲輝けり。 いや美しい。

2024-01-20 09:00:06
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ルソーが『不平等起源論』で言葉は固有名詞から始まると言っていたが、ドクター·ハウスの英語の字幕は固有名詞が一般名詞になったものだらけ。例えば、尊厳死はterry schiavo。彼らが使う英語は我々が知っている英語とは全くの別物。吹替の翻訳者を尊敬しますね。

2024-02-05 00:36:23
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

彼らは、この自然法という名のもとに、自然が他のものに命ずる法則よりはむしろ自然が自らに課する法則を考えているからである。あるいはむしろ(『不平等起源論』岩波文庫29p)。 ここ分かりにくいが、「あるいはむしろ」は ou plutôt つまり「より正確に言えば」で、あとにちゃんと説明されている。

2024-02-14 17:58:45
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「なにかわからないいわゆる偉大なものへの讃美だけを持って帰ってきますが」(同23p) 「偉大なもの」が分かりにくいが、その原語 grandeur はすぐ後に「宮殿の壮大さ」として出てくるので、外見的な華やかさのことだと分かる。 このようにルソーの難解な箇所は後で答えが書いてあることが多い。

2024-02-14 18:07:43
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

その直前「ローマの法学者たちは人間と他のあらゆる動物とを無差別に同一の自然法に従わせている」 古代ローマにおける自然法思想の研究 soka.repo.nii.ac.jp/record/35063/f… 自然法とは自然が一切の動物に教へたる法を謂ふ、何故となれば此の法は人類のみに特有なるものに非ず…(ウルピアーヌス)

2024-02-14 18:50:23
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