アメリカ嫌いな人たちから、「アメリカ軍は歴史が無く軍人の誇りや名誉が判ってない、合理主義的で冷淡なビジネスメンの軍隊」とよく言われたが、一部核心をついている
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兵站重視のパットンつながりでアメリカ軍の兵站超重視について。 アメリカ嫌いな人たちから、アメリカ軍は「(歴史が無く軍人の誇りや名誉が判ってない、合理主義的で冷淡な)ビジネスメンの軍隊」と昔からよく言われました。 でもこれ一概に「うっせぇ」とも言えない悪口で、一部核心をついています。
2023-10-30 18:16:25独立戦争時、偉大なる大英帝国に反逆を企て、お茶を港に放り込みコーヒーを飲むなどという侮辱的行為に出た新大陸の弱小植民地アメリカ、もちろん反逆者たちに本職の軍人はほとんど居ませんでした。 そりゃそうです、植民地軍人が独立派に大挙寝返って反逆するような運用を大英帝国がするはずがない。
2023-10-30 18:16:25英国植民地叛乱は常に「原則的に(虐げられた)現地人だけで起こされるもの」でした。 従って独立を謳った大陸議会の指揮下にある大陸軍(コンチネンタル・アーミー)、英軍から離反した高級士官はごく少数(しかも優れているとは言いにくい人が多かったw)で、ほとんどが素人(民兵レベル)でした。
2023-10-30 18:16:25だからフランスやドイツの士官(ラファイエット[ラフューィト]やステューベン[シュトイベン])に来てもらって、半分「傭兵将軍司令部」みたいになっていたのです。 とはいえ全士官傭兵ってわけにも行かないですし、初期の下級佐官・尉官クラスは軍人経験がない、民兵隊長みたいな人たちが務めました。
2023-10-30 18:16:26その種の人たちは通例「新大陸でのビジネスで成功して土地の名士みたいになってた人」たちでした。 大西洋をまたにかけた商人とか、大きな農園主とか。 確かにビジネスマンです。 こういった人たちをいきなり軍隊に突っ込んで仕事させた場合、何が得意でしょう?
2023-10-30 18:16:26そう、組織の基本的な運営維持、主に兵站(仕入れ・備蓄・輸送・供給)なんです。 戦争にはお金が掛かります。 新大陸の裕福なビジネスマンたちが集ったところでしょせん植民地成金程度に過ぎず、とても賄えませんし、そもそもビジネスマンは極力「自腹を切らない」ものです。調達するのが本分です。
2023-10-30 18:16:27というわけでビジネスマンたちはフランスやスペインなど「大英帝国が嫌いな人たちの国」へ出掛けて行き、最新の投資スキームを売り込む訳です。 「今のトレンドは新大陸!悪逆非道の大英帝国と戦う勇敢で自由を愛する独立派に出資して戦争に勝たせて新大陸に莫大な土地を得よう!」 みたいな感じ。
2023-10-30 18:16:27勝てなきゃパーですから空手形もいいとこですが、でもまあビジネスマンですから、そういう原野商法みたいな投資話をちゃんと売り込んで、詐欺じゃないよと実績(戦況)を広め、しかるべき筋から相当の出資を受けて、それを軍費に充てたわけです。 *指揮官レベルだと自腹切る人もたくさん居ました。
2023-10-30 18:16:27*なおフランスからの出資分は、アメリカの独立達成から程なくして優雅なおフランス貴族の皆様が軒並み断頭台送りになってしまったお陰で大筋で棒引きになり、「なんだこのクソ田舎の土地は!詐欺だ!」とは言われずに済みました。 ありがとうブォナパルテ!革命万歳フランス万歳! (違うそうじゃない) pic.twitter.com/oBirM9dnji
2023-10-30 18:16:28というわけで独立戦争では、植民地民兵隊主体のでっちあげ軍隊だというのに、給与は「現金以外については」非常に手堅く支払われ、また正規の兵站線が構築され、その兵站線に繋がっている限りは定期的に弾薬と食糧は届けられるという、反逆ゲリラにしては妙に恵まれた体制を有するに至りました。
2023-10-30 18:16:28しかもこの供給、野放図にばら撒いていたわけではなく(そこまでの余裕はないので)、部隊活動状況を厳しく監査し、「頑張ってる民兵隊ですと自称してるだけの集団」とかに物資を渡してしまわないよう厳格に管理されていました。 金を使うからには最高の効果を発揮させるべし。まさにビジネスメンの鑑。
2023-10-30 18:16:29*独立戦争最後のヨークタウン包囲戦にしても、コーンウォリス伯が20日ほどで降伏交渉を始めたのは、包囲され孤立した自軍の兵站問題と、大軍をヨークタウンに結集して大砲撃ち続けても兵站問題を起こさなかった(隙を見せなかった)大陸軍という二つの理由があったと言えます。 pic.twitter.com/ARTmZ5K44H
2023-10-30 18:16:29というわけで独立直後の将軍たちは軒並み兵站将軍みたいなもんでした。 そして連邦政府も同様にビジネスメンな集団でしたから、独立達成と同時に全軍ぶっ潰すレベルの大軍縮(海軍・海兵は本当に消滅、陸軍は首都防衛の一個大隊だけにされ、あとはぜんぶ州兵)に突入したわけです。 加減しろ馬鹿。
2023-10-30 18:16:30流石に我に返って多少整備した(海軍も復活した)後になると、ビジネスメン政府は「陸軍を平時に働かせよう」と考えます。 工兵隊に国家レベルの建設事業を任せる、というものです。 ダムとか橋とかに陸軍工兵軍団の銘板が貼られてるようなのが各地に誕生します。
2023-10-30 18:16:30工事はともかく「工事を滞りなく進める」にはやはり兵站が重要です。機材や建材を常に十分に送り込んでおかねばなりません。 工事自体も、アメリカのインフラ整備ですから「兵站」の一環と言えなくもなく。 広大な国土を有効活用するにはインフラ整備が必須でしたから、たいへん力を入れていました。
2023-10-30 18:16:31*ウェスト・ポイント陸軍士官学校が当初実質的に「国立土木建築大学」同然で、前世紀末くらいまで「首席卒業生は希望兵科に工兵を選ばねばならない」という伝統があったのもそのため。 流石に今は自由になったようですが、昔は「工兵科に進みたくないから次席を目指す」みたいな話もありました。
2023-10-30 18:16:31そんな状態で時折戦争があったわけですが、後衛はともかく前衛となると必要とされる才覚が異なります。アグレッシブな能力が必要です。 でもアメリカの軍隊にはそういうタイプがあまり居ません。なので「攻撃がうまい指揮官」は貴重で、このタイプは多少勉強が出来なくても良しとされました。
2023-10-30 18:16:31大量の優れた縁の下の力持ちの上にごく少数の突撃馬鹿(士官学校でファイアボール認定されてたようなタイプ)、みたいな軍隊となります。 考えようによっては、すごく恵まれた(突撃馬鹿の馬鹿部分を補える)環境と言えます。 *あくまで陸軍の話ですw
2023-10-30 18:16:32独立戦争以降のアメリカの戦争は、そのほとんどが国内戦ないし国境に面した国(メキシコ)との戦争でした。 この場合、大部分のインフラは国内インフラとなり、新規に構築せねばならないのは国境を越えた後のぶんだけです。 それも国内でやってたことなので慣れています。
2023-10-30 18:16:32そもそも通商拡大のためにインフラを整備し、欧州へ商船を送りまくっていた国ですから、必要となれば充分以上の物資をたちどころに集積して前線へ運び込むことが出来ました。 *あくまで陸軍の話ですw
2023-10-30 18:16:33結果、将官たちは基本的に「物資が足りないどうしよう」という心配とは無縁の作戦立案が当たり前になります。 物資が足りない(ように思える)と不安になるため、すぐに積み増しを要求します。 また兵站部は「いつでも、誰がどう見ても充分以上の物資が用意されていること」を誇りとするようになります。
2023-10-30 18:16:33そもそも諸外国の軍隊の遠征のように現地徴発は出来ないのです、だってほとんどの活動域が自国内だから。 それに徴発で一定量を確保なんて本来まともな計画立案は出来ませんから(物資が豊富な国であったこともあって)徴発について思い悩むくらいなら自分で物資を運び込むほうが簡単確実だったのです。
2023-10-30 18:16:33この例外が南北戦争(の南軍)。 南部が独立宣言したのは、彼らに自力でやっていかれるだけの物資があった(あると思った)からという面もありました。そのうえで北部(連邦政府)のことが気に入らないから連邦離脱して戦争始めたわけです。 なので、南部の生産力を破壊しないと戦争は短期では終わりません。
2023-10-30 18:16:34結果がシャーマン将軍の「海への進軍(南部農業・工業地帯に対する逆焦土作戦というか、戦略的破壊作戦)」なわけです。総力戦概念の先駆け。 アトランタからサヴァナまでの一体の農地・工場・鉄道線・「余計な個人資産」を特別命令により軒並み破壊し尽くしました。 pic.twitter.com/mfbQpu2SaN
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