著者自身が語る、佐藤俊樹『社会学の新地平』(岩波新書)

11月17日に発売となった『社会学の新地平――ウェーバーからルーマンへ』(岩波新書)について、著者の佐藤俊樹さんによる投稿をまとめました。
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佐藤俊樹 @toshisato6010

且つむしろ下部構造を変える「力」を持つことを意味します。 むろん、ヴェーバーは、そのような宗教改革がそれ自体、経済的下部構造によって規定されていたことを否定したわけではありません。たとえば……生産関係でいえば、独立自営農民の出現が大きかった。彼らの中から産業資本家と産業労働者

2023-11-17 06:17:35
佐藤俊樹 @toshisato6010

の両方が出てきたのです。そして、彼らがプロテスタンティズムを支えた、といえます。したがって、ヴェーバーはむしろ、政治的・観念的上部構造と経済的下部構造の相互規定性を主張したといったほうがいいでしょう。しかし、いずれにしても、ここで大事なのは、産業資本主義が成立するためには、

2023-11-17 06:19:14
佐藤俊樹 @toshisato6010

それを強いる、何らかの観念的な「力」が不可欠だったということです。宗教改革からそれは来た、とウェーバーは考えた。」(柄谷行人ほか『柄谷行人『力と交換様式』を読む』134-135頁、文春新書、2023年)。 これまで述べてきたことからもおわかりでしょうが、

2023-11-17 06:21:18
佐藤俊樹 @toshisato6010

私は、ウェーバーがこのように考えたとは全く考えていません(←「いません」です)。では、どのように考えていたか。それに関しては、『新地平』を読んでいただくのが一番よいように思います。また、そこに載せきれなかったテクスト上の典拠や、関連する研究史の文献などは

2023-11-17 06:21:31
佐藤俊樹 @toshisato6010

この呟きのなかでも紹介・解説していますので、参考になさってください。当初は、今さらなあ、という気持ちも少しあったのですが、『新地平』を書いておいてよかった、と今は率直に思っています。

2023-11-17 06:22:21
佐藤俊樹 @toshisato6010

ああそれからもう一つ。『新地平』では2回しか参照指示できませんでしたが、ウェーバーが近代資本主義の出発点をどのようにとらえていたのか、実は書いている途中、なかなかうまく像を結べませんでした。それが打開できたのは、星野秀利(齊藤寛海訳)『中世後期フィレンツェ毛織物工業史』

2023-11-17 06:24:32
佐藤俊樹 @toshisato6010

(名古屋大学出版会、1995年)を読んだときでした。 星野さんと大塚史学の関わりについては、私のような素人が何か述べることが適切だとは思えませんし、一般的な背景については、例えば土肥恒之『日本の西洋史学』(講談社学術文庫、2023年)の第五章を読んでいただくのが良いと思います。

2023-11-17 06:26:15
佐藤俊樹 @toshisato6010

ただ、ここでどうしても書いておきたかったのは、一人の社会学者がウェーバーの社会学について考えていく上でも、本当に重要な歴史学の研究は、星野さんのこの著書のようなものだった、ということです。安楽椅子の上で世界史を通覧するようなものではなく。

2023-11-17 06:28:13
佐藤俊樹 @toshisato6010

研究とはやはりそういうものなのだと思います。そのことをあらためて教えてもらった著作でした。 ありがとうございました。

2023-11-17 06:28:27
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