三国志こばなし集2024年1月号(下)三国時代編

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孫権「やいやい！」 張昭「もう許さぬ！」 孫「何をする気だ！」 張「背中の腫れ物を爆発させ貴様ごと自裁してくれるわ！」 孫「何を言っている!?」 張「はあ！」 孫「背中が!?」 張「覚悟せい！」 孫「やめろ！」 張「只今そちらへ参ります…孫策様…ご母堂…」 孫「そんな来られ方されてたまるか！」

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孫「…なんという夢だ」 歩練師「凄まじくうなされていましたよ、旦那様？」 孫「やはり…」 歩「お酒をやめないから…」 孫「私が酒をやめたら張公の背中の腫れ物が爆発して道連れにされる夢を見なくなるのか？」 歩「…どうしてそんな夢を見たの？」 孫「見たくて見るわけなかろう…」 歩「…確か」

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孫「なんだ？」 歩「夢占いの書物によれば…」 孫「よもや該当する項目が」 歩「背中の腫れ物とは未だ気づかぬ脅威の証」 孫「あるのか!?」 歩「爆発とは旦那様と張昭殿の関係に大きな変化や展開がある象徴」 孫「お互いに爆発しっぱなしだぞ？」 歩「じゃあ日焼け止めを塗ったら？」 孫「唾で構わん」

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孫権…古の范増も項羽の不満を募らせて、背中の腫れ物が爆発して死んだのだろうか… 歩練師…じゃあ抗生物質を塗ってあげないと。 張昭…しわしわな背中には、これでもかとシミや斑点が出来まくっているらしく、顔に見えると幼い頃の張休は怯えていた。

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劉備「新しい嫁さんを娶れってか？」 法正「益州を平定されましたので」 劉「そんな歳でもねえぞ？」 法「もしやまだ孫権の妹に未練が？」 劉「触れてくれるな、孝直」 法「…失敬」 劉「でもあれか。ここいらの有力者様の娘さんでも娶った方がいいのかい？」 法「然り」 劉「いるかね？そんな娘さん」

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劉「そしたら今夜紹介されるなんざ思うかよ、憲和…」 簡雍「さすが法正だぜ」 劉「元は劉の旦那同士の結婚って御法度なんじゃねえの？」 簡「建前だろそんなん」 劉「…そうかもしれねえがなあ」 法「殿。ここからは私がご案内を」 簡「行ってきな」 劉「あいよ」 法「こちらへ…」 劉「なあ、孝直」

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法「はっ」 劉「劉璋の兄貴の嫁さんってか？」 法「劉瑁という兄です」 劉「…なんでそいつが劉焉の後継じゃなかったんだ？」 法「…色々ありましてね」 劉「今更聞かねえよ、孝直」 法「助かります」 劉「ここかい？」 法「はい」 劉「お役目ご苦労」 法「殿」 劉「あ？」 法「よろしくお願いします」

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劉備…なんか意味深だったな、孝直のやつ。 法正…はるか前に死んだ劉瑁と関係があったらしい…？ 簡雍…元気で生きてらあな、孫尚香ちゃんよ。

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劉備「失礼するぜ」 呉莧「呉莧と申します。旦那様」 劉「呉莧といえば、呉懿の？」 呉「妹ですわ」 劉「おう呉懿の妹さんか！だったら問題ねえや！」 呉「…問題ねえ、とは？」 劉「呉懿は出来るしいい奴だからよ！」 呉「はあ…」 劉「自慢の兄ちゃんだろ？」 呉「…えっと」 劉「誰にも言わねえよ」

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呉「…自慢の、兄ちゃんです」 劉「やっぱな！これから頼りになりそうな兄ちゃんで助かるよ！」 呉「…そうでしたか」 劉「…ん〜？」 呉「…私の顔に何か？」 劉「いいや。なんか良い顔してるなって」 呉「…なんか良い顔、とは？」 劉「口じゃ言えねえな！なんかそう思っただけだからよ！」 呉「…」

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劉「どした？」 呉「子どもの頃にそう言われたのを思い出しました…」 劉「おや！そうなのかい！」 呉「いつかたいそう高貴な身分になるに違いない、と」 劉「へえ！実は俺もガキの頃にな？」 呉「はい」 劉「立派な桑のある家からすげえ野郎が出てくるって言われたことあんだよ！」 呉「誠ですか？」

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劉備「おうよ！俺の家にはたいそうデカい桑が生えててね！楼桑村なんて呼ばれたくらいさ！」 呉莧「…実は」 劉「どした？」 呉「私の人相を見たお爺さんが、そんなお話をしてくれました」 劉「へえっ!?」 呉「こんなことが本当に…？」 劉「そりゃすっげえなあ！呉莧ちゃん！」 呉「すっげえです…」

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劉「…面白いね莧ちゃん！」 呉「面白い、ですか？」 劉「ちょくちょく俺の言葉が混じってやがる」 呉「失礼しました！」 劉「いいよいいよ！もっと混ぜていこうぜ！」 呉「…よく分からないのですが」 劉「俺はその爺さんにゃ会ったことねえんだけどな」 呉「面白いお爺さんでした」 劉「だろうね！」

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呉「旦那様の楼桑村はどちらに？」 劉「幽州って分かるかい？」 呉「…あいにく」 劉「そりゃそうか！ここからずっと北の東の果てさ」 呉「私はほんの幼い頃に益州にやって来ただけなので…」 劉「そうだったのか」 呉「…以後よろしくお願いしますわ。旦那様」 劉「おうよ！また話そうぜ、莧ちゃん」

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劉備…なんだかんだで面白えご縁じゃないか。 呉莧…呉懿の妹で元は劉瑁の妻だった。幼少の頃に一族で益州に疎開し今に至る。どうやら劉備の桑の木を見立てた男と同じ人物に見立てられたらしい。

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呉懿「孝直」 法正「やあ、子遠」 呉「…まさか君が妹を気にかけてくれていたなど」 法「何を言っている。全てはあの人のためだ」 呉「…」 法「生涯をあの人の未亡人として余生を過ごさせるなんて、甚だ気の毒じゃないか」 呉「…孝直」 法「一切気にする必要はない。当然のことをしたまでだからな」

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簡雍「…今更そんな事ほじくり返したところで藪蛇になるだけじゃねえの？」 孔明「これから統治する地の過去を把握することは断じて無駄ではありません」 簡「そうかもしれねえけどよ…」 孔「徐州の過去。荊州の過去を把握しなかったから、我らは今ここにいるのですよ」 簡「…言うじゃねえか、孔明」

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呉莧「…」 ？「奥さま。失礼いたします」 呉「どなた？」 張氏「ご挨拶に参りました。張益徳の娘。張氏と申しまする」 呉「張益徳様といえば…」 張「万夫不当の父上ですわ！」 呉「左様でしたか。よろしくお願いいたします」 張(阿斗ちゃん！) 劉禅「…私は劉公嗣。以後義母上としてお仕え致します」

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呉懿…寝耳に水の妹の嫁入り話に仰天。彼もかつて法正と何かがあったらしい？ 法正…この件については誰にも口を挟ませるつもりはないからな。 孔明…こんな事は簡雍殿にしかお話できませんので。 簡雍…俺の判断で、ほどほどにしておくからな、孔明。

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呉莧…彼女にとっても急な話だったからまだ色々と理解が追いついてない。 張氏…張飛の長女。父親譲りの勝ち気で世話焼き。劉禅が放っておけない模様。 劉禅…いきなり義母として仕えろと言われても、どうしていいか分からないのが本音。