高関健さんのマーラー交響曲第7番についての考察

演奏にあたって、高関さんがつぶやいたこと、それに対する反応のつぶやきをまとめました。
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高関 健 @KenTakaseki

編集者の正確で冷静な判断により、新校訂版では作品について作曲者が係わった最終の状態が示される。疑わしい音、パートの相互間での相違等がかえって明確に表現される。校訂報告には問題点についての議論と、編集者の意見が書かれる。我々はそれを良く知り、自分なりの判断を以って演奏に臨む。

2010-06-04 07:37:28
高関 健 @KenTakaseki

第7交響曲冒頭のフランス序曲風のリズム。記譜の錯誤について。第5交響曲やLvB/Eroicaの葬送行進曲と同様に、前打音や1/32だけでは記譜しきれないもの。Kubik博士は、新校訂版でも楽譜には触らず、校訂報告の中で「いつも短く詰めて」弾くように勧めるつもり、とのことである。

2010-06-03 10:52:27
高関 健 @KenTakaseki

実際の演奏に基づく改訂の重要な目的は、パート間のバランスの改善にあると思う。他に、表現の集中と具体化、奏法の変更(ボウイングも含む)など、指揮台上でオケを相手に奮闘する作曲家の姿が見えてくる。度重なる改訂の検証が、Mahlerのスコアを良く理解することにつながると私は信じる。

2010-06-03 08:37:25
高関 健 @KenTakaseki

しかし、作品研究もさらに進み、その後に発見された資料を含め、新たな編集作業の必要も出てきた。例えば第5交響曲では、作曲家の予想外の早世により実現しなかったものの、1911~12年のシーズン、ニューヨークでの演奏のために、さらに改訂されたパート譜がすでにより用意されていた。

2010-06-03 00:40:57
高関 健 @KenTakaseki

当時助手を務めたKlemperer, Walter, Mengelbergをはじめ、作曲家と交流のあった指揮者の演奏には、こうした改訂がある程度取り込まれたことを確認することができる。しかし、これらは個人的なものであり、Mahlerの行った改訂作業をすべて反映するものではない。

2010-06-03 00:11:02
高関 健 @KenTakaseki

それぞれに残された改訂の記録は、残念ながら十全とは言えない。特に練習中の楽員によるパート譜への書き込みには、正確さを欠くものもあるようだ。また、GM自身がオケに指示したものの、本人がスコアに書き込みを忘れている場合もある。これらをすべて統合するのは大変な編集作業となる。

2010-06-02 23:40:21
高関 健 @KenTakaseki

GM練習段階での改訂は、プラハでの第7交響曲でのレポートのように、文字通り時間との戦いでもあり、寝る間も惜しんで改良の筆が加えられた。初演のみならず、再演の際にも改訂は続けられた模様で、その痕跡はGM自身のスコア、パート譜、Mengelberg等、助手たちのスコアにそれぞれ残る。

2010-06-02 23:32:30
高関 健 @KenTakaseki

第2段階で、オーケストラとの試演に入り、自身が響きを確認しながらの改訂が進む。パート間のバランスおよび強弱と表情の細部に至る確定、リズム(譜割り)や響きの長短の具体化、音色の選択(弱音器)、奏法の指示(Schalltr. auf)など、Mahler独特のスコアの形が現われる。

2010-06-02 20:23:28
高関 健 @KenTakaseki

例えば、第7交響曲II/48-61小節では、版下まで記されていたClar.を中心とする木管楽器の3連符の動き(16小節以降の動きを敷衍したもの)が、試し刷り前にすべて削除され、Fg, Kfg, CBなど低音域の行進がグロテスクに浮き立つ現在の形に落ち着いた。

2010-06-02 20:13:43
高関 健 @KenTakaseki

第1段階の改訂では、間違いとパート間の記譜の錯誤を訂正、表現の正確化などに重点が置かれる。表情記号の追加(ある意味で先鋭化)が多く認められる。また試演前にもかかわらず、過剰な響きや複雑すぎると想定される場合は、パート全体を思い切って削除してしまうこともある。

2010-06-02 20:02:20
高関 健 @KenTakaseki

Mahlerは作曲にあたりスケッチから下書きまでの段階で、曲の構成とオーケストレーションを完全に確定させる。従って原稿(浄書スコア)を書き上げる時点で旋律や構成の変更はほとんど起きない。その後の改訂は2つの段階に分かれる。第1段階は、原稿→版下→試し刷りまでの試演前の改訂となる。

2010-06-02 19:46:41
高関 健 @KenTakaseki

第7交響曲:3種類のスコアの読み比べ。自筆ファクシミリには削除や変更の跡が多く見られるが、Mahlerの発想の変化や響きの獲得までの経緯が分かって、とても楽しい。後の初版、改訂版との比較によってどこまで具体化できたか?そこが判定できれば作曲家の内なる響きに少しでも近づけると思う。

2010-06-01 11:20:54
高関 健 @KenTakaseki

1904年夏、Mahlerが第6を完成した時、2つの夜の音楽(Nachtmusiken)もほぼ同時に書き上げられた。第6最終楽章の自筆原稿には最初Tenorhornがオーケストレーションされていた。カウベルや「低い鐘の響き」を含め、2曲が同じ響きの中で作曲されたことが分かる。

2010-06-01 01:09:10
高関 健 @KenTakaseki

マンドリン奏法:Kubik博士はMgbgのメモはMahlerの指示と判定、Ratzリスト以外の1/4についてもトレモロが妥当との見解。私も3年前すでに博士の指摘に従って演奏。私の録音およびAbbado/Luzernのヴィデオでその様子が良く解るので、興味のある方は参照して下さい。

2010-05-31 08:36:27
高関 健 @KenTakaseki

未記入リストのうち最も重要なのはマンドリンの奏法。Mengelbergのメモ:「2分音符と4分音符はすべてトレモロで。」Ratz:「その後Mgbg自身が何度も演奏したのでMahlerの指示と言いきれない?」ちなみに奏法としてはトレモロはイタリア式、ヴィーンの伝統では単音で。

2010-05-31 08:28:09
高関 健 @KenTakaseki

Ratz版校訂報告:前書きに続く校訂リストでは、「訂正表」の内容と共に、Mengelbergスコアのメモも掲載。問題個所の検証と共に、演奏の実際についても、第1楽章の基本リズムや第4楽章でのマンドリンの奏法など、多くの示唆がある。未解決部分はスコアに記入されていないので要注意。

2010-05-31 07:19:13
高関 健 @KenTakaseki

第7交響曲Ratz版の校訂報告:「出版直後の訂正、校訂ついての記録は戦争(1945年)によって失われた。…出版後にMahlerがオランダで3回演奏した(1909年10月)際、Mengelbergは事前に練習を行い、「訂正表」と共に作曲者のその後の訂正を漏れなく書き込んでいる。」

2010-05-31 06:30:50
高関 健 @KenTakaseki

1909/11/03ヴィーンでの第7交響曲の上演(Loewe指揮)は、批評家たちからは不評だった。しかしSchoenbergには大きな印象を与え、NYのMahlerに長文の賛辞を書き送っている。第7交響曲が後のAdSchbegの創作の基礎になったことは疑いのないところだと思う。

2010-05-30 19:38:52
高関 健 @KenTakaseki

第7交響曲の自筆ファクシミリを読む。第4楽章では当初、ギターのみがオーケストレーションされた。筆が進むに従い高音域にパートが集まり始め、Mahlerは途中からマンドリンの登用を思いつく。マンドリン=夜の音楽=ドン・ジョヴァンニ=プラハの図式を確信した私には、意外な事実関係である。

2010-05-30 17:39:44
高関 健 @KenTakaseki

@YukihiroKato様 第7交響曲はチェコ的な要素が大変強い作品です。Kubelik(1982年にNYで実際に聴いた)やNeumannの素晴らしい演奏でも、彼らのキャラクターが作品に良い影響を与えていると感じました。 演奏の参考にさせていただきます。ありがとうございました。

2010-05-30 16:58:20
加藤幸弘 @YukihiroKato

お返事ありがとうございます。単なるミスということですが,チェコの作品と思える不思議な演奏です。 @KenTakaseki II/163私が知る限り、下書きからクビーク校訂版に至るまで、議論の対象になったことは一度もありません。第3オーボエ奏者が単純に失念したものと思います。

2010-05-30 16:17:02
高関 健 @KenTakaseki

@YukihiroKato様 お知らせ、ありがとうございます。HPも拝見いたしました。II/163私が知る限り、下書きからクビーク校訂版に至るまで、議論の対象になったことは一度もありません。当該の録音は未聴ですが、第3オーボエ奏者が単純に失念したものと思います。 ライヴですから。

2010-05-30 14:07:33
加藤幸弘 @YukihiroKato

初演後100周年の日にイフラヴァで行われた演奏は,現在の他の演奏とは全く異なります。 http://homepage1.nifty.com/classicalcd/cdreviews/2009-2/2009082901.htm @KenTakaseki 第7交響曲

2010-05-30 12:18:11
高関 健 @KenTakaseki

第7交響曲の初演が行われたのは新築が成ったばかりの「市民会館」、現在の「スメタナ・ホール」。練習の間ホールに続くバンケットルームの騒音が五月蠅く、Mahlerは何度も苦情を言った。しかしレストランの支配人は音楽に興味が薄く、グラスのカチャカチャ音はついに止まらなかったそうである。

2010-05-30 12:09:42
高関 健 @KenTakaseki

@eugenesuzuki様 お元気そうですね。一昨日からde la Grange/Gustav Mahlerを拾い読みしています。Almaは夫の音楽の素晴らしさは理解できていなかったようです。特に初演時は亭主が改訂に忙しく相手にしてくれないので、終始不機嫌だったそうです。

2010-05-30 09:58:16